以下の記事は、バラ十字会日本本部の季刊雑誌『バラのこころ』の記事を、インターネット上に再掲載したものです。
※ バラ十字会は、宗教や政治のいかなる組織からも独立した歴史ある会員制の哲学団体です。

足を踏み出した神官の像- バラ十字古代エジプト博物館のコレクションから
Striding Priest – RC 1829

古代エジプトには多くの神官がいましたが、左足を踏み出して、右手を心臓に当てているこの像は、とても美しく、また珍しいものです。この姿勢は、臣下として神へ敬意を示すことを古くから表していました。当時男性は、自分が住む地域の神殿に、時間を割いて奉仕することが当然の義務とされており、身分の高い人の多くは、神官としてこの義務を果たしていました。そのため、古代エジプトには多くの神官がいました。ある神官があの世へと旅立つと、その人をしのぶ品として、本人が生前に製作を依頼した像が神殿に奉納されました。高さ23センチほどのこの小さな像も、彼を記念する品として神殿に奉納されたものです。このような像は、その神官のこの世での奉仕の記録であり、また、彼の奉仕が永遠に続くことを意味していました。
この像には、特に興味深い、通常の神官の像にはない特徴があります。この像の男性は、ハトル女神(Hathor)に仕えた神官でした。ハトルは、デンデラの貴婦人とも呼ばれ、エジプトイチジク(Sycamore)の貴婦人、あるいは黄金の女神とも呼ばれていました。ハトルは愛と外見的な美をつかさどるとされ、古代エジプトの人々に特に崇拝された女神でした。古代ギリシャの人々がエジプトにやってくる以前は、イシスよりも人気があったほどです。この像が身に着けている珍しい首飾りから、彼がハトル女神の神官だったことがわかっています。この首飾りは、メナト(menat)と呼ばれる打楽器をかたどったものです。この楽器は、デンデラのハトルの神殿で実際に演奏されていました。この像が特に珍しいのは、1つではなく2つのメナトを身に着けていることが首飾りに表わされているからです。王家の谷で発掘調査を行った考古学者のニコラス・リーブス(Nicholas Reeves)は、バラ十字古代エジプト博物館を訪れた際に、2つのメナトを身に着けている像は、彼の調査研究の旅で一度も見たことがないと語っていました。この像の神官がなぜ2つのメナトを身に着けているのかは依然として謎のままです。
この像はカリフォルニア州のサンノゼ市のバラ十字公園の古代エジプト博物館で展示されています。
玄武岩製の彫刻、エジプト末期王朝期(紀元前525-343年頃)
当会は神秘学の源流が古代エジプトにあると考え、その研究に注力しています。研究拠点のひとつ、米国カリフォルニア州サンノゼ市にあるバラ十字古代エジプト博物館は、毎年10万人以上が訪れる人気の観光スポットであり、子供向けの考古学のイベントを開催して、地元の教育にも貢献しています。

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