投稿日: 2023/04/21
最終更新日: 2023/04/22

こんにちは、バラ十字会の本庄です。

バラ十字会日本本部代表、本庄のポートレイト

いかがお過ごしでしょうか。

先々週、ニューヨーク市への出張があり、仕事の合間に市内のニコライ・リョーリフ美術館を見学することができました(ニコライ・リョーリフはドイツ語読みでニコライ・レーリッヒと表記されることもあります)。

以前から私は彼の絵が大好きです。その多くには、何か言葉にすることのできないような静けさが溢れているように感じます。美術館で、幸せなひとときを過ごすことができました。

写真撮影が許されていたので、皆さんに絵画をいくつかご紹介することができます。

これは『ヒマラヤ』(Himalayas)という油絵です。「ヒマラヤ」は「雪の住み処」を意味するサンスクリット語だそうですが、この絵を見てある言葉を思い出しました。

ヒマラヤ(Himalayas、ニコライ・リョーリフ作)
ヒマラヤ(Himalayas、ニコライ・リョーリフ作)

ずいぶん昔のことなので、友人と交わした会話なのか本で読んだのかも分からないのですが……

「静かな高地に立って雪を踏みしめ、山並みの、雪に覆われた頂上のひとつが朝一番の光で輝くのを見ると、冬山に登るのが止められなくなるよ」という言葉です。

この絵には『夢の神殿』(Shrine Of Dreams)という題が付けられています。やはり静かな印象の、しかし奇妙な一枚です。

夢の神殿(Shrine Of Dreams、ニコライ・リョーリフ作)

この絵を見ていると、空間が少し歪んでいるように感じてきます。題名から推測すると、リョーリフが何度も夢に見た、古代人の神殿の光景なのでしょうか。

リョーリフは真の国際人であり文化人でした。1874年にロシアのサンクトペテルブルグで生まれ、ロシア人の先生に絵画を習い、ウクライナの文学の影響を受け、ロシア考古学協会の講師でした。

また、神智学、神秘学、古代インドのヴェーダンタ哲学、仏教を研究し、妻のエレナ夫人とともに、アグニ・ヨーガ協会を設立しています。晩年はチベットに住み、そこで生涯を終えています。

この絵は、彼の息子スヴャトスラフ・リョーリフが描いた、リョーリフの肖像画です。

ニコライ・リョーリフの肖像画(Portrait of Nicholas Roerich with Guga Chohan、スヴャトスラフ・リョーリフ作)
ニコライ・リョーリフの肖像画(Portrait of Nicholas Roerich with Guga Chohan、スヴャトスラフ・リョーリフ作)

参考記事:『芸術と人間』(スヴャトスラフ・リョーリフ著)

30歳のころ彼は、ロシア北部の町を旅して、歴史ある遺跡や建物が放置されて、ひどい状態にあるのを目にします。それを絵に描き、文化財の維持、修復をロシア政府に訴えています。

その後リョーリフは、第一次世界大戦やロシア革命の経験から、建物や芸術作品だけでなく、大学、図書館、コンサートホール、劇場などの場所も保護の対象にするべきであり、戦争から守られるべきだと考えるようになります。

リョーリフは、「平和の旗」と呼ばれるバナーと、後にレーリッヒ条約呼ばれるようになる条文を作成しました。この写真は美術館の入り口に掲げられている「平和の旗」です。

リョーリフ美術館(ニューヨーク)の入り口に掲げられた「平和の旗」
リョーリフ美術館(ニューヨーク)の入り口に掲げられた「平和の旗」

この条約の定めによれば、「平和の旗」を掲げた施設は、あらゆる戦闘勢力とは中立であり独立していることを意味し、そこを攻撃してはなりません。

それは、赤十字を掲げた病院や人が戦闘から保護されるのと同じで、「平和の旗」は「文化の赤十字」と呼ばれることもあります。

レーリッヒ条約には、最初は北中南米大陸の21の国が調印し、その後にいくつかの国が加わりました。現在でも文化遺産の保護に関する国際法の形成のために役割を果たし続けています。

世界平和へのこの貢献により、リョーリフは2度ノーベル平和賞の候補に選ばれています。

「平和の旗」の図案では、赤い3つの円が三角形状に配置され、それをひとつの円が囲んでいます。この象徴は極めて歴史の古いもので、新石器時代のお守りにも描かれているということです。

古代マヤ文明のトウモロコシの神(農耕神かつ創造神)との関連を指摘する人もいます。

この神は、何と呼ばれていたかがいまだに分かっていないのですが、古代マヤ人はオリオン座にある3つの星のことを3つの石が置かれた炉床だと考え、この炉床からトウモロコシの神が出現して宇宙を創造したと考えていました。

下の星図を見てください。この3つの星とは、オリオン座の外側の四角形のうちの右下のリゲルと、左下のκ(カッパ)星と三つ星の一番左のζ(ゼータ)星です。この3つはほぼ正三角形に並んでいて、その中心には炉床の火のような赤紫色のオリオン大星雲があります。

オリオン座の三角形と大星雲
オリオン座の三角形と大星雲(イメージ)

リョーリフ自身は、外側の円は文化全体であり、3つの円は芸術、科学、宗教を表すと言っています。また、外側の円は永遠を表し、3つの円は過去、現在、未来でもあると言っています。

リョーリフは、世界の主要な宗教がすべて東洋からもたらされたと考え、宗教上の偉人をテーマにした「東洋の大旗」という絵画シリーズを描いています。そこには、仏陀、ムハンマド、キリスト、孔子、モーセ、ラドネジのセルギイ、役小角(えんのおづぬ)などが描かれています。

このシリーズの中心と考えられているのが、「世界の母」という題のこの絵画です。人類共通の普遍的宗教が成立し、宗教が原因で争うことがなくなるようにというリョーリフの願いが込められているように私には感じられます。

世界の母(Mother of the World、ニコライ・リョーリフ作)
世界の母(Mother of the World、ニコライ・リョーリフ作)

H・スペンサー・ルイスは南フランスの薔薇十字団の活動を受け継ぎ、1915年に当会、バラ十字会AMORCを設立した人物ですが、ニコライ・リョーリフと深い交流がありました。

当会の保管庫には、ニコライ・リョーリフがH・スペンサー・ルイスに贈ったいくつかの宝物と手紙が保管されています。この写真はそのひとつのチベットの聖遺物箱です。

リョーリフからH・S・ルイスに贈られたチベットの聖遺物箱
リョーリフからH・S・ルイスに贈られたチベットの聖遺物箱

「チベット、ヒマラヤ」という題のこの絵には、雪に覆われた山と、簡素な寺院のような建物と仏塔が描かれています。

チベット、ヒマラヤ(Tibet, Himalayas、ニコライ・リョーリフ作)
チベット、ヒマラヤ(Tibet, Himalayas、ニコライ・リョーリフ作)

リョーリフの先ほどの手紙には、興味深いことに、彼のチベットの修道場が大白色友愛組織(Great White Brotherhood)の高位の人の庇護のもとにあると書かれています。また、「シャンバラの最高統治者である聖なるリグデン・ジャルポ(Rigden-Jalpo)」についての言及があります。

ご存じの方もいらっしゃることと思いますが、シャンバラとは11世紀のインドの仏教文献で説かれているチベットの伝説上の理想郷で、そこの住民はすべて悟りに達しているとされます。

リョーリフは、シャンバラについて数多くの発言を行っており、先ほどの絵「チベット、ヒマラヤ」は、彼の想像したこの理想郷が表現されているのかも知れません。

参考記事:『リシ(聖仙)~ヒマラヤ山脈の高みから届く声』(ニコライ・リョーリフ著)

最後までお読みいただき、ありがとうございます。 またお付き合いください。

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