資料室

人生を変える本10冊

Life Changing Books

ステラ・ダーティントン

By Stella Dartington

『ロージクルーシャン・ビーコン』誌の2014年3月号紙上では、私が長年観てきた映画の中で、心を深く揺さぶり、生き方をとても前向きに変えてくれた作品のリストをご紹介しました(訳注)。実は、私を夢中にさせるものには、映画のほかに読書があります。そこで今回は、私がずっと愛しているお気に入りの本を、何冊か皆さんにご紹介したいと思います。

訳注:『ロージクルーシャン・ビーコン』(Rosicrucian Beacon)はバラ十字会AMORC英国本部発行の季刊誌です。著者がここで述べている映画紹介記事の日本語版「人生を変える映画」は、「バラ十字」誌2014年夏号に掲載されており、下記のURLでも読むことができます。
https://www.amorc.jp/material_026/

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近ごろの技術の進歩について不安に思われている方々は、情報を得る主な手段のひとつである「本」の将来について心配されているかもしれませんが、ごく普通の広さの本屋さんの棚を見れば、まだまだ本が、オンラインの情報源や電子書籍端末に負けてないのを確信できることと思います。驚くほどの数の新刊書が出されていることは、昔と変わっていません。ウィキペデイアには、1996年以降のさまざまな年から取り始められた、書籍の出版についての最新の統計が示されています。それらによると、全世界の本の年間の出版点数は、ついに220万タイトルに達しました。そのうちの15万タイトルの新刊本が、イギリスで2011年に出版されています。当時は、極めて安価に出版することができる電子出版のブームだったのですが、それを含めなくても、このような数に上るのです。

読書は時間のかかる作業です。スキミング(訳注)やチャンク化(訳注)や他の速読術をマスターした人にとってでさえ、それは例外ではありません。86,400秒しかない貴重な1日のうち、どれだけの時間を読書に費やすべきかは、ただ一回の熟考だけでは決められない重大な事柄のように思われます。物によっては、少なくとも読者の立場から見れば、時間の無駄というほかない本もあることでしょう。ちょっと見ただけで、内容が悪趣味であったり、新鮮味がなかったり、馬鹿馬鹿しくて最後まで読めるような代物ではないことが分かる本であれば、素通りしてしまっても罪の意識を感じる必要はありません。時間は貴重であり、取り返しがきかないのですから。

訳注:スキミング(skimming):文章の要点をすくい取り、全体の大意を理解するための技術。
チャンク化(chunking):記憶すべき対象を分割したりグループ化したりして、頭に入れやすくする技術。

その一方で、労を惜しまずに読み通すだけの価値が十分にある本もあります。価値ある情報を与えてくれるとか、さまざまな感動を味わえるとか、面白い、元気が得られる、構成が素晴らしい、ストーリーが斬新であるなど理由は様々でしょう。また、気晴らしになるとか、新しい視点や興味深いアイデアが含まれているとか、挿絵が素敵な特別な本もあることでしょう。著者の死後70年が経つと著作権が切れますが、その後も版を重ねている本ならば、少なくとも読む価値があるのではないでしょうか。

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時間をかけて本を読むと、なにがしかの面において、私たちには必ず微妙な変化がもたらされます。しかし中には、ただ単に読んで楽しむだけでなく、その内容を身につけて活用しようと決心した場合に、私たちの人生に深い影響を与えてくれる本もあります。こうした本の著者は、私たちが理解している事柄を超える何かを、人生のある時期に発見した人であり、それを他の人たちと分かち合おうと、まずは心に決め、そしてそのために多大な労力を費やしたのです。深く掘り下げて学んだり、実践してみたり、著者の問いかけに答えるように私たちを誘っている本もあります。また、瞑想という旅に出て、心の中に潜む未解決の問題を探したり、あるいは、自身の内面のプロセスを探って、そこで何が起きているのかを見つけ出し、新たな光を当てるように促している本もあります。幸いにも私は、こうした種類の読書体験に数多く恵まれたおかげで、そこから吸収したものを蓄えて導きの光とすることができました。自分自身の内面で何が起き、それがどのように進行しているのかを、より明確に理解できるようになったのです。ですから、私のお気に入り書籍からベスト・テンを選んでリストを作り、読書によって自分が得たものの一部をあなたと分かち合うことは、愉しいことであると同時に、おそらく、あなたのお役に立つのではないかと考えたのです。

聖書やコーラン、『バガバッド=ギーター』(訳注)や『老子道徳経』(訳注)のような、明らかに宗教や哲学にまつわる書物は、世界的ベストセラーであっても、意図して外しました。これらについて何か知りたいことがあれば、お調べになることは、どなたにもできることと思います。また、バラ十字会が発行している書籍もリストから外してあります。この雑誌の読者の大部分は、それらの本を紹介する資料を、すでにお持ちだと思うからです。さらに、小説や伝記や歴史書でも、あるいは、全集でも特定のテーマについての文章でも、あまりに長編のものは取り上げないことにしました。読破するのがあまりにも難しい本は、リストに含めたくなかったのです。何といっても、グーグルの試算によれば、これまでに出版された書籍の点数は、すでに1億3千万タイトル近くに及ぶのですから、1日の86,400秒をもってしても、すべての本を読破する時間などないのです。

訳注:バガバッド=ギーター(Bhagavad Gita):ヒンドゥー教徒の座右の聖典とされる宗教叙事詩で、叙事詩マハーバーラタの一部である。
老子道徳経:単に『老子』とも『道徳経』とも表記される。

ここで取り上げた10冊は、私が個人的に受けた衝撃の強さを基準にして選びました。そして、その多くが、「精神と身体と感情について」というテーマに関係しているということができるように思われます。良い読書ができたかどうかを判断する私なりの基準のひとつは、何度も繰り返し読みたいと思うかという点と、読み返すたびに、何か新しい特別な喜びを発見できたかという点です。しかし、好みというものは様々な要因で変わるということに、ご注意いただきたいと思います。その日の気分にもよるでしょう。発売日を待たずに気が変わってしまうことだってあるかもしれませんし、読み始める前に、あるいは、読んでいる途中に気が変わることだってありえます。私が選んだ作品は、もちろん私個人の主観と好みに影響されています。しかし、もしかしたらこのリストは、あなた自身が面白い、素晴らしいと思う本のリストを作ったり、それらの本を、なぜそれほどまでに愛し評価するのかをお考えいただくきっかけになるかもしれません。そうした豊かな時間をみなさんにお過ごしいただければ、私としては、この上ない喜びに思います。また、とても心地よい気分をもたらしてくれるものは何であれ、時間の無駄になることはないということを、私は確信しています。

それでは、私のとっておきの愛読書をご紹介いたしましょう。

かもめのジョナサン(No.10)

Jonathan Livingston Seagull
(リチャード・バック著、五木寛之訳、新潮社1974年。後に文庫化。「完成版」は2014年刊)


周囲と異なる生き方をあえて選んだ一羽のカモメの不思議な物語。単に餌を見つけるために空を飛ぶのではなく、決まりきった退屈な生活に仲間たちを閉じ込めている障壁を打ち破るために、カモメのジョナサン・リヴィングストンは、より速くより高く大空を飛翔します。彼ならではの滑空は危険と隣り合わせであり、文字通りの急降下で、一度は危うく命を落としそうになります。それでも夢を追い続け、あらゆる意味で彼は、滑るように高みへと舞い上がります。そこには、私たち人間も自らの夢と興味を追うべきであり、日常の束縛から自身を解放すべきだという思いが込められています。

自分の中に奇跡を起こす(No.9)

Real Magic
(ウェイン・ダイアー著、渡部昇一訳、三笠書房/知的生きかた文庫刊)


現在70歳を過ぎた著者は、日々の暮らしの中で驚くべきことを起こすための手引として、この本の内容が実際に役立つかどうかを、自身の人生でテストしました。彼自身が現代版の「新思想」(訳注)というジャンルにおける最も良く知られた作家になったことでも、自身が学び成長し奇跡を体験し続けていることでも、その有効性が実証されているように思われます。自身が手に入れることを望み、そして、自身が得るにふさわしいものを最終的に手に入れて自分のものにする。著者が知り尽くしているそのための方法が、この素晴らしい手引書の中で、魅力たっぷりに紹介されます。

訳注:新思想(New Thought):19世紀の米国で始まった思想。ラルフ・ワルド・エマーソンの哲学などをベースにして社会に広まり、ニューエイジ思想の源流となった。人間の意識は宇宙と繋がっているという考え方や、自身の思考は人生のさまざまな状況や健康として現実化するという考え方を特徴とする。

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