資料室

カバラ-西洋の秘伝思想

The Kabbalah: Secret Tradition of the West

パピュス

By Papus (Gérard Encausse)

 フランスの医師ジェラール・アンコース博士(Gerard Encausse、1865-1916)は、彼が神秘学の著作で用いたパピュスというペンネームで有名ですが、マルティニスト会とバラ十字カバラ団(1888)の共同創始者のひとりでした。バラ十字カバラ団は、カバラの学士、カバラの修士、カバラの博士という3つの階級を、試験を通過して獲得した人々を中核にして構成されていました。

 以下の文章は、パピュスによって書かれた『カバラ-西洋の秘伝思想』からの抜粋です。英語版の翻訳は『バラ十字ダイジェスト』の編集部によって行われました。

カバラ

The Kabbalah

 さて次に我々は、この秘伝思想の高度な部分、すなわちカバラの非公開の教義、秘伝思想のまさに核心の部分に取り組むことにしよう。

 表1に見られるように、カバラの理論的な部分が、我々が知ることのできる唯一の部分であり、実践的な部分、すなわち魔術的な部分には依然として秘密が保たれており、いくつかの例外的な手稿においてさえ、ほとんど触れられていない。

カバラの理論

Theoretical Kabbalah

 カバラの理論的な部分については、この分野を調査している著作家たちによって、極めて異なるさまざまな視点から考察がなされてきた。彼らの業績のうち、最も重要ないくつかの原理を手短に検討してみよう。

 第一のグループは、調査する人の数が最も多く、カバラを、関連する聖典や文献などに基づいて区分する方法である。この考え方を採用しているのは、フランク・アド氏(Mr. Ad. Franck)の優れた著作(1834)、エリファス・レヴィ(Eliphas Levi、1853)によるもの、イシドール・ローブ(Isidore Loeb)による『大百科全書』のカバラの項目などである。

 当時の神秘学的な思索で扱われていた主なテーマは、「エゼキエルの戦車」として比喩的に表されている「戦車の業」(maasse mercaba:マアセ・メルカバー)と「創造の業」(maasse bereschit:マアセ・ベレシト)である。

訳注:メルカバー(Mercabah):旧約聖書の『エゼキエル書』に登場する神の戦車。カバラの修行法のひとつを象徴している。

ベレシト(bereschit):ヘブライ語で『創世記』は、この書の冒頭の言葉を取って「ベレシト」と呼ばれている。「ベレシト」は「はじめに」を意味する。

  「戦車の業」は偉大なる作業(dabar gadol)でもある。それは超自然的な世界の存在、神、さまざまな影響力、そして時として「天界の家族」と呼ばれる基礎的な理想的観念について検討することである。そして「創造の業」とは、森羅万象の創造と天上の世界の性質について検討することである。

 この立場によれば、カバラの区分は次のようになる。

 S・ムンク氏(Mr. S. Munk)などの他の著述家は、次のようにカバラを区分している。

 ここから理解されるように、ムンクには、何人かのカバラ研究者、特にキルヒャー(Kircher)が採用した古い区分に賛同する傾向がある。

 しかしカバラの最も完全な区分は、モリトール(Molitor)によるものであるというのが我々の意見である。それは先ほど示した全体的な表の中に、我々が取り入れた区分である。モリトールの区分をこのように一般的に受け入れられている全体的な区分に取り込むことには次のような利点がある。すなわち、彼の元々の適用範囲を超えて、あたかも我々がカバラの実用的部分を認識しているかのように、我々の視点を補ってくれるという利点である。

 伝統的な教えは、人間の本質や欲求と同じように3つの要素からなっており、歴史的であると同時に、道徳的、神秘学的である。したがって、カバラの聖典の文章には3重の意味が含まれている。

1.文字通りの歴史的な意味(pashut)は、人間の肉体もしくは神殿の広場にあたる。

2.道徳的な教え(drusch)は、人間の魂(soul:ソウル)もしくは神殿の神聖な場所にあたる。

3.最後に、神秘学的な意味(sod)は、人間の霊(spirit)と神殿の至聖所(the holy of holies)にあたる。

 最初の「文字通りの歴史的な意味」は、いにしえの族長たちの人生に由来する数々の物語で構成されている。これは、良く知られている多くの伝説と同じように、世代から世代へと受け継がれてきたものである。聖書の写本や古代カルデア人の言い換えの中に、注釈という形であちこちに散りばめられているのが見られる。

 道徳的な意味は、実際的な見地からあらゆるものごとを見ているが、一方で神秘学的な意味は、目で見ることのできる束の間の世界を超越して、永遠の領域にいつも漂っている。

 したがって、神秘学的な意味を知るには秘密の訓練が必要であり、並々ならぬ精神的な献身が求められる。

 道徳的な意味と神秘学的な意味を習得するためには、年齢や社会的立場に関係なく、弟子として入門することが必要とされる。父親が子供を入門させて、幼い時から教えるようなことも時には生じた。

 この高度な伝統の英知はカバラと呼ばれている。ヘブライ語ではキベル(KIBBEL)であり「一緒に加わること」を意味する。「カバラ」(Kabbalah)という語の外的な形の内部には、超自然的な理想的観念を発想する魂の聡明さが隠されている

 カバラは2つに分けられる。理論面と実践面である。

1.神の聖なる神秘と聖人たちに関するイスラエルの族長たちの伝統的考え方

2.非物質的な存在の創造と天使たちの堕落について

3.創造の六日間における、混沌と物質と世界の再生の起源について

4.目で見ることができる人(人間)の創造と、その堕落、そして元の状態へと復帰するための聖なる道について。

 別の言い方をするならば、カバラは次のことを扱っている。

・創造の業(Masse Bereschit)

・天の戦車(Mercabah)

 創造の業は『セーフェル・イェツィラー』の中に含まれている。

 我々は、この書の初めてのフランス語訳を担当した(1887)。その後、さらに進んだ新たな翻訳が現れた。より完全な翻訳を完成させてくれたメイヤー・ランベール氏(Mr. Mayer-Lambert)にこの場で感謝したい。この極めて重要な翻訳を読まれることを、我々は心からお勧めする。ただひとつ残念なのは、関係者全員に極めて役立つであろう、参考文献のリストがないことである。

 そのため、読者が可能な限り、我々の翻訳を補う情報を手に入れられるように、セーフェル・イェツィラーを補足する新たな研究成果をまとめた表を、この記事の最後に提供する。惑星と曜日の関係については修正を施している。というのも、以前のそれらの関係は、惑星の順序と曜日の順序の間の関連についての理解不足のために、間違って定められたと考えられるからである。アリエット(筆名エテイヤ)が紹介したエジプト時代の時計には、この間違いの原因が明確に示されている。

 天界の戦車の業は、ゾハールに含まれている。ここでは紙面に限りがあるので、この本の翻訳(すでにラテン語と英語に翻訳されたものがある)を紹介することは控えるが、イシドール・ローブ氏(Mr. Isidore Loeb)の『大百科全書』のカバラの項目に記載されている素晴らしい要約で満足することにしよう。

「ゾハールは、モーセ五書(訳注:旧約聖書の初めの5書)にカバラの立場から施された注釈である。我々が所有している文書が、その原型であるのかどうかは定かではないが、我々が所有している文書は、おそらく複数の人々によって作られたものである。ゾハールには膨大な量の編集が施されており、そこには書き手もしくは書き手集団の考えとともに、多かれ少なかれ、他の古代の文書からのアイデアも含まれている。たとえば、「秘密の書」(the Book of the Secret)、「大集会」(The Great Assembly)、「小集会」(The Lesser Assembly)、「天界の天幕の書」(The Book of Heavenly Tents)、「忠実な羊飼い」(The Faithful Shepherd)、「若者への講話」(The Discourse of a Young Man)などである。」

 ※上記の文章は、バラ十字会が会員の方々に年に4回ご提供している神秘・科学・芸術に関する雑誌「バラのこころ」の記事のひとつです。バラ十字会の公式メールマガジン「神秘学が伝える人生を変えるヒント」の購読をこちらから登録すると、この雑誌のPDFファイルを年に4回入手することができます。

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