投稿日: 2021/12/10
最終更新日: 2024/05/21

これから詳しく説明されるように、「ウロボロス」(ouroboros)はギリシャ語で「尾を噛むもの」を意味します。古代の各地の神話に登場する象徴であり、生命力の象徴であるヘビや翼をもつ竜が自身の尾を噛んで輪になっています。始めと終わりがないことから、不滅と「完全なるもの」を意味します。

ウロボロスという象徴は錬金術とも深い関連があります。あらゆるものは能動と受動(噛むものと噛まれるもの)、男性性と女性性など、二元的な要素の合一として存在していることを表しています。また全体としての輪の形は、錬金術で用いられる蒸留器だとされることがあります。

▼参考記事:『錬金術とは - その歴史をわかりやすく解説、ヘルメス哲学の意味、錬金術師の真の目的
https://www.amorc.jp/material_065/

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以下の記事は、バラ十字会日本本部の季刊雑誌『バラのこころ』の記事を、インターネット上に再掲載したものです。

※ バラ十字会は、宗教や政治のいかなる組織からも独立した歴史ある会員制の哲学団体です。

区切り

幾世紀も前から、錬金術の図柄に使われている多くの要素がありますが、そのうちでも、蛇の絵は、最も頻繁に使われてきたもののひとつです。その典型的な例は、医療機関や医者を表すためによく使われるシンボルに、今日でも見ることができます。それは「ヘルメスの杖」と呼ばれる象徴です。ヘルメスの杖は、二元的な極性、つまり男性と女性が調和して一体となったものであり、ギリシャ神話に登場するヘルメス神(ローマ神話ではマーキュリー神)の翼と、杖にからみ合う二匹の蛇によって表されています。エソテリックな(esoteric:秘伝思想的な)文学や哲学の中には、蛇の象徴や図形がさまざまな形で登場しますが、この記事では、そのうちのひとつ、「ウロボロス」として広く知られている象徴について見ていきましょう。この象徴は、蛇または翼を持つ竜として描かれ、自分自身の尾を掴むか噛み付くことで、円形になっています。「ウロボロス」とは、ギリシャ語で「尾を噛むもの」を意味しています。

ウロボロスの起源と古代神話
– Origins

 この象徴が存在していた証拠は大昔にまでさかのぼることができます。エジプトの様々な古代文化の多くで重要な役割を果たし(図1)、最も古い記録は、紀元前1600年頃のもののようです。(脚注1)ニコラス・フラメル(Nicolas Flamel, 1330 – 1417)は、自身の解説書でこの絵についてこう書いています。

ウロボロス
図1

これらは、古代エジプト人が円形に描いた蛇と竜である。頭が尾を噛み、〈一なるもの〉から、そして同じ所から始まることを意味している。それ自体にすべてを備えていることを示し、戻り循環することで、それ自体が完全となることを表している。」(脚注2)

その後ウロボロスは、フェニキアに出現し、その後に古代ギリシャ文化の勢力圏にも表れました。別の例として、紀元前1200年頃の古代中国の周王朝からも、青銅の容器に刻まれているウロボロスが見つかっています。(図2)(脚注3)

ウロボロス
図2

アレクサンドリアにおけるギリシャ風の後期ヘレニズム文化では、おそらくエジプトの図案を盗用して、この図が作られたのだと思われます。この図は、中世と近代初期のヨーロッパの錬金術の写本や文書で、ごく一般的に見ることができます。(図3)アレクサンドリアの詩人で作家のクラウディウス(Claudian、:西暦390年頃)は、次のように書いています。

ウロボロス
図3

「遠くはるか、誰にも知られることなく、思い浮かべられることもなく、神々からも、めったに手を差し伸べられず、長年の過酷な暮らしにやつれた母は、その大きな胸のうちにある原始の洞窟に立ち、その母は、時の揺りかごであり子宮である。蛇は洞窟を囲み、ゆっくりとした力で万物を消化し、緑色の鱗がいつもきらめいている。口は、後ろに曲がった尾を飲み込み、音もなく動き、始まりをたどる。」(脚注4)

ウロボロスはまた、古代スカンジナビア文化では、ヨルムンガンド(Jormungandr)という名前で、ユグドラシル(Yggdrasil:全世界を支える巨大な木)の神話に登場します。インドのヒンズー教の伝説では、竜が亀を取り囲み、その亀の上には4頭の象が乗り、その象が世界を運んでいます。

ウロボロスの象徴的意味
– Symbolism

 このように、あらゆる時代に世界中で、ウロボロスという象徴は使われていました。そして、精神の深奥の洗練という意味合いだけでなく、哲学的な観念も表していました。そしてその観念には、存在の根本原理にかかわる力強い意味合いが伴っていました。現代の用語に置き換えれば、まさにウロボロスは、生命がたどる、永遠に続く周期的過程を象徴する明確な象徴であり、元型(訳注)です。そして、バラ十字会員にとっては、ソウル人格が、再生を含む周期的な経過をたどりながら進化することの象徴です。

訳注:ユング派の心理学の用語である元型とは、夢などで生じてくるイメージや象徴の源となる、すべての個人の精神に共通する、祖先から受け継いだ無意識の働きのこと。

そして主に、時間の観念が、その形に反映されています。しかしながら、そこには「永遠」という性質も伴っています。グノーシス派の実例(図4)として、アレクサンドリア期の「クレオパトラのクリソペア」(紀元2世紀の錬金術に関する書物)にある図を採りあげます。象徴の中央には「エン・ト・パン(en to pan)」(ひとつはすべてである)というギリシャ語が書かれています。この語によって、創造の全体にわたる根本原理が表わされています。このことは、半分を黒く塗り、残りの半分を白く塗ることによって、さらに強調されています。あらゆるところに正反対の2つのものが存在する、つまり能動的な状態と受動的な状態があり、両性具有という性質を持つ全体が構成されていることを表しています。さらにこの図は、環状の蒸留器に形が似ており、物質の錬金術における蒸留の過程と、それが象徴する精神面での変容の過程を、実にうまく表現しています。

ウロボロス
図4

ウロボロスに密接に関連している他の象徴にも、時間の観念の基本的な表現を見いだすことができます。そのひとつの例は、円周が12の部分に区切られている十二宮(十二星座)からなる車輪の図(zodiacal wheel)です。「十二宮」(zodiac)という語の元になっているギリシャ語を調べると、「Zoe」は「生命」を意味し、「diakos」は「輪」を意味しています。また別の例としては、ギリシャ神話の時間の神「クロノス」があります。尾をかむ蛇の形で、円を描いて大地を取り囲み、宇宙全体を取り巻くように表されています。

ウロボロスは、人間の想像力により作り出された素晴らしい象徴であり、その象徴としての役割を十分に果たしているということができるでしょう。人知は、ウロボロスを超えることはできません。というのも、私たちは誰もが普遍的な宇宙意識の一部であり、この普遍的な意識の究極の産物がウロボロスだからです

※上記の文章は、バラ十字会が会員の方々に年に4回ご提供している神秘・科学・芸術に関する雑誌「バラのこころ」の記事のひとつです。バラ十字会の公式メールマガジン「神秘学が伝える人生を変えるヒント」の購読をこちらから登録すると、この雑誌のPDFファイルを年に4回入手することができます。

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脚注:

  1. この年代(紀元前1600年頃)は、インターネットのサイト上に数多く記載されていますが、確実な証拠が付記されたものはありませんでした。読者の方々に、どの程度古いものなのかを大まかに把握していただくために、第3者による情報ですが、この記事に含めました。
  2. リンディー・アブラハム著「錬金術図版辞典」(2003年、207ページ)の引用。原典はフラメル著「ヒエログリフにまつわる図版についての解説-賢者の石と呼ばれる聖なる石についての秘本」(ロンドン、1624年版)
  3. インターネット・サイト:http://www.spirasolaris.ca/sbb4f.html
  4. ジャック・リンドセイ著「The Origins of Alchemy in Graeco-Roman Egypt」(1970年、268ページ)の引用。原典はクラディウスの詩「On the Consulship of Stilicho」の第2巻

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