資料室

夢の虎に立ち向かう - 創造的な夢を見る技法

Face that Tiger - The Creative Dreaming Experience

マイケル・ブッケイ

by Michael Bukay

 夢の中で意識的な決断をすることにより、創造性を高めたり、さまざまな問題の実用的な解決策を得たり、悪夢を見ないようにしたりすることができ、また、人格の矛盾する側面を統合することができます。どのようにしたら、そのようなことができるのでしょうか。そのヒントを、夢を生活の中心に置いている、ある先住民から得ることができます

 セノイ族(Senoi)は、すらりとした体格で薄茶色の肌をした民族で、マレーシアの山岳地帯のジャングルに住んでいます。彼らにとって1日で最も大切な時間は、朝食の時に始まります。朝食には、若者から年寄りまでの家族全員が集まり、自分たちが見た夢を報告するのです。全員が自分が見た夢を覚えています。やっと話すことを覚えた子供たちも、自分が見た夢のことを話し、ほめ言葉や賛同といったご褒美をもらいます。部族の長老たちは注意深くひとりひとりの夢を評価し、上達のための助言を与え、夢の中でどう振る舞うべきかについて、しっかりとした実例を教えます。部族の子供の見る夢は、最初は、世界中のどこの子供たちも見るような典型的な夢です。子供たちは、野生の動物や怪物に追いかけられている夢を見ます。しかし、セノイ族の子供たちは、思春期になる頃までには、悪夢を見ないようにしたり、夢の中で意識的に決断をしたり、夢から創造的な成果を常に引き出せるようにすることを学びます。セノイ族の人々が夢を支配しているのですから、あなたにもできるはずです。

 パトリシア・ガーフィールド博士は、「夢学(ユメオロジー)―創造的な夢の見方と活用法」(訳注)という著書で、夢をコントロールするセノイ族の技法を3つの基本的なルールにまとめました。

訳注:白揚社(1993年)。英文原著は参考文献参照。

1.危険に立ち向かい、それを征服する
2.夢で喜ばしいことに近づいていく
3.夢の中では常に肯定的な結果をなし遂げるようにする

 これらのルールを適用すれば、あなたも夢の中で建設的な変化を起こすことを学ぶことができます。そしてこの変化は、目覚めているときの生活にも反映され、実生活を豊かにすることに役立ちます。また、セノイ族のように、あなたも夢から創造的な成果を引き出す方法を学ぶことができます。

危険に立ち向かい、それを征服する

Confront and Conquer Danger

 セノイ族の子供が、ジャングルの中で獰猛な虎に追いかけられる夢を見たと話したとしましょう。

「さて坊や、それで君はどうしたんだい?」と父親が息子に尋ねます。

「僕は怖かったんだ。逃げようとしたけどほとんど動けなかった。虎がどんどん近づいてきて、僕に飛びかかろうとしているところで目が覚めたんだ。」

「それは良い夢だったんだよ」と彼の父親は答えます。「だけど、君は虎から逃げてはいけなかったんだよ。君が起きている時に出くわす虎は、君を傷つけるかもしれない。でも夢の中の虎は違うんだ。夢の中の虎は、君が逃げたときにだけ、君を傷つけることができるんだよ。もし同じような夢を見たら、今度は虎に立ち向かわなくてはいけないよ。」

「だけど、虎が強すぎて僕の手に負えなかったらどうするの?」

「そうしたら、夢の中の友だちの助けを呼ばなくてはならないね。友だちが来てくれるまでは一人で戦いなさい。夢の中で君を襲う者がいたら、君はいつでもその相手と戦わなければいけないんだ。分かるかい?決して夢の中の敵から逃げてはいけない。夢の中では危険に立ち向かわなくてはならないんだよ。」

夢で、喜ばしいことに近づいていく

Advance Toward Dream Pleasure

 動物がある行動をしたときに、生命の維持に必要な生理活動にとってその行動が望ましいということを、その動物に伝える自然界の方法が喜びです。しかし、目が覚めているときにあまりにも喜び過ぎることは、ジャングルに虎がいるような場合、危険につながることがあります。しかし、セノイ族によれば、夢の中では喜べば喜ぶほど望ましいのです。セノイ族の子供たちは、夢の中で楽しいことがあったら、そちらに向かって進んで行くように勧められます。

肯定的な結果を達成する

Achieve a Positive Outcome

 セノイ族の人々は、肯定的に考える能力を、特に夢の中で発揮します。小さな女の子が母親に、「ココナッツを集めているうちに、崖に突き出ている木から落ちてしまったの」と言ったとしましょう。

「それは素晴らしい夢ね。」と母親は言います。「それであなたはどうしたの?」

「いい夢なんかじゃなかったわ。だって、怖かったし、ひどいことだもの。」

「そうねえ、それであなたはどうしたの?」

「地面にぶつかる前に目が覚めたの。」

「それは良くないことだわ。夢の中ではね、落ちることを怖がってはいけないのよ。あなたは飛べるんだってことを思い出してね。この次、夢の中で落っこちたら、鳥のように飛んでごらんなさい。そうするか、のんびりと地面に降り立つようになさい。どんな面白いことが起こるか見てみるといいわ。」

 このようにしてこの子は、落下する恐怖を飛ぶ喜びに転換することを教わります。セノイ族は、どんな否定的な夢でも肯定的な夢に転換できると考えています。たとえあなたが死んだとしても、あなたはより良い形で生まれ変わることができます。否定的な夢の体験を肯定的な体験に変換することによって、子供たちは、目覚めている生活でよりポジティブになることを教わります。それにより子どもたちは、心や体の病気を引き起こす破壊的な思考に捉われにくくなります。

 夢から得られる最も望ましい成果は、夢のイメージから、役に立つ贈り物を引き出すということです。それによって詩ができるかもしれないし、歌ができるかもしれません。もしくは、部族の抱えている問題の解決策が得られるかもしれません。あなたは夢のイメージに、そのような贈り物をくれるように頼みさえすればいいのです。目が覚めている状態で、その贈り物を役立てることが大切です。夢を通して、下意識(潜在意識)の領域にある創造的な宝庫から絶えず何かを引き出すことで、セノイ族は、さまざまな問題の実際的な解決策を見つけます。彼らは毎日数時間だけ働き、物質的に必要なもののすべてをまかなっています。残りの時間は、集団で夢の探究を行うことと、歌うことや踊ること、そして他の創造的な活動にあてられています。

セノイ族の夢の技法を使う

Applying Senoi Techniques

 セノイ族の夢の技法を実際に使う前に、まず夢で何を見たのかを、よく知っておかなければなりません。良い方法のひとつは、毎晩または毎朝、見た夢の記録をつけることです。繰り返し同じテーマやイメージが現れる場合は、その夢の出来事は目覚めているときの生活から影響を受けていることがわかります。またその逆の場合もあります。魔法の鏡の内側と外側のように、夢か現実のいずれかで達成された進歩は、もう一方に反映されます。

 眠りに落ちる直前に何回も暗示を繰り返すことにより、見る夢のテーマに影響を与えることができます。空を飛ぶ夢、問題の解決、あるいは特定の人が出てくる夢などをプログラムすることができるのです。夢を思い出すことができるかどうかに、成功は大きく左右されます。そして、夢を思い出す能力は練習によって上達させることができます。最初は、夢をプログラムすることに成功していたとしても、その夢を思い出せないでいる場合もあります。

 自己暗示を用いて、夢の内容に影響を与えることができるようになったら、夢をコントロールするセノイ族の技法を用いる準備ができたことになります。眠りに落ちる前に何回も繰り返してください。危険に立ち向かいそれを征服する、夢の喜びに近づく、夢から贈り物を引き出すなどの暗示を繰り返します。最も良い成果を得るために、一晩には一種類の暗示だけを用いてください。しだいに、意識的な決断を自分がしている夢を見られるようになります。

 夢をコントロールすることは、どの程度安全なのでしょうか。「セノイ族が夢によって何かを実現しようとするとき、その構想をどれほど深く理解していたとしても、それが実現することに対する心の準備が整うまでは、夢にその構想が組み込まれることはないように思えます。」とガールフィールド博士は言っています。「ですから、夢のコントロールを試みることはあなたに害を及ぼしません。もしその構想を利用する心の準備があなたにできていないならば、あなたは夢の中でその構想を拒絶します。夢を見る人は生来の安全装置を持っているのです。」

 セノイ族にとって、危険に立ち向かいそれを征服するということは、夢のコントロールの中でも最も重要な原理です。それはまた、近代のゲシュタルト療法(訳注)の原理にもなっています。ゲシュタルト療法では、個々の夢のイメージは、あなた自身の何らかの側面を象徴していると考えられています。たとえ夢の中のイメージが、ある人のイメージであるように思えても、実際にはそれは、その人についてのあなたの観念でしかありません。ある夢の中のイメージが、別のイメージを攻撃していたとすれば、それはあなた自身の一部分が、あなた自身の他の部分を攻撃していることになります。危険に立ち向かい、それを征服することにより、あなたはプシュケ(訳注)の2つの相反する力を中和させ、人格の対立する側面を統合することができます。ガーフィールド博士や他の夢の研究者たちの研究によって、夢に現れる人格をこのように統合することは、目覚めているときの生活での人格の統合につながることが示されています。夢の中で虎に立ち向かうことは、私たちが統合に近づくことを助け、目覚めているときのさまざまな挑戦に立ち向かうための準備を整えてくれます。

訳注:ゲシュタルト療法(Gestalt therapy):ゲシュタルト心理学を応用、発展させた心理療法。人が統合された全体であることと、自己に気づくことを重視する。

プシュケ(psyche):ギリシャ神話のエロス(キューピッド)に愛された蝶の羽をつけた美少女。霊魂の擬人化だとされる。心理学では、個人を動かす原動力としての精神を表す。

参考文献

Creative Dreaming by Patricia L. Garfield, Ballantyne Books NY, 1974.

 ※上記の文章は、バラ十字会が会員の方々に年に4回ご提供している神秘・科学・芸術に関する雑誌「バラのこころ」の記事のひとつです。バラ十字会の公式メールマガジン「神秘学が伝える人生を変えるヒント」の購読をこちらから登録すると、この雑誌のPDFファイルを年に4回入手することができます。

このページのTOPへ