資料室

人工知能(AI)-パニックは不要!

Artificial Intelligence (AI) - Unnecessary Panic!

ロジャー・コッホ

By Roger Koch

 スティーヴン・ホーキングやイーロン・マスク、ビル・ゲイツなどの、現代の科学者や実業家たちは、人工知能(AI)を人類最大の脅威と考えています。 ロシアのウラジミール・プーチン大統領は、AIを最も良く支配する人たちが、世界を支配するようになるだろうと述べています。しかし、それは部屋の中に大きなゾウがいるのに、それが目に入ってないようなもので、大切なことを見逃しているようです。なぜならAIがこの世界を乗っ取ることはないからです。そのようなことは、決して起りません。また、いかなる特定の個人も集団も、AIを支配することはありません。AIは単に、進化の次のステップに過ぎないからです。

 生化学、バイオテクノロジー(生物工学)、微生物学、そしてナノテクノロジーは、すべて急速に進歩しつつあります。観察力の鋭い人は、それらが進歩していくと同時に、その研究が融合しつつあることに気づきます。実際に、分子レベルでは、自然界に由来するもの、もしくは生物に由来するものと、人工的に作られたものとの間の境界線が曖昧になっています。

 人体というマクロレベルでも、3D(三次元)プリンターによる歯科用の製品や、膝やその他の四肢の製作が実現しました。ほとんど子供時代のレベルにまで器官を若返らせることのできる幹細胞を用いて、寿命を延ばす技術が登場したことは言うまでもありません。もちろん、これらはまだ始まりに過ぎません。

 では、運動選手の競技の、たとえば世界記録にとって、このような技術は何を意味するのでしょうか。競技のパフォーマンスを不正に向上させる薬物の検査を行うほかに、手足や臓器や細胞が修復されていないかどうかを検査することになるのでしょうか。オリンピックは今後どうなるのでしょうか。

 身体のさまざまな部分が人工的に強化されたヒューボット(HUBOT)の到来する時代が急速に近づいています。たとえば人工の手足、体に埋め込まれる電子機器、クローン技術で作られた生体組織などです。

 その一方で、懸念されるのはローマン(ROMAN)の進歩です。ローマンとは、ますます精巧になった電子機器と人工知能を備えた機械です。現在、機械の部品は、金属、高分子化合物やその他の、自力で修復などの作用をすることのない素材を用いて製造されています。そのため、修理や交換が必要です。

 科学者は昔から、最も効率的な機械は生物であることを認めてきました。生きた細胞は自己を複製することだけが理由ではなく、環境やその他の予測できない状況に、自力で適応することができるからです。電子工学が発達していくと、論理的な帰結として、生物に見られる構成を、ロボットや他の電子機器の中に回路的に複製することが増えていくことになります。反感や社会的な規制が減っていくにつれて、生体と同じ構成の部品の製作が、クローン技術や、幹細胞を基にした技術や、単に試験管の中で行われるようになります。

 これは、先ほど述べたヒューボットに恐ろしく似ているように聞こえないでしょうか。

 ですから、生物学とナノテクノロジーの科学が融合する一方で、ヒューボットとローマンの間の境界線も消えていきます

 そうすると、たとえ遠く離れた島に住んでいる人でも、このような健康や長寿のためのこのような技術の進歩によって、何らかの支援を受けていない人がいるということは、ほとんどあり得なくなることでしょう。その結果、“自然”な人間は存在しなくなり、私たちは誰もがまさにヒューボットになります。ナノテクノロジーを用いれば、ヒューボットもローマンも空気のない環境で生きるといった超人間的な芸当を演じることができるでしょう。たとえば、肺や心臓の働きを少なくとも一時的に代行することのできる超小型ロボットが入った、飲み込むことのできるカプセルによって血液を再生することができるでしょう。

 一方でローマンも、生物と同じような有機的な部品を用いることから恩恵を受けることができ、ますますヒューボットと似てきて、同じような能力を発揮することになります。この2つの種族がますます統合されていくにつれて、いずれの種も、生殖(複製)することが、性的であれ試験管内であれ、可能になっていくことでしょう。このようにして、AIが人間から地球を乗っ取るのではなく、私たち人間は、単にAIと一体になっていきます。そしてAIは、もはやケーブルとチップでできているのではなく、有機的なDNA(訳注)と同じ性質を持つ回路とシステムで構成されるようになります。

訳注:DNA(deoxyribonucleic acid):デオキシリボ核酸。遺伝情報を担っている、細胞核内の染色体の構成物質。

 しかし、このことは大きな社会的ジレンマを引き起こします。ローマンは、ある国の国民、もしくは世界の住民になることができるのでしょうか。

 自分とは異なるものを嫌悪する人間の典型的な傾向が原因で、しばらくの間、この2つの種族の間には、大きな不和や摩擦が起ることでしょう。ヒューボットはおそらく、工場で組み立てられたロボットとの最初の闘争には勝つことでしょう。そして、ロボットはローマンに進化していきますが、単に奴隷としての立場に留まることでしょう。そして、この2つの種族の、部品と精巧さが融合していくにつれて、ローマンの要求が高まってくることでしょう。彼らにはとりわけ、高度に進歩した人工的な構成要素から生じる強度、耐久性、知的能力といった、ヒューボットに比べて優れた潜在能力があるからです。(ただし、ヒューボットもおそらく、世界中のクラウドに接続されているので、ローマンと同じくらい多くのデータにアクセスでき、知的能力という点ではそれほど差はないかもしれません。)

 それでも、ローマンが平等の権利を獲得することを訴え、要求し、さらには反乱を起こすことは避けられないでしょう。そして、同じような意見や趣味を持つヒューボットとローマンの間の連携や”個人的”な関係によって助けられて、2つの種族の平等が疑いなく達成されることでしょう。

 ですから、私たちがかつて知っていたような、肉と骨でできた人間はおそらく絶滅するでしょう。そして、人間とAIのどちらかを選択するという問題ではなく、未来の人間には、どこまで「自然」のままでいるか、どこまで「ハイブリッド化」を進めるか、どこまで「人工的」要素を取り入れるかという問題が生じます。最終的にはこの3種のすべてが融合して同一の素材になり、その素材からなる新しい種族が人類の進化の次のステップとなります。私はこれを「メタトロン」と呼んでいます。これは、聖書で天界に上昇したと伝えられているエノクの、天界における名前です。以上の経緯は、私の小説『メタトロン』(Metatron)、三部作『聖なる年代記』(The Devine Chronicles)の第三巻(出版待ち)で詳しく語られています。

著者について

 ロジャー・コッホ(Roger Koch)はバラ十字会の会員であり、オーストラリア出身ですが、今現在はマレーシアに住んでいます。彼は世界を飛び回るホテル経営者であり事業家です。遠く離れたパラオ、コロンボ、ヴァヌアツから、国際都市であるシドニー、ロンドン、サンフランシスコ、シンガポールなど14ヵ国の都市に住んでいたことがあります。

 ※上記の文章は、バラ十字会が会員の方々に年に4回ご提供している神秘・科学・芸術に関する雑誌「バラのこころ」の記事のひとつです。バラ十字会の公式メールマガジン「神秘学が伝える人生を変えるヒント」の購読をこちらから登録すると、この雑誌のPDFファイルを年に4回入手することができます。

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