資料室

アファメーションの真実

The Truth About Affirmations

H・スペンサー・ルイス博士、バラ十字会AMORC元代表

By Dr. H Spencer Lewis
Former Imperator of the Rosicrucian Order AMORC

 フランスの心理学者エミール・クーエ(Émile Coué)は、「日々あらゆる点で私はますます良くなりつつあります」という魅力的な言葉から作られたアファメーション(訳注)を発表しましたが、アメリカの人々の多くは、アファメーションという心理学の原理を誤解しており、その状況はひとつも変わることがありませんでした。欧米では一般にアファメーション、すなわち肯定的な言葉を自分に語りかけることで、自分の身体や精神、物質的な状況に影響を与えようとすることの価値や実用性が、はなはだしく誤解されてきました。また、応用心理学の真の基本原則にも同じことが起きていると言うことができます。

訳注:アファメーション(affirmation):英語の「affirmation」という語は、断言、肯定などの意味を持つ。肯定的な言葉を自分に断定的に語りかけることで、望ましい結果を生じさせようとすること。

 東洋では、多くの人たちが人生の非物質的な法則に長い間慣れ親しんできたため、彼らは、富や健康についての肯定的な言葉を発するだけでは、まだ存在していない望むものが、自分の周囲に現れることはないという事実をよく承知しています。あらゆる大陸にいる真の神秘家、特にバラ十字哲学の原理について十分な教育を受けた人は、ある特定の状況下で、ある特定のアファメーションを行うことは重要であり、ある枠組みにおいては実用的であるということを知っています。しかし、正しくない、つまり正しい根拠に基づいていないアファメーションは無価値であるだけでなく、実のところ有害であることも理解しています。

 何らかの病気や不調のために痛みに苦しんでいる人が、「私は完璧に健康で、〈宇宙〉と完璧に同調しています」というアファメーションを、まさにその苦しみの最中に行ったとして、その人の健康状態に何らかの効果を及ぼすことがあり得るでしょうか。痛みは、自然界が正当だと認めず〈宇宙〉が許可しない状態ではありませんし、存在しないと断言すべき何かでもありません。痛みは、法則に従って作られているもののひとつです。つまり、身体が病気になった場合や、心身に何らかの異常が起きた場合に生じるものであり、まさに自然な現象のひとつです。痛みには必ず、それを存在させている原因と、それが現れている理由があります。痛みの原因は自然に反していることかもしれません。そのような場合、通常その原因は必然的なものではなく、取り除くことができます。しかし、病気の結果として痛みが生じるということは完全に必然的なことであり、自然の法則に沿ったことであり、〈宇宙〉の摂理に則したことです。

 ですから、痛みがはっきりと現れているときに「痛みがない」というアファメーションを行うことは、理屈に従って生じている何らかの存在を否定しようと試みることになります。また痛みによって、それを避けたり理解したりしようとする行動が促されますが、そのように行動することも、アファメーションによって拒絶されてしまうことになります。したがって、痛みではなく痛みの原因のことを、取り除くべき望ましくない条件だと考えるべきです。心身の病気や異常な状態は、「存在しない」というアファメーションを行っても、取り除くことはできません。

 貧困、事業の失敗、物質的な問題は、それらの状況が存在せず想像の産物であるというアファメーションを行ったとしても、変えることはできません。それらの存在を否定することによって意識の外へ追い出し、心から締め出しているに過ぎません。借金から解放されることを求め、必要なものが十分に得られるように〈宇宙〉の支援を求める人が、「私には借金がありません。私には自由に用いることのできる〈宇宙〉の豊かさがあります」というアファメーションを行うことは、単に現状に目をつむり、空想した事実ではないイメージによって顕在意識をなだめようとしているに過ぎません。その結果として、適切な方法で状況を改善するためのあらゆる努力を一時的に放棄しているのです。自らが作り出したこのような混乱した態度によって、すべてがうまくいき、努力する必要はなく、他の方法について考える必要さえないと人は信じてしまいがちです。

 ドラッグに溺れることによって、あるいは富と満足という輝かしいイメージを用いて催眠を誘導したり、軽はずみな想像による励ましを得たりすることによって、そのときどきの心配ごとや試練や問題を心から締め出す人もいます。これらの人たちは、現実の状況が存在しないとか、空想上の報酬が実際に存在するというアファメーションを行う人と同じように、間違った実践の犠牲者に他なりません。

 ここまでの説明から判断いただけるように、自然の法則や〈宇宙〉の働きに慣れ親しんでいる神秘家は、次のことを承知しています。つまり、自身に起っているできごとを自分個人でコントロールする能力や、状況を整えるための自らの意志は、結果として現れてしまったことを否定するのではなく、その状況に至った原因を変えるために使用しなければなりません。アファメーションに関する先ほどの誤った解釈は、意識に関する心理学の基本法則についての東洋の神秘家の考え方を、誤って理解していることから生じています。

 現実ではない状況が存在すると見なすことは、それが外面的に行われようと心の中で行われようと間違いであり不健全であることを、真の神秘家は承知しています。痛みに苦しむこと、病気を患うこと、貧困に苦しむこと、必要なものを得られずに苦しむことなどに関して、それらに苦しみ続けなければならないということを神秘家は受け入れません。神秘家はさらに、これらの苦しみによって、自分が力づくで支配されてしまうことを拒みます。何か全能の力のようなものが働いていて、日常生活に物質的な苦しみを設定し、自分の生き方を制約したり、〈宇宙〉の恵みが与えてくれる喜びを制限したりしているという考え方を、神秘家の多くがはっきりと否定します。そして神秘家は、「そのような苦しみは存在しない」というアファメーションを行うことによってではなく、「それらの苦しみはずっと存続し続けるべきではなく、実際に見えている通りのものでもなく、自分の意志に従わせることができる」というアファメーションを行うことによって、これらの苦しみを拒絶し、自分の生活から排除します。

 痛みが、ある原因から生じた自然の結果であるのと同じように、貧困も、生活に必要とされる品物の不足も、人生に喜びが足りないと感じることさえ、ある原因から生じた結果であり、その原因を見つけ出して変えなければなりません。

 歯のひどい痛みに苦しんでいるときに、「私に歯の痛みはありません。〈宇宙〉と調和しています」というアファメーションを行うことは実に無謀なことであり、〈宇宙〉や自然の法則に完全に反したことです。そのようなアファメーションを唱えたとしても、痛みを起こしている虫歯に影響を与えることも、虫歯や痛みの原因に影響を与えることも、関連する他の何かに影響を与えることもありません。また、そのアファメーションによって、歯痛に苦しんでいる人が、それを唱えているときに〈宇宙〉と調和しているという確固たる証拠がもたらされるわけでもありません。現実的な神秘家は、さまざまな思想グループの名だたる創始者が世間に広めた、さまざまな憶測に基づく仮説や空虚な推測の数々に心を煩わされることなく、次のことを承知しています。つまり、意志の力と精神の壮大な創造力を用いて、歯に痛みを起こしている真の原因である状態を直接変え、苦痛を和らげるべきだということです。そのとき、痛みを存在しないと見なすというような適切でない行いは必要とされません。

 このような知識を持つ神秘家は、病気や苦しみの原因を取り除いて体の調和状態を取り戻すことによって、自分の苦しみを終わらせ、人は「〈宇宙〉と調和した状態」になることができ、人は真に「〈宇宙〉が愛する子供」であることをすぐに実証します。

 経済的な、または他の種類の物質的な緊急事態に対処するために、当面必要とされるものを持っていない人は、「溢れるほどのものが私に与えられるので、何も心配する必要はない」というアファメーションが、何の安心ももたらさず、望んでいる安心を実際にもたらすその人の行動を単に妨害し、かつ禁止しているのに過ぎないことを理解することになります。

 この文章の目的は、人気のあるセミナーなどの講師が一般に広めている、アファメーションにありがちな誤解や思い違いを皆さんの心から取り除くことです。彼らは、神秘学が扱うような〈宇宙〉の法則についてあまり知りませんが、数回の心理学の授業を受けることで、人生のあらゆる問題をコントロールできる鍵が得られるという迷信を、多くの人たちが持っているということを知っています。

 ですから、アファメーションについて、これまでにあなたがどのようなことを読んだり学んだりしていたとしても、それをいったん保留しておくことをお勧めします。そのようなレッスンで受けた指示が、これまでうまくいっていると感じている場合もです。あなたが講師との親しい関係を通して、アファメーションを用いることがとても好きになったという場合や、講師が魅力的であるため読んだり学んだりしたことすべてを否定できない場合でも、少なくともその素敵な信念を保留し、しばらくの間しまっておくと良いでしょう。私は以降の章でアファメーションについて新しい考え方について書くつもりですので、それを読むまでは、家宝やこの物質的な世界の珍しい品々と一緒に、宝箱の中にしまっておいてください。

 ※上記の文章は、バラ十字会が会員の方々に年に4回ご提供している神秘・科学・芸術に関する雑誌「バラのこころ」の記事のひとつです。バラ十字会の公式メールマガジン「神秘学が伝える人生を変えるヒント」の購読をこちらから登録すると、この雑誌のPDFファイルを年に4回入手することができます。

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