記事:『古代の医学』
※ バラ十字会は、宗教や政治のいかなる組織からも独立した歴史ある会員制の哲学団体です。
アイスマン
皆さんは、「アイスマン」のことをご存じでしょうか?
「アイスマン」は、1991年にアルプス山脈の氷河で見つかった、約5300年前(紀元前3300年頃)の男性のミイラです。
発見された場所にちなんで「エッツィ」という名前でも呼ばれています。
最初は遭難者の遺体だと思われていたのですが、所持品を考古学者が調べたところ、ヨーロッパの青銅器時代前期のものであることがわかり、今はイタリアの研究所の冷凍庫の中で保管されています。
このアイスマンは死後すぐに氷漬けになったため、極めて保存状態が良く、当時の人類を研究する上で非常に重要なものになっています。
皮膚にある入れ墨
アイスマンには、背中や脚に入れ墨の跡があります。
そして、その位置が「足三里」(あしさんり)をはじめ、「胃腧」(いゆ)、「三焦腧」(さんしょうゆ)、「腎腧」(じんゆ)、「崑崙」(こんろん)などのツボの位置と一致します。これらのツボは腰痛に効果のあるツボで、研究によってアイスマンは腰痛持ちだったことも知られています。
しかし、それだけではなく、所持品からは消炎作用のある乾燥キノコなども見つかっており、当時の人は人体の理解と共に、生薬などに対する人体の反応などもある程度知っていたようです。
以上のことから、アイスマンが生きていた時代には、腰痛などを治療するためにツボ治療や生薬を用いており、5300年前のアルプス山脈付近では、高度な医療技術があったのではないかと考えられています。
鍼灸治療
ツボ(経絡)を使用した治療といえば、鍼灸治療などがあり、ツボや経絡の考え方は、主に中国で発達してきたものと考えられてきました。
伝説によれば、紀元前2600年頃に戦争に参加した兵士に矢が刺さった時に発見されたとも言われており、また、道具や植物が偶然体に当たったときの人体の反応から、その効果の研究が始まったともされており、古くは鋭利な石などを使ってツボを刺激していたと考えられています。
しかし、アイスマンの研究から、古代のヨーロッパでも、ツボの効能は知られていたと考えられるようになってきました。
そして、生薬についても、ヨーロッパのネアンデルタール人の人骨の歯に残っているプラーク(歯石)などから、日常的にハーブなどを使用していた痕跡も見つかっています。
東洋医学
いわゆる「東洋医学」は、日本には5~6世紀に大陸から伝来したと考えられ、民間療法、温泉療法などとしても広がっていったようです。
そして、江戸時代では「漢方医学」とも呼ばれていましたが、これはオランダから伝わった「蘭方医学」と区別するために生まれた名称です。
明治時代には、西洋医学を学んだ者のみに医師の資格が与えられることとなり、漢方医学は衰退に向かうわけですが、この頃に「西洋医学」に対する概念として、「東洋医学」という名称が登場したようです。
ですから、漢方や東洋という呼び方からすると中国発祥の医学のようなイメージになりますが、近代の西洋医学以前の医学的な知識は、ユーラシア大陸を通して、似たようなものをベースにしていたのかもしれません。
ちなみに、中国語で「東洋」というと「日本」を指すため、「東洋医学」という言葉は中国ではまったく通じず、中国では特に自分たちの医学に名前を付けていなかったため、2017年になってようやく「中医」という名前を付けたそうです。
ですから、東洋医学、漢方医学という言葉も外から見た言葉で、古くは単に「医学・医術」という概念しかなかったのでしょう。
体のバランス
現在の東洋医学における健康とは、季節やストレス及び生活環境に対して、自己治癒力でバランスが取れている状態をいい、そのバランスが崩れた状態が「未病」とされています。
そして、治療としては、漢方薬や鍼灸などを用いて、もともと取れていたバランスを取り戻すように働きかけます。
漢方薬は、病原菌などに直接作用するわけではなく、人体の自己治癒力を高める信号などを、人間の免疫細胞自体に送るように作用しているとされます。
ですから、漢方薬の効果はそれぞれの人の腸内環境にも左右され、副作用が少ない代わりに効かない人もある程度存在します。
しかし、この場合は腸内環境を改善すれば効果が出るので、腸内環境を改善する漢方薬を服用してから、本来の漢方薬を服用すれば効果が出るようです。
また最近では、西洋医学と漢方薬をミックスして治療を行うことも多いようで、今後の新薬の研究にも漢方薬が大きな役割を果たすと考えられ、新たな研究も始まっています。
この記事の最後の話題として取り上げますが、人体のバランスを整えるもう一つの方法に呼吸法があります。
最近は呼吸法の重要性がたびたび取り上げられています。バラ十字会にも、様々な場面で活用できる数種類の呼吸法が伝えられています。バラ十字会の提供している通信講座では8~11ヵ月目に学習することになり、多くの会員が日常的に実践しています。
参考記事:通信講座「人生を支配する」-教材の内容
https://www.amorc.jp/teaching-materials/
体のバランスを整えるために、まずは呼吸について調べ、呼吸を整えることをお勧めします。
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執筆者プロフィール
渡辺 篤紀
1972年9月30日生まれ。バラ十字会AMORC日本本部下部組織(大阪)役員。ベーシスト。 TV番組のBGM、ゲーム音楽の作編曲のほか、関西を中心にゴスペルやライブハウスでの演奏活動を行っている。