ボブ・コーゲル
母がインドネシア料理を作るのを見るのは、いつも、驚きに満ちた生き生きとした感覚の体験でした。ひとつひとつスパイスを加えるたびに、様々な香りで台所が満たされるのです。中でも鮮やかな黄色のウコン(英語名:ターメリック)は特別で、いつもその色に魅了されていました。最近私は、いろいろなカレーを作りますが、そのときにはたいていウコンを加えています。今では生の状態のウコンも、黄色い粉末状のウコンと同じようにスーパーで購入することができます。
ウコンは東南アジアの森林に自生しています。ウコンは、地下茎を採るために毎年収穫されますが、残された地下茎から、次のシーズンには新芽が出ます。ウコンを生で使用しない場合には、数時間ゆでて、オーブンで熱をかけて乾燥させた後にすりつぶすと、オレンジと黄色の中間の濃い色をした粉末になります。
ウコンはインド料理やインドネシア料理、タイ料理で決め手になる素材であり、市販のほとんどのカレー粉の重要な材料でもあります。また中近東の料理ではスパイスとして広く用いられ、ペルシャ料理でも、ほとんどの炒めもの料理に最初に入れる調味料です。ウコンには特有の土臭さがあり、わずかに苦く、唐辛子に似たかすかな風味と、からし(mustard:マスタード)のような香りがあります。
インドでは、ウコンのことを一般に、「ハリドラ」(haridra)または「ハルディ」(haldi)と呼びます。タミル語(訳注)では、ウコンのことを「マンニャル」(Manjal)、ウコンの粉末を「マンニャル・トゥール」(Manjal Thool)と呼びます。インド南東部のタミル・ナド州(Tamil Nadu)のイーロードゥ(Erode)は世界最大のウコンの産地であり、アジア最大のウコンの取引所です。そのため、イーロードゥは「黄色の町」(Yellow City)としても知られています。インドでは、ウコンはとても縁起が良いと考えられており、数千年の昔からさまざまな祝祭で広く使用されています。今日でもインドの各地で、結婚式や様々な宗教式典で用いられています。
訳注:タミル語(Tamil language):インド南部やスリランカ北部で主に用いられている言語。
アジア以外で料理に用いられる際には、卵の黄身のような黄色を付けるための色素としてウコンが用いられることがあります。たとえば、缶ジュース、ベーカリー製品、乳製品、アイスクリーム、ヨーグルト、スポンジケーキ、オレンジジュース、ビスケット、黄色のポップコーン、菓子類、ケーキの砂糖ごろも、シリアル、ソース、ゼリーなどです。
ウコンは食品成分を日光から保護する目的や、チーズ、ヨーグルト、粉類、サラダ用ドレッシング、バター、マーガリンなどの着色に用いられています。また、チューブ入りマスタードや缶入りチキンブイヨンなどの安価な着色料として、サフランの代わりに用いられます。
訳注:EU(欧州連合)内で食品添加物として使用される場合は、”E100″または”Natural Yellow 3″というコード名で表示されます。日本では食品添加物としての名称はウコン色素、ターメリック色素、またはクルクミンと表示されています。
長年にわたり、さまざまな香辛料やハーブ(香草)についての科学的研究が行われ、新しい薬効を見いだしたり、多くの現代病の治療に役立てるために、既に知られている効果を再評価する努力が払われてきました。ですから、ウコンがこのような研究の対象となっているのも当然だと思っていました。そして、2001年にBBCニュースで以下のような報道がされたときも驚くことはありませんでした。
カレーにはアルツハイマー病の進行を遅らせる可能性がある
研究者によると、多くのカレーに使われるある香辛料には、アルツハイマー病の治療に効果がある可能性があります。
【免責事項】この記事に書かれている効用はある研究者の見解であり、すべての方に同様の効用を保証するものではありません。
カリフォルニア大学ロサンゼルス校の研究チームは、ウコンは、神経の変性疾患の進行を遅らせる際に、ある役割を果していると考えています。この発見によって、西洋人と比べて、インドの高齢者のアルツハイマー病の発症率が、はるかに低い理由を説明することができます。これまでの研究から、インドのいくつかの村では、そこに住んでいる65歳以上の人のアルツハイマー病の率が、わずか1%であることが示されています。
アルツハイマー病協会の研究責任者であるリチャード・ハーベイ博士は、以下のように述べています。「ウコンは、甘口カレーのコルマから激辛カレーのヴィンダルーまで、あらゆるカレーに用いられている。重要な役割を果している化学物質は、ウコンの成分のひとつであるクルクミンである。クルクミンには抗酸化作用と抗炎症作用の両方がある。」
アルツハイマー病には、アミロイド斑と呼ばれる脳内に蓄積される付着物が関与しています。上記の研究ではウコンによって、アミロイド斑の数が半数に減り、脳の組織内のアルツハイマー病に関連する炎症も減少しました。また、同研究チームは、ウコンが持つ健康への別の効用も見いだしました。ウコンが、消化作用を助け、免疫機能を補助し、心臓発作を予防することが明らかにされたのです。
アメリカの国立衛生研究所には現在、19件の臨床試験が登録され、さまざまな疾病に対して、ウコンとクルクミンの食餌療法の研究が行われています。インターネットで検索すると、さらに以下のような興味深い研究も行われています。
カレーの成分から見つかったある分子によって、がん細胞を殺すことができる。(ロイター)
「アイルランドのコークがん研究センターの研究者たちは、香辛料ウコンの成分のひとつであり、カレーに特有の黄色を与えているクルクミンを、食道がん細胞に作用させた。そして、24時間以内にクルクミンががん細胞を殺し始めることを見いだした。さらに、がん細胞は自己消化(分解)を開始した。これらの報告はイギリスの医学誌『British Journal of Cancer』に掲載されている。」
「これまでの研究結果から、クルクミンには腫瘍を抑制する作用があることが示されている。また、クルクミンのがんを抑制する性質は、摂取後すぐに失われるにもかかわらず、カレーを多量に食べる人はがんになりにくい傾向があることが示唆されている。」
「このアイルランドの研究論文の筆頭著者であるシャロン・マッケンナ(sharon McKenna)は、彼女の研究がきっかけとなり、クルクミンから、食道がんに用いる抗がん剤が研究者によって開発される可能性があると述べている。食道がんによる死者は、全世界で年間50万人以上にのぼる。このがんは特に致死率が高く、5年生存率は12~31%に過ぎない。クルクミンは『細胞の情報伝達という予想外のシステムを用いて』がん細胞を死滅させることを、この研究は示しているとマッケンナは述べている。」
「通常、欠陥を持つ細胞は、アポトーシス(訳注)と呼ばれる、プログラムされた細胞死にいたる。アポトーシスはカスパーゼ(caspase)と呼ばれるタンパク質分解酵素の経路のスイッチが細胞内でオンになった時に引き起こされる。しかし、クルクミンを作用させた細胞では、プログラムされた細胞死の形跡が認められない。また、カスパーゼを阻害しアポトーシスのスイッチをオフにする薬剤を添加しても、死滅する細胞数は変化しないことから、クルクミンは別のシグナル伝達経路を用いてがん細胞を攻撃すると考えられると研究者たちは述べている。」
訳注:アポトーシス(apoptosis):個体全体をより良い状態に保つために、あらかじめ遺伝子で決められたメカニズムによって起こる細胞の自殺のこと。
インドの伝統医学であるアーユルベーダの治療法では、ウコンは、炎症を抑制する薬として、そして、過敏性腸症候群や他の消化器系疾患に伴う胃腸の不快感を治療する薬として用いられてきました。また、ウコンを肌用のクリームに添加して、切り傷、すり傷、やけど用の殺菌剤として使うこともあります。沖縄ではウコン茶がよく飲まれています。
インドの香辛料市場
禁忌:胆石の人や胆汁の分泌に問題のある人は、ウコンを使用しないでください。また、ウコンは子宮の活動を刺激することがあるため、妊婦がウコンを使用する場合には、事前に医師に相談することが重要です。
ウコンは、粉末や錠剤やカプセルとしても服用することができます。錠剤やカプセルはほとんどの健康食品店で入手することができ、通常、ウコン250~500mg入りのカプセルとなっています。上記の情報を参考にして、今夜はウコンたっぷりのカレーを、その数々の健康効果とともに味わいましょう。
【免責事項】この記事に書かれている効用はある研究者の見解であり、すべての方に同様の効用を保証するものではありません。
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