投稿日: 2025/10/30
最終更新日: 2025/10/31

まえがき

バラ十字会の本庄です。

※ バラ十字会は、宗教や政治のいかなる組織からも独立した歴史ある会員制の哲学団体です。

当会(バラ十字会AMORC)のフランス代表が、自身の人気ブログに書いた「バラ十字」の象徴的な意味についての記事をご紹介します。

「バラ」も「十字」も強い印象を与える象徴であるためか、「バラ十字」にまつわるいくつかの誤解があります。下記の文章で歴史的な事実を多くの方に知っていただければと思います。

区切り

記事:『バラ十字について』(À propos de la Rose-croix)

バラ十字会AMORCフランス語圏本部代表セルジュ・ツーサン
バラ十字会フランス本部代表セルジュ・トゥーサン

ゲーテ(1749-1832)は未完の詩『神秘』に、「バラと十字を結婚させた(結びつけた)のは誰か?」と書いています。この言葉は、バラ十字会(薔薇十字団)とその象徴であるバラ十字の起源についての疑問を表していますが、その答えは誰にもわかりません。歴史的に見ると、バラ十字会についての最初の記述は17世紀の初めであり、それはこの会が存在を公表した3つのマニフェスト(宣言書)「薔薇十字団の声明」(1614年)、「薔薇十字友愛組織の告白」(1615年)、「クリスチャン・ローゼンクロイツの化学の結婚」(1616年)が出版される数年前のことでした。しかしいくつかの伝統的な資料は、古代の神秘学派にたびたび通っていた神秘家たちによって、この象徴が使われていたと報告しています。また、テンプル騎士団が、特定の儀式でこの象徴を用いていたと述べている資料もあります。

コム・オンボ神殿の柱に彫られたアンクフ(Ankh)
エジプト・アスワンのコム・オンボ(Kom Ombo)神殿の柱に彫られたアンク(ankh:上方が輪になっている十字)

十字という象徴の歴史的な起源

歴史的な記録によれば、十字が最初に用いられたのは古代エジプトであり、宗教的な象徴であったと一般に考えられています。その後、十字はアンク(ankh:上方が輪になっている十字)の形で表れ、永遠の生命を象徴しました。このことは、古代エジプト人たちが魂の不滅を信じていたことを立証しています。神殿の壁には、多くの神々が不滅であることを示すために、アンクを手に持っている姿が描かれています。地上における神々の代理だと考えられていたファラオも、同様にアンクを手にしています。この象徴的な意味を最も強調したのは、おそらく第18王朝のアクエンアテン(アメンホテップ4世)です。彼はアンクが示しているのは神の生命の息(息吹)であるとしました。彼によれば神は世界の本質(essence:精髄)であり、神が全ての生きものに生命の息を常に吹き込んでいます。

テンプル騎士団が用いていたクロスパティー(末広十字)の象徴
テンプル騎士団が用いていたクロスパティー(末広十字)の象徴

「ラテン十字」と呼ばれる十字について

ラテン十字は縦長の十字で、横木が軸木の中央より上に付いています。この十字が用いられたのは古代ギリシャとローマですが、当時は宗教というよりは、むしろ装飾的な目的のためでした。そのため、さまざまな種類の十字がありました。単純な十字、二重や三重の腕木を持つ十字、五芒星や六芒星の十字、中央または周囲が円に囲まれてた十字などです。キリスト教が出現すると、いわゆる「ラテン」十字が主な象徴になり、イエスの磔刑を意味するようになりました。しかし、初期のキリスト教の象徴は十字ではなく、ギリシャ語で「イクタス」(Ichthus)として知られる魚でした。なぜ魚だったのかと言うことには、3つの説明が考えられます。1)イエスが自らのことを「人間をとる漁師」だと称したから。2)イエスの弟子の多くが漁師だったから。3)彼の誕生が魚座の時代の始まりを示すものだったから。

ロバート・フラッドのバラと十字
ロバート・フラッドの著作『最高善』に登場するバラ十字の挿し絵(彩色は現代)。ニューヨーク市にあるバラ十字文化センターの手描きの壁画。写真撮影:エドガー・ワート。参考記事:『ロバート・フラッドのバラと十字

バラ十字は、あらゆる人の二元性を象徴している

バラ十字の象徴の十字は、キリスト教的な意味も、他のいかなる宗教的な意味も持ちません。それは単に、両脚を揃えてまっすぐに立ち、両腕を水平に伸ばしている人の体を象徴しています。バラの花は、進歩の途上にある魂(soul)を表しています。バラの花が赤いのは、それが愛を示す色だからです。したがってバラ十字は、あらゆる人間の二元性を表しており、世界には物質的な要素だけでなく精神という非物質的要素が存在するということを前提にしています。私の意見では、この象徴は極めて普遍的であり、いかなる宗教の信者も無宗教の人もそれを取り入れることができます。キリスト教、ユダヤ教、イスラム教、仏教の信者や、そのいずれでもない人が、首にバラ十字のネックレスを着けており、それがその人たちの宗教信仰を妨げることがないのを私は知っています。

17世紀末の薔薇十字と現代のバラ十字
(左)17世紀末にヨーロッパから移住した薔薇十字団員によってアメリカ大陸に持ち込まれたとされる薔薇十字のレプリカ。(右)バラ十字会AMORCが採用している象徴

「アド・ローサム・ペル・クルケム、アド・クルケム・ペル・ロ-サム」

中世の錬金術師たちのバラ十字は、7枚の花弁を持つ赤いバラを特徴としていました。それぞれの花弁は、錬金術の7つの金属(金、銀、銅、鉄、錫、鉛、水銀)に対応しており、これらの金属は伝統的な七曜星(太陽、月、金星、火星、木星、土星、水星)に対応していました。しかしバラ十字の核心的な意味から言えば、そこには、人間の徳(慈悲、寛容さ、謙虚さ、寛大さ、忍耐、非暴力など)の数だけ花弁があります。私たち人間は、生まれ変わりを繰り返しながら、折々の人生でこれらの徳を目覚めさせていかなければなりません。それは、人間が必要とするだけ何度でも生まれ変わるということを示唆しており、このことが、バラ十字会AMORCの会員の多くが大切にしている次の伝統的な標語の由来になっています。「十字を経てバラへ、バラを経て十字へ」(Ad Rosam per Crucem; ad Crucem per Rosam.)。

バラ十字会フランス本部代表
セルジュ・トゥーサン

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第2号:人間にある2つの性質とバラ十字の象徴、あなたに伝えられる知識はどのように蓄積されたか
第3号:学習の4つの課程とその詳細な内容、古代の神秘学派、当会の研究陣について

執筆者プロフィール

セルジュ・トゥーサン

1956年8月3日生まれ。ノルマンディー出身。バラ十字会AMORCフランス本部代表。 多数の本と月間2万人の読者がいる人気ブログ(www.blog-rose-croix.fr)の著者であり、環境保護、動物愛護、人間尊重の精神の普及に力を尽している。

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