以下の記事は、バラ十字会日本本部の季刊雑誌『バラのこころ』の記事を、インターネット上に再掲載したものです。
※ バラ十字会は、宗教や政治のいかなる組織からも独立した歴史ある会員制の哲学団体です。

ろうそく
The Candle
ルイーズ・レイン
By Louise lane

この記事は、アマースト・カレッジの物理学教授であり、リンディスファーン協会とフェッツァー研究所の研究員でもあるアーサー・ザイエンス(Arthur Zajonc)の著書『光と視覚の科学―神話・哲学・芸術と現代科学の融合』を基にしています。
マイケル・ファラデーは、製本業の見習いから、英国の著名な科学者となり、毎年クリスマスの時期に若者たちへ講演を行い、科学の魅力を伝えていました。彼は、「自然哲学の研究を始めるにあたり、ろうそくの物理的現象を考えることが最も適した方法であり、最も容易な入口である」と語り、観察の重要性を説いています。
ろうそくの炎の仕組み
ろうそくに火を灯すと、炎の下に完璧な形のくぼみが生じます。ここに溶けたロウが溜まり、芯を伝って運ばれ、炎の燃料となります。炎の熱が芯を通じて下に伝わり、中心部でロウを溶かします。一方で、周囲の空気がろうそくの縁を冷却して形を保つことで完璧なくぼみができ、溶けたロウがこぼれないようになっています。
くぼみの中の液体は、毛管現象によって芯へと引き上げられます。これは植物が樹液を吸い上げるのと同じ仕組みです。葉や花に養分を届ける代わりに、液体となったロウは、炎の暗い内側の部分で蒸発し、空気と混ざり燃焼することで、私たちが見ている炎の形が生まれます。明るい炎の光は、燃え尽きていない炭素の小さな粒が白熱することによって生じます。芯が長すぎると、この炭素が煤(すす)になります。炭素は低温では極めて黒い物質ですが、高温になると明るく輝き、美しい光を放つ性質を持っています。そのため、炎は優しく輝く黄色い円錐形の姿を保つのです。
炎の象徴的意味
哲学者ガストン・バックラード(Gaston Bachelard)の詩的な視点では、ろうそくの炎は、ある現象の典型例です。彼は「最も卑しい物質が光を発することで、自らを浄化する」と述べ、炎の中で物質が変容し、高次のものへと昇華される過程を強調しました。これは単なる物理現象ではなく、宇宙的な現象であり、人間が洗練されるプロセスのモデルでもあります。ろうそくの炎は象徴的であり、象徴としての意味には、物理的な側面だけでなく心という側面が含まれています。粗野な物質が、光を発することで炎の中で浄化されます。詩人ポール・クローデル(Paul Claudel)は、炎が引き起こす変容に想いを巡らし、「物質は飛び立つ場所において、自らに翼を授け、神の領域へと向かう」と表現しました。この詩人にとって、炎は人間が洗練される過程を表わすモデルであり、科学者には未解決の謎を投げかけます。ろうそくの炎は蛾を惹きつけるように私たちを惹きつけるのです。
ファラデーが語らなかった重要な特徴:光の色
ろうそくに関するクリスマスの講演で、ファラデーは若い聴衆に一つの特徴についてあえて語りませんでした。その特徴とは、ろうそくの他のすべての特徴を超えるものであり、物理学に革命を起こし、物理の世界の根本的に新しい概念を生じさせたものです。それはろうそくの「光の色」です。ろうそくの炎を見てください。それは波のようにちらちらと揺れては脈動し、はっきりとした形を取って黄色の輝きを放ちます。では、プリズムを通してそれを見てください。そこには、虹のような美しい炎の形が並び、私たちに馴染み深いスペクトルが見られます。その中には繊細な色とりどりの形があり、自然についての完全に新しい発見が隠れています。
詩人ノヴァーリス(Novalis)は、「ランプの炎の中では、自然のすべての力が活発に働いている」と書いています。ファラデーもまた、ろうそくの穏やかな炎は、知識への最も確かな入り口を提供すると言っています。私たちが光の量子論へと進むためには、まず炎の持つ性質を理解しなくてはなりません。
※上記の文章は、バラ十字会が会員の方々に年に4回ご提供している神秘・科学・芸術に関する雑誌「バラのこころ」の記事のひとつです。バラ十字会の公式メールマガジン「神秘学が伝える人生を変えるヒント」の購読をこちらから登録すると、この雑誌のPDFファイルを年に4回入手することができます。
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