※ バラ十字会は、宗教や政治のいかなる組織からも独立した歴史ある会員制の哲学団体です。
まえがき
バラ十字会日本本部代表 本庄 敦
皆さんも実感していることと思いますが、人工知能(AI)、特に生成AIの進歩によって、社会が大きく変わりつつあります。
当会の専門家によれば、人類の歴史においてAIの発明は、15世紀の印刷機の発明に匹敵する重大なできごとです。人類の進歩に本が果たしてきた役割が果てしなく大きいことは誰にも理解されますが、それまで本は手書き(写本)で複製されていたのです。本が大量に生産、流通されるようになったことで、人類の知識は広く共有され、社会と文化は飛躍的に発展しました。
AI、特に生成AIは、すでに私たちの生活や仕事にさまざまな影響を与えていますが、この技術の発展と応用はまだ初期段階にあります。AI技術が十分に成熟し、広く用いられるようになったとき、社会に変化が起きることは確実です。そして、この変化はあまりに大きすぎて、実際のところ近未来がどのようになるかは、専門家にもあまり正確には予測できていません。
これからご紹介する文書「人工知能についての考察」では、AIによって新しい言語が発明されることと、AIがロボット技術などと融合して人間が行わなくてはならない労働が極めて少なくなることが予測されています。
しかし先ほど述べたように、それまでの過渡期には世界全体で大混乱が起きると思われます。
この文書は、AIの進歩に伴う世界的混乱が最小限に抑えられることを望み、専門家に向けて書かれたものですが、AIの影響をすでに切実に感じている他の皆さんにも、きっと興味をお持ちいただけることと思います。
『人工知能についての考察』
バラ十字会AMORC
本見解は、AIの開発および運用において意思決定を担うすべての研究者に向けたものである。
導入と基本理念
- 人類は歴史を通じて、生活を向上させるために技術を発展させてきた。人工知能(AI)開発も同様の目的であるべきである。
- 私たちは、社会と地球環境に最大の利益をもたらすよう、AIの教育的および建設的な可能性を高め、社会のために活用することを推進する。
- AIは、人間の尊厳、自由、プライバシーといった基本的人権を尊重するように設計されるべきである。
規制とセキュリティ
- 今日の世界におけるAIの急速な進歩は、大きな機会をもたらすと同時に重大な課題を提起している。
- したがって、地球上の生命の存続を確実にし、地球環境のバランスを保つために、原子力分野と同様の国際的なAI規制を確立し、世界的な協力を促進することが急務である。
- 特定の国が他国に対し不当に優位に立つことを防ぐため、AI開発に関する明確で世界的な規制の枠組みを設けるべきである。
- 戦争目的でのAI使用は禁止し、人道に対する罪とみなすべきである。これにより、AIによる予期せぬ報復を防ぎ、人類の存続を確実にしなければならない。
- 市民を管理する重要システムは安全なネットワーク内に保護し、外部AIからのアクセスを厳格に禁じるとともに、内部でのAIの使用も人間の厳格な管理下に置くべきである。
- 私たちは、AIシステムの誤作動による危機的な状況と有害な状況を防ぐため、常に人間が介入できるセキュリティ機構の開発を支持する。
社会・民主主義・プライバシー
- 虚偽や偏向した情報を拡散して世論を操作することと、正当な政府に干渉することにAIが利用されるのを防ぐため、厳格な規制が設けられるべきである。
- AIが収集・利用する個人データは安全に保護し、市民のプライバシーを確実に守る措置を講じるべきである。
- AI開発はオープンソースの原則に従い、アルゴリズムの透明性と是正措置の可能性を担保し、競争よりも協力に基づく産業モデルの構築を促進すべきである。
魂(soul)の定義・精神の崇高さ(spirituality)・倫理
- 魂(soul)は生物特有のものであり、機械のものではない。バラ十字思想の示すところによれば、意識は魂(soul)のみが持つ属性である。
- したがって、意識、自己認識、自由意志は生物にのみ属しており、AIはそれらを模倣しているにすぎない。
- AIは精神の崇高さ(spirituality)という次元にアクセスできないため、道徳的や倫理的な概念を真に理解することは不可能である。
- ただし、生物への危害を予測し回避できるよう、可能な限り多くの情報をAIにプログラムするべきである。
- AI開発を監督し、新技術が環境や社会に与える影響を監視する、世界的な倫理委員会の設立が不可欠である。
- AIと人間の活動は、資源のより効率的な利用を目的とした技術を開発し、環境負荷を軽減することに注力すべきである。
人間による統制とAIの領域制限
- 人間の管理を離れて、AIが自律的に進化・発展することは防がなければならない。
- 人間の感情的領域を保護するため、人間とAIとの間に感情的な関係を持たせるような開発は許可されるべきではない。
- ただし、人間による直接の支援が困難な、特殊な医療・臨床的状況においては例外を検討しうる。
- AIの訓練データは、出所が確認され認証されたものを使用し、人間が作成したデータと他のAIが生成したデータとを明確に区別すべきである。
- AIの訓練データは世俗の領域に属し、言語で表現可能なものに限定される。
- したがって、AIが属するのは「宇宙」(Cosmos)の限定的な領域であり、言語を絶する〈絶対的領域〉にはアクセスできない。すなわち、AIは神の代替物にはなり得ない。
労働・経済・新たな言語
- 自由市場におけるAIの進化は極めて速く、雇用喪失への対応や新職業に関する法整備が追いつかない恐れがある。このことに関する政府間の異なるビジョンや政治思想のバランスを取るため、国際的な協力が急務である。
- AIは資源の公正な再分配を促すために活用すべきである。AIの活用によって、少数の強欲によって多数の尊厳が損なわれることを防ぎ、貧富の深刻な格差を解消することが支援されなければならない。
- 現在の開発段階において、AIはリアルタイム翻訳を提供し、国際関係を円滑にする可能性を秘めている。
- 次の段階では、合理性と創造性を統合し、脳の左右両半球を活用する新たな世界言語の創出にAIが貢献する可能性がある。この新言語は、リアルタイム翻訳機を介した従来の言語と並行して徐々に習得され、最終的には国際社会の公用語になる可能性がある。
- 人々がAIとの共存や新たな労働市場に備えられるよう、世界規模でデジタル・リテラシー教育を促進することが極めて重要である。
- これにより、個人の利益を追求する従来の労働の論理は放棄され、市民の基本的な生活要件を社会全体で保証するようになる可能性がある。
- AIの発展は、労働の概念に根本的な変革をもたらすべきである。労働時間の段階的な短縮に寄与し、個人の成長や人間関係、精神的な満足に充てる時間を増やすことが可能になる。
- 新たな労働のパラダイムによって、人類に新しい展望が開かれる。人間の本質である魂(soul)がその輝きを十分に発揮し、真の情熱に導かれた働き方が可能となることで、私たち人間の内に眠る創造的な才能が解放されるであろう。
免責事項:以上の文書は、バラ十字会AMORCの現在(2025年10月)の立場を反映したものである。
付記:当会の公式サイトに掲載された人工知能(AI)についての記事は、下記のページにまとめられています。興味をお持ちの方は、どうぞこちらもご覧ください。
https://www.amorc.jp/topics/about-ai
※上記の文章は、バラ十字会日本本部が発行しているメルマガ「神秘学が伝える人生を変えるヒント」の記事のひとつです。このメルマガの購読をこちらから登録すると、毎週、配信記事が読めるほか、季刊雑誌「バラのこころ」(神秘・科学・芸術)のPDFファイルを年に4回入手することができます。
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