ヘンリー・ヴァン・ダイク

私は海岸に立っている。かたわらの一艘の船が、
そよ風に向けて白い帆を広げ、青い海に滑り出す。
彼女には、美しさと力が満ちている。
私は長いこと立ちつくし、海と空が互いに溶け合う水平線に、
彼女が、白い雲の切れ端のように浮かぶまでを見届ける。
そのとき、私の横にいた誰かが言う、
「ああ、彼女は行ってしまった」と。
どこに行ったのか?
私の視界から去った。ただそれだけ。
彼女の帆柱も船体も帆桁も、
私のかたわらを離れたときと同じ大きさであり、
そして彼女が、仕事として目的の港へと向かって運ぶ
荷を積んでいることも変わらない。
彼女の小さくなった姿を私は見るが、彼女は見ない。
そして、「ああ、彼女は行ってしまった」と
誰かが言ったまさにそのときに、
彼女の訪れを見つめている他のまなざしがあり、
そして、「彼女がやってきた」と
喜びの叫びを上げようとしている他の声がある。
これが死ということです…。
ヘンリー・ヴァン・ダイク
(米国の作家・教育者、1852-1933)
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