以下の記事は、バラ十字会日本本部の季刊雑誌『バラのこころ』の記事を、インターネット上に再掲載したものです。
※ バラ十字会は、宗教や政治のいかなる組織からも独立した歴史ある会員制の哲学団体です。

プトレマイオス朝の女王の彫像- バラ十字古代エジプト博物館のコレクションから
Ptolemaic Queen – RC 1582

硬く黒い石(玄武岩)でできたこの美しい彫像は、プトレマイオス朝の初期の女王の彫像で、バラ十字古代エジプト博物館の宝物の中でも特に素晴らしいもののひとつです。エジプトの歴史の中でも特徴ある時代に作られた、極めて重要な芸術品です。
エレガントな体つきがエジプト風に造形されており、ごく薄い麻布のぴったりとしたドレスを通して、体の輪郭をはっきりと見て取ることができます。しかしその顔立ちは、彼女の統治時代の雰囲気が反映されているのか、いくらか険しい表情をしています。 その時代はギリシャ・ローマの影響を受けたプトレマイオス朝期(紀元前332~30年)で、当時の統治者たちは日々の生活でも自国エジプトの言葉を使わなかったと言われています。
この彫像の最も興味深い特徴は、3匹のコブラが配された蛇形章の王冠です。3つに分かれている様式化された編み込みの髪の頭飾りは比較的よく見られるものですが、その上にこの王冠が載せられています。体の特徴を描写している造形もそうですが、頭飾りのこの種の網目は、エジプトの第18王朝という早い時期に見られる女王たちの像を模倣しています。特に、アメンホテップ3世の妻であり、アクナトン(アメンホテップ4世)の母であるティイ女王の像に似ています。このように過去の作品の外観を模倣することは、研究者の間では擬古主義(アルカイズム:archaism)としてよく知られています。エジプトの芸術においてもごく一般的なことであり、過去の栄光を再現する手法です。
ロシアのエルミタージュ美術館にもよく似た女王の像がありますが、こちらは豊穣の角(訳注)を抱えています。この彫像は、プトレマイオス2世(フィラデルフォス)の妻であり姉であった女王アルシノエ2世の像だとされています。女王は紀元前270年に亡くなりましたが、夫である王は彼女を深く愛しており、彼女の像を国中のすべての神殿に設置するよう命じました。エルミタージュ美術館の像は疑う余地なくそのひとつであり、ここバラ十字古代エジプト博物館の彫像もおそらく同じです。エジプト生まれの当時の人々は、アルシノエを神とさえ見なして崇拝し、「ゲブの娘、イシスの似姿」だとしていました。
(訳注:豊穣の角(cornucopia):ギリシャ神話で、ゼウスが育ての母アマルテイアに渡したヤギの角。持ち主に無尽蔵の実りを与えるとされる。絵画などで、しばしば、花や果実で内部が満たされた角として描かれている。)
エジプトには、アルシノエ、ベレニケ、クレオパトラという名を持つ偉大な一連の女王が登場しましたが、アルシノエは、その初期の一人にすぎません。5代後のクレオパトラ7世(在位紀元前50~30年)は、ユリウス・カエサル(ジュリアス・シーザー)、マルクス・アントニウス、ローマ皇帝オクタウィアヌス (アウグスツス・カエサル)に対して、さまざまな計略をめぐらせたことで悪名を轟かせました。
玄武岩製、プトレマイオス朝初期(紀元前280~250年頃)
当会は神秘学の源流が古代エジプトにあると考え、その研究に注力しています。研究拠点のひとつ、米国カリフォルニア州サンノゼ市にあるバラ十字古代エジプト博物館は、毎年10万人以上が訪れる人気の観光スポットであり、子供向けの考古学のイベントを開催して、地元の教育にも貢献しています。

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