資料室

周期的な運動と振動

Cycles and Vibrations

W・J・アルバシェイム

By W. J. Albersheim

 「サイクル」(cycle)という言葉は周期的な運動を意味しますが、同時に、一回の周期が完結するまでの期間も意味しています。周期的な運動と聞いてすぐに頭に浮かぶものといえば、その典型的な例である振動という往復運動です。そして、宇宙に存在するほぼ全ての力は、周期的な運動によって伝達され維持されています。

 では、周期的な運動と振動は同じものなのでしょうか。日常生活でこれらの言葉を用いる場合には、同じだとも言えます。たとえば、「50サイクル(訳注)の交流」と言えば、正の方向と負の方向へと、1秒間に50回向きを変える振動する電流を意味します。周期的な運動と振動は確かに密接な関係にあります。しかし、この2つの間には根本的な違いがあります。振動は、2つの正反対の状態の間を絶えず行ったり来たりするとか、異なる種類のエネルギー同士が交互に入れ替わるということを意味します。しかし周期的な運動は、進む方向もエネルギーの種類も常に一定です

訳注:サイクル(cycle):「サイクル」(cycle)という英単語は周期的な運動を意味するが、この語は振動数、周波数の単位でもあり、一秒間に何回振動するかを表す。単位としては、同じ意味であるヘルツ(Hz)という言葉が国際単位系とされ、現在ではこちらが使われることが多い。

 太陽の表面について考えてみましょう。太陽はおよそ一ヵ月の周期で自転しています。もし宇宙に存在するものが太陽だけだったとしたら、太陽は自転しているという主張は証明できないばかりか、相対性理論に従えば、そのように言うことは無意味であることになります。というのは、回転を数えるための基準となる地点がないことになるからです。地球を基準にした座標を用いることで、人間は太陽の回転を観測することができます。地球が太陽とは別で離れた位置にあるために、地球から見た太陽の動きを把握することができるのです。

 同じことは公転にも当てはまります。宇宙に存在する物体が太陽と地球だけであり、しかも地球の自転軸が太陽を回る軌道の軸と平行であると仮定すると、一年の終わりを知る方法はひとつもないことでしょう。遠く離れた宇宙の数々の恒星との関係で、太陽の位置を観測することによって、天文学者は一年の長さを確定することができます。

 季節の変化には日照時間の長短や気温の高低が伴いますが、それは地軸が公転面(地球が太陽の周囲を回る軌道)の軸に対しておよそ23度傾いていることによって生じています。北半球が冬である時には、生命の源である太陽から北半球が遠ざかる向きに地軸が傾いています。このとき北極圏では、太陽は全く顔を出しません。このようにして、一年の周期を持つ地球の規則正しい運動によって、明と暗、暖かさと寒さ、誕生と死が交代する連続した振動が生じます(図1参照)。

 この図のように天文学者の観点から全体を見渡し、宇宙が全体としてひとつのものであると見なすならば、この見方では、振動というものが認識されることはありません。後で説明しますが、はっきりとした期間に区切ることができる周期的な運動には2つの性質を持つ要素が必要であり、振動が存在するためには、2つの性質の要素の間に相互作用がなくてはなりません。

 周期についての別の典型的な例に気候があります。地球では、長期にわたる氷河期と短期の間氷期(訳注)の交代が、約260万年の間繰り返されてきました。最近の百万年では、繰り返しの周期は約10万年であり、9万年ほど氷河期が続いた後に1万年ほどの暖かい間氷期が訪れています。

訳注:間氷期(interglacial periods):氷河期と氷河期の間の温暖な期間。

 現在の地球は間氷期にあります。前回の氷河期が終わったのは約1万年前のことでした。かつて地球を覆っていた氷が現在でも大陸規模で残っている場所は、グリーンランドと南極大陸だけであり、世界の他の場所には、規模の小さな氷河が点在しているだけです。現在の間氷期は、最後の氷河期が終わった約1万年前に始まりました。科学者たちは、氷河期を引き起こすものが何であるのかを理解するために、今でも研究を重ねています。大きな要因のひとつは、地球が太陽から受ける光の総量です。

ある実験

An Experiment

 周期的な運動と振動とはどのようなものかを、さらに良く知るための簡単な実験があります。紐の先に、鍵のような多少重みのあるものをくくり付けて、簡単な振り子を作ってみましょう。そして、鍵が円を描くように回してみましょう。すると、指先と鍵の間にある紐が円錐形を描きます。指の上から鍵を見ると、鍵は周期的な軌道をたどっています。自分の体など何か外部にあるものを基準にしない限り、この周期的な運動の始点や終点を定めることはできません。しかし、一方向から観察したり、たとえば、その回転を鏡に映して見ると、その動きが左右に行ったり来たりしているのを見ることができます。つまり、周期的な運動は、外側から眺めた時には、振り子のような振動運動として表れます(図2参照)。

 次に、鍵が直線的に動くように前後に振ってみましょう。鍵は、おじいさんの古時計のように、振り子のような動きをします。鏡に映した動きは、先ほどの回転運動の時とさほど変わらず、その振動の周期さえ、先ほどとまったく同じです。それでもやはり、周期的な運動と振動の間には根本的な違いがあります。振り子は、見かけだけではなく実際に、運動の向きを一定の時間間隔で反転させ、振れるたびにそれぞれの端で完全に静止します。上向きに振れるにつれて速度を落とし、最も高い位置で静止したとき、重力とは逆向きの運動が完結します。つまり、運動を起こすことができる潜在力である位置エネルギーというものを重りが獲得したことになります。振り子が最も低い位置へ向かって下がるにつれて、速度、言い換えれば運動エネルギーが増していきます。この時、空いている方の手で振れを遮ると、この運動エネルギーの勢いを感じることができます。

 今まで説明してきたことをまとめます。まず、途切れることも遮られることもない運動である周期的な運動を観察しました。次に振動を観察しました。振動とは、種類の異なる2つのエネルギーの交代、もしくはエネルギーの充満と解放の交代、もしくは2つの異なる極性と極性の交代でした

 振動も、あらゆる生命現象と同じように、バラ十字会で「三角形の法則」と呼ばれている原理によって解釈することができます。位置エネルギー、つまり振り子が最高点に達したときの状態や、振動するばねがたわんで最も緊張した状態、共振回路のコンデンサーが充電された状態などは、陽極性(プラス)の要素だと考えられます。これらが運動したり作用したりするためには、これらの力が、反対のマイナスの要素と一緒にならなければなりません。振り子の重りの重さのような慣性質量(訳注)や電気回路のインダクタンス(訳注)です。振動は、極性の異なるこの2つの要素の相互作用によって発生し、「三角形の第3の頂点」だと見なすことができます。

訳注:慣性質量(inert mass):物体の質量には、重力質量と慣性質量の2種類がある。慣性質量とは、物体を動かそうと力を加えたときに、それに抵抗する動きにくさ。力の大きさと加速度の比で求められる。

インダクタンス(inductance):誘導係数。通常Lで表わす。コイルなどにおいて電流の変化によって、誘導起電力が生じる割合。共振回路では、コンデンサーの容量とインダクタンスで振動周波数が決まる。

三位一体

The Holy Trinity

 振動を説明するために用いることのできる、さらに根本的な象徴体系が存在します。神秘哲学に造詣の深いクーン博士(Dr Kuhn)は、振動の一連の動きを詳しく説明するにあたって、三位一体のイメージを用いました。

 〈父〉なる神とは、宇宙の全てのエネルギーの総量のことであり、そこにはエネルギー保存の法則が表れている。

 〈子〉とは、位置エネルギーなどの潜在的なエネルギーであり、何かを活動させる働きである。〈子〉は〈父〉を受け入れるすべてのものをいつでも活動させようとしている。〈子〉の作用の実例として、強力な量子ビームや、天地創造のときに発せられた〈言葉〉として思い浮かべることができる。

 〈聖霊〉とは、宗教では「命を与えるもの」と呼ばれているが、この名が示す通り、運動エネルギーという“生命力”である。

 キリスト教によるこの象徴体系に、女性的要素、つまり陰極性の要素は、表面的には含まれていません。しかしすでに述べた通り、潜在的なエネルギーが運動のエネルギーへと変わるためには、潜在的なエネルギーと反対の性質を持つ、女性的で物質的な要素と出会うことが必要です。

 この観点から考えると、周期的な運動と振動に関するこの分析によって、私たちは創造という常に働いている作用を直接考察するように導かれます。創造において、〈一なるもの〉の状態に留まっている限り、神の性質が姿を現すことは永遠にありません。〈一なるもの〉は世界を創造するために、陽と陰、能動と受動、男性と女性、心と物といった2つの極性に分裂します。

 生まれたての宇宙のことを、途方もなく大きな軌道を回るエネルギーに満ちた巨大な球であると思い浮かべてください。しかし、すでに理解したように、周期的な運動から振動する活力に満ちた生命が生じるためには、外部から相互作用を及ぼすような別の何かが存在する必要があります。

 したがって、宇宙を創造する推進力は、出現した宇宙をさらに分割して、次第に、より小さな、個別の特徴を持つ部分部分を作り出します。ですから、進化は、分割を進める爆発的な力になります。プラスとマイナスの性質を得た粒子は、ペアを形成して、それぞれのペアが、独自のリズムに従って振動するようになります。しかし、こうした多種多様な振動は、別の振動を妨害し、やがて世界全体は、不調和と対立と破壊に溢れているように見えるようになります。

 しかし、一見すると壊滅的状態に思える、あらゆるものがあらゆるものと対立する生存を賭けたこの闘争も、全体から見れば、変わることなく脈々と繰り返される振動のリズムの、一方の極限状態に過ぎないのかもしれません。〈創造〉という爆発的な力は、引力や再統合という〈創造〉と対等の力によって、バランスが取られることになるのかもしれません。そうであれば、進化と退化が交互に起こることでしょう。

原点回帰の呼び声

The Homeward Call

 あらゆる宗教の教えに含まれている神秘学的な核心部分では、次のように主張されています。すなわち、すべてを愛する神は、最終的には、創造されて散り散りになった要素を故郷へと呼び戻し、神自体という統一の中で休息させて、元通りに蘇らせると主張されています。壮大な規模の物質の宇宙において、過去137億年の間に、無数に多くの銀河と銀河団が、急速な勢いで互いに遠ざかって行きました。それらが、最終的には停止し、元の場所に戻るであろうと推測している物理学者や神秘家がいます。今のところ、そうなるという確証はなく、実際には、宇宙は永遠に膨張を続けるのかもしれません。

 心という領域に関して言えば、個別の存在が持つ意識は、電子と原子核がその極性の違いによって単純に引きつけ合うことから始まり、植物の知覚能力、動物の本能的な意志へと進化し、文明を持つようになった人類の一人ひとりが極端な個人主義を持つというところにまで行き着きました。まさにこの時点において、哲学と宗教と神秘学は、意識を外側へ向けるのではなく、普遍的精神という愛に満ちた根源へ向けるように転換することを探究者に呼びかけています。ちなみに普遍的精神は、個々の生物のあらゆる経験によって常に学びを得て豊かになりつつあります。

 意識のこの推移は、〈一なるもの〉から〈多様なるもの〉を通過して〈一なるもの〉へと戻る、究極の周期的な運動なのかもしれません。この推移は、物質も時間も空間も超越しており、それに影響を与え振動に変えることができる外部の実体は何も知られていません。

 しかし、神秘というこの領域においては、知性的な分析は完全に失敗します。実際に自分で体験することだけが、さらに前に進んでいく方法です。それでも、分析によって象徴的な儀式に秘められた英知が明かされ、神秘の入り口にまで私たちを導いてくれるならば、本稿の記事のような分析も、望ましい役割を果たすと言うことができます。

 ※上記の文章は、バラ十字会が会員の方々に年に4回ご提供している神秘・科学・芸術に関する雑誌「バラのこころ」の記事のひとつです。バラ十字会の公式メールマガジン「神秘学が伝える人生を変えるヒント」の購読をこちらから登録すると、この雑誌のPDFファイルを年に4回入手することができます。

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