以下の記事は、バラ十字会日本本部の季刊雑誌『バラのこころ』の記事を、インターネット上に再掲載したものです。
※ バラ十字会は、宗教や政治のいかなる組織からも独立した歴史ある会員制の哲学団体です。
地球外の生命
Life on Other Worlds
スヴェン・ヨハンソン(バラ十字会AMORC世界総本部副代表)
By Sven Johansson
この宇宙において、人類のような知的生物はどのくらい貴重で希有な存在なのでしょうか。
たとえば宇宙全体を見渡したとき、人類のような知的生物は、地球上のイエバエと同じくらい無数に存在しているのでしょうか。
近年、太陽系の地球以外の惑星に、生物が存在する可能性が議論されているのをよく耳にします。地球外生命体が日常的に地球を訪れているとか、宇宙人に誘拐された人がいるなどといった俗説について、お話しているのではありません。このような説は1940年代にたびたび、1930年代にもいくらか取り上げられていました。それは、コミックヒーロー「バック・ロジャーズ」(訳注)が登場して、1930年にロジャーズが初めて宇宙飛行をしたのとほぼ同じ時期のことです。もちろん、1938年にはコミック界の別の大ヒーローである「スーパーマン」が登場しました。彼は別の惑星からやって来た超人的な力を持つ宇宙人です。
(訳注:バック・ロジャーズ(Buck Rogers):1929年に始まったフィリップ・ノーラン作、ディック・コールキンス画の米国で初のSF漫画の題名であり主人公の名前。)
地球上で宇宙人に関連すると思われる現象が実際に“目撃”されているとしても、科学的に精査してみると、その目撃例が地球外の何かに関連するものだと立証されることは、ひとつもないように思われます。この記事で話そうとしているのは、他の恒星に住む知的生物のことではなく、私たちの太陽系内に住んでいるかもしれない、人間と同等の知的レベルの生物のことです。
火星から来た緑の小人や、太陽系の他の惑星で高度な知的生物が見つかる可能性は、もちろんまだ完全に否定されているわけではありませんが、現在ではほとんどありえないと考えられています。太陽系のほぼ全域を探査したさまざまな探査機から収集され分析された情報によると、生物が存在する可能性のある惑星や衛星は、ごくわずかしか残っていないと思われます。さらに、今後数十年のうちに、新たな宇宙探査機によって、生物が存在する候補地である太陽系内天体の詳細な調査が進めば、そのほとんどが、人間と同じ程度の生物が存在する候補地ではなくなる可能性が高いと考えられます。
地球上では、人類というたった一種の知的生物が進化するのに45億年以上がかかったのですから、この太陽系内でそれと同レベルの他の知的生物が進化している可能性は極めて低いでしょう。ですから、科学的探査がはるか昔にその目標を大幅に後退させて、他の惑星で細菌のような下等な生物が発見されるだけでも大成果だと考えるようになったのは、驚くべきことではありません。一般の人たちの多くの想像力は、何十年にもわたり、人類のような知的生物が他にも発見される可能性について考えていましたが、その期待は次々と打ち砕かれ、今では藻類や細菌がほんの少し見つかるだけでも十分な成果だと考えられています。最終的に太陽系内で発見される生物がどのようなものであっても、仮に発見されるとしても、微生物よりもはるかに大きなものは、ほぼ間違いなくあり得ないことでしょう。これが、少なくとも、現時点で一般的に合意されている見解です。
2023年4月14日に、1機の探査機が欧州宇宙機関(ESA)によって打ち上げられました。この探査機は、すべてが順調であれば8年後に木星の3つの衛星、エウロパ、カリスト、ガニメデの調査を開始します。その具体的な目的は、このうちの1つ以上の衛星に生物がいる徴候を見つけだすことです。このミッションが成功すれば、太陽系内に地球外生物が存在するのかどうかを、より詳しく知ることができます。
過去50年以上に及ぶ科学的な研究から、特に深海の調査からわかってきたことは、生物は強靱であり、極めて過酷な環境でも存在できるということです。実際のところ、適切なエネルギー源が存在すれば、生物はいかなる場所にでも適応できるようです。深海にある多くの熱水噴出孔の周りには、大型の二枚貝やチューブワームが生息していることが確認されています。そこには太陽光が届かないため、大地の放射元素のエネルギーから生じる熱と、熱水噴出孔から得られる栄養素に、これらの生物は完全に依存して生きています。陸上では、世界中の温泉の周辺に、熱湯の中に浮かぶ藻類の大きな塊が見られます。そして最後に、-20℃より高温になることがほとんどない地域の岩にも、地中深くの圧力によって水の沸点を超える温度である岩にも、岩内生微生物(古細菌、細菌、菌類、地衣類、藻類、アメーバ)が生息しています。このように、ある種の原始的な生物は、私たちが考えるよりもはるかにたくましい存在のようです。
しかし、より高等な生物はこの限りではないようです。中でも私たち人間は、まだ新しくて衝動的な生物種の一つです。これまでは繁栄してきましたが、互いに仲良くし、互いを思いやり、他のすべての生物を大切にし、母なる大地をより一層積極的に保護するための永続的な方法を速やかに見つけ、熱心に実行しない限り、まもなく生命の表舞台から永久に退場することになるでしょう。
太陽系内の別の場所で生物が見つかったとしても、それが藻類や微生物であれば、私たち人類に似た生物とは大きな隔たりがあります。宇宙の中で原始的な生物はごくありふれた存在かもしれませんが、より高度な、人間と同じレベルの生物はゼロに近いほどまれな存在かもしれません。
広大な宇宙
地球はいくつ存在するのか?
OUR VAST UNIVERSE
How many Earths?
幸いにも、宇宙は極めて広大な空間です。極めて大きいため、私たちとよく似た生物が過去にも、現在にも、未来にも、どこかに存在することはほぼ間違いないでしょう。「過去」、「現在」、「未来」のような言い方をするのは、もちろん、私たちが住む場所が極めて小さな世界に過ぎないからです。私たち人間は、同じ時間と空間という体験を共有できるほど互いに近くに住んでいます。互いの距離が離れれば離れるほど、あるいは互いに近づいたり離れたりする移動速度が速ければ速いほど、互いの経験について同意できることが少なくなります。同様に、宇宙のどこかで人間と同レベルの(あるいは人間より優れた)知的生物の決定的な証拠が見つかったとしても、それがいつなのかどこなのかということには、観測者の場所と速度によって見解の差が生じてきます。
私たちの銀河系の中にさえ、私たち以外の知的生物が現在存在すること、つまり、私たちが地球上で共有している時間における現時点で存在していることは、ほぼ間違いのないことでしょう。宇宙には、地球上の砂の数よりも多くの天体が存在することを考えただけでも、人間のような生物が過去にどこかで出現している確率はかなり高いはずです。一度だけではなく、おそらく何千回、何百万回も過去に現れ、その中にはこの地球上の生物とほとんど同じで、もしかしたら私たちに似た歴史を持ち、同じような暴君や同じような偉大な精神的指導者がいた生物さえ存在する可能性もあります。別のさまざまな世界であり、別のさまざまな大地です。
そのような高度な生物が存在する可能性があるのを知るのは、とても良いことです。しかしこれらの生物が互いに交流することはできるのでしょうか。私たちの銀河系では、その端から端まで信号を送るのに10万年もかかり、その返信を受け取るのにさらに10万年を要します。そう考えると、通常の電磁的なエネルギーの送受信による通信では決してうまくいかないでしょう。返信を受け取る頃までには、人類は何らかの新しい種に進化しているか、絶滅していることでしょう。一番近い恒星にメッセージを送っても、届くまでに光速で4年かかり、高度な生物がそこにいてメッセージを受信すれば(まずあり得ないでしょうが)、その返信が届くまでにはさらに4年かかります。
そのため、地球を除く宇宙の中で知的生物同士のコミュニケーションがあり得るとすれば、何か別の手段であるに違いありません。バラ十字会では、テレパシーやサイキック投射(アストラル投射)という現象について、積極的に議論を行い活用しています。もちろん、それはバラ十字会だけに限りません。何千年にもわたって、神秘学の実践者や達人が使用してきた手段です。前世紀あるいはそれよりやや以前から、テレパシーによる通信の正確な性質と伝達メカニズムについて、もっともらしく聞こえるさまざまな説明がなされてきましたが、そのほとんどがある種のエネルギーに関連するものでした。そのようなエネルギーは、合理的に考えるならば光よりも速く伝わることができないため、物理学者が遠方の惑星に電波信号を送信する方法よりも高速に通信することはできません。
テレパシーやサイキック投射などの現象が瞬時の現象、少なくとも光速よりもはるかに速い現象であれば、極めて深い謎がまだ発見されずに残っていることになり、時間と空間に関する理解全体を変えるか、さらに拡張する必要が生じます。
瞑想状態
通信のための方法になりうるか?
THE MEDITATIVE STATE
A medium of Communication?
完全な瞑想状態に入ると、時間が停止しているように感じられます。これは、世界中の神秘家や宗教的な行法を実践している人たちが共通して認識していることです。そのような瞬間には人間の意識に、何か極めて重大なことが起こり、このわずかな瞬間に大量の情報が意識に書き込まれることもあります。完全な瞑想状態とは、思索している時間でもなく、単に集中している時間でもなく、視覚像を形成している時間でもなく、もちろん白昼夢でもありません。完全な瞑想状態とは、極めて明確であるけれども習得するのが難しい内面的なプロセスであり、思索や集中や視覚像の形成で始まることもありますが、わずかの間、時間が停止すると感じられることがその後に起こります。
当然ながら、時間に終わりがあるならば、空間にも終わりがあります。少なくとも私たちの限られた理解の範囲では、時間と空間が互いに独立して存在することはあり得ません。それでは、空間の終わりがあれば、すべてが終わるわけではないのでしょうか。明らかに違うと言う人もいます。というのも、結局のところ、私たちは瞑想から戻りますし、しかも新しい情報、新しい経験、新しい能力がもたらされることもあるからです。もしそうであれば、銀河系間の通信で重要な鍵は、何世代もかけて宇宙を飛行し目的地に到達するためのチタン製の宇宙船ではなく、訓練を受け鍛錬された精神、まさにこの地球上にいる人間の精神の中にあるのではないでしょうか。これはよく語られる主張ですが、残念なことに、光より速いそのような通信がどのように作動すると考えられるのかについては、ほとんど実質的な議論がありません。
個人的には、実際に存在してもおかしくない現象だと私は受け入れています。脳神経を研究している科学者が毎年のように発見している、人間の脳とそれに関連する精神という機能の複雑さ、高度さ、精巧さから判断しても、意識という現象と、それが宇宙全体に広がる現象だという可能性に、これほど多くの関心がとうとう集まるようになったのは不思議なことではありません。科学はいかなる意味でも、単純素朴さを欠点とする学問ではありません。私たちは神秘家として、科学が人類にもたらす有用な無数の発見に敬意を示し受け入れます。しかし過去には、科学が偏見に満ちていた時期があり、主流派に認められている理論以外のすべてが単なる推測や迷信であるとして、十分に考察されることなく排除されていました。しかし正直なところ、神秘家である私たちにも先入観を持ってしまうときがあり、そのようなことが多すぎるのです。神秘家の多くが、不評な科学的知見の一つや二つに、たとえそれが疑う余地もなく厳密に証明されたものであっても、疑いを投げかけたことがあるのは確かなことです。残念なことに、これは人間の性であり、少々の論理性と少々の感情的反応、少々の合理的思考と少々の不合理な信念が混じり合っているのです。それが人間という種なのです!
神秘を探索する
人類の歴史と同じくらい古い神秘
THE MYSTICAL QUEST
Old as Humanity Itself
最後に話題にしたいと思いますが、神秘家は何千年にもわたり、「啓示」(Illumination)と呼ばれる特別な目標に到達するために、さまざまなテクニックを用いてきました。「宇宙意識」とも呼ばれるこの状態、すなわち、全身全霊をゆさぶる、現実を超えた内的な体験を、神秘学の達人は生涯に一度だけではなく、何度も繰り返し得ていました。過去にも、そして現在でもこの体験をしている人がいることに疑いの余地はなく、人類のすべてに、輝かしい〈光〉の導きと励ましを投げかけています。
過去に神と同等であるとさえされていた達人の言葉と思想と行動は、彼らが〈啓示〉を達成したことの証しであり、今では失われている空白を埋めるために、想像力はほとんど必要とされません。肉体的には彼らも人間であり、現代の私たちとほぼ同じです。そのため彼らが直接経験した人生は、私たちの人生と極めてよく似ていたはずです。今日の私たちと同じように、さまざまな気持ちの変化や幸せな時期があり、恐怖の時、幸福の時、飢えの時、苦痛の時、喜びの時、内省の時もあったことでしょう。
古代の神秘学の達人たちがその時代になし遂げたことは、今よりもはるかに過酷な時代状況にもかかわらずなし遂げたことであり、間違いなく、現代の私たちにも同じ達成が可能です。私たちは、豊かな暮らしができ多くの情報が手に入る21世紀の有利な状況を生きていますが、多様な信念を持つ、向上心にあふれる神秘家として、同じ目標を追求していることを忘れないようにしましょう。それは啓示の達成という目標であり、そこからは、生き方の達人になるという成果が得られます。地球上の生物の中で、なし遂げたことが最も多い存在という誇らしい立場を決して忘れないようにしましょう。しかし、その結果私たちは、地球上のすべての人間と他のすべての生物に対するカルマの義務を背負っています。地球というこの壮麗な惑星、この広大な宇宙の中にある唯一無二の、百万に一つもない小さな「青い点」で暮らすすべての生物のために、できることすべてを行いましょう。
※上記の文章は、バラ十字会が会員の方々に年に4回ご提供している神秘・科学・芸術に関する雑誌「バラのこころ」の記事のひとつです。バラ十字会の公式メールマガジン「神秘学が伝える人生を変えるヒント」の購読をこちらから登録すると、この雑誌のPDFファイルを年に4回入手することができます。
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第2号:人間にある2つの性質とバラ十字の象徴、あなたに伝えられる知識はどのように蓄積されたか
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