投稿日: 2025/04/22

以下の記事は、バラ十字会日本本部の季刊雑誌『バラのこころ』の記事を、インターネット上に再掲載したものです。

※ バラ十字会は、宗教や政治のいかなる組織からも独立した歴史ある会員制の哲学団体です。

区切り

現実の本質
The Nature of Reality

ウィリアム・ハンド
By William Hand

青空と目

最初に、引用文をいくつか紹介してから本題に入りたいと思います。

ジェームズ・ジーンズ卿(イギリスの物理学者) - 『神秘な宇宙』(”The Mysterious Universe”, 1930年):
人類の知識の動向は、現実世界が純粋に物理的なものではないという考えに向かっている。宇宙は巨大な機械というよりも、巨大な思考のように見え始めている。精神は物質世界へ偶然に侵入したものとは、もはや思われていない。そうではなく、精神のことを物質世界の創造者として迎え入れ、精神が物質世界の統治者であることを認めるべきであるという推測がされ始めている。

マックス・プランク(ドイツの物理学者、1944年):
物質のようなものは存在しない。すべての物質は、ある影響力のおかげで、それによってのみ存在している。この影響力が原子内の素粒子を振動させ、原子という最も小さな太陽系をひとまとまりにしている。この影響力の背後には、意識と知性を持つ精神が存在すると想定せざるを得ない。

ニコラ・テスラ(アメリカの電気工学者):
宇宙の秘密を知りたいなら、エネルギー、周波数、振動という観点から考えるべきである。

アルベルト・アインシュタイン(ドイツ生まれの理論物理学者):
精神がより高いレベルの知識を得るときが来ても、そこにどのように到達したかは、決して明らかにすることはできない。
時間は見かけ通りのものではなく、一方向だけに流れるものでもなく、未来は過去と同時に存在している。
今、誰かが私より少し先に、この奇妙な世界のどこかから出発したとする。「少し先」ということには何の意味もない。物理学を信奉する私たちのような人間は、過去、現在、未来の区別が、執拗に存在し続ける幻想に過ぎないことを知っている。

シュリ・オーロビンド(インドの宗教家):
意識は存在の根源をなすものである。意識はエネルギーであり、運動であり、意識とその中にあるすべてのものの活動である。小宇宙(microcosm:人間)と大宇宙(macrocosm:宇宙全体)は、意識がそれ自体を編集しているものに過ぎない。

ノーマン・フリードマン(作家) - 『科学と精神の架け橋』(Bridging Science and Spirit、1994年):
現代物理学に貢献した最も重要な発見のひとつは、アインシュタインが導いた質量とエネルギーの等価性である。この検証に見られる根源的な等価性は、物質すなわちエネルギーと、意識の等価性にあたる。すなわち、万物はある種の意識であり、ある意味では生きている。自体で活動しない物質、すなわち命を持たない物質というのは幻想である。

ヘレナ・ブラヴァツキー(ロシア出身の神秘家):
幻想はあらゆる有限のものに入リ込む要素である。存在するものはすべて、絶対的な現実ではなく相対的な現実に過ぎないからである。私たちの意識がどのような領域で活動していようとも、私たち自身も、その領域に属するものも、暫定的な、私たちだけの現実に過ぎない。

アルベルト・アインシュタインは、科学者であると同時に神秘家でした。彼がE = mc2にたどり着いたとき、彼は高度な精神状態に入っていたのでしょうか。彼はこの方程式を、エネルギー = (意識の活動)2と解釈することもできたでしょう。この場合のエネルギーは、高速で活動している意識を意味することになります。活動している意識が意志の力を用いて焦点を合わせると、現実が生じます。自分の意志の力について考えてみると、現実のこの定義が妥当であることに同意していただけることでしょう。

周囲の世界に目を向けると、何が見えるでしょうか。人、木、植物、家、動物などが見えます。あらゆるものがしっかりとしていて変わらないように見えますが、本当にそうでしょうか。量子物理学では、原子より小さなレベルでは、すべてのものが多様な周波数の波として表されるエネルギーに過ぎないとされています。誰かがやって来て、これらの波と、そして波と波の間にある複雑な結びつきのすべてを観測(解釈)し、他の人々もそれらを解釈したときに初めて、「合意された物理的現実」が姿を現します。

基本的なレベルでは、「物質」自体は量子波の組み合わせであり、この組み合わせから原子が形成され、原子が結合して分子となり、さらに分子が結合して岩石、水、鉱物などの構造を作ります。物質的な世界でのこのような過程の複雑さは途方もないものですが、物理学と親和性の法則に従って実現されています。

つまり、私たち人間も量子波(バラ十字会では「振動」として知られています)としての複雑さを備えているため、波動の状態に留まることも、解釈を経て、よりなじみ深い物理的な構造になることもできます。椅子がどのように見えるのか、バラや鳥がどのように見えるのかについては、すべての人で意見が一致することでしょう。

私たちの物理的感覚(五感)は、椅子を構成している量子波の複雑な周波数を解釈します。すべての人が同様の五感(および同様の脳)を持つため、椅子が椅子であることにすべての人が同意することができます。当然、微妙な違いはあるでしょうが、椅子、鳥、バラや他のあらゆるものを見るということに関して、ほぼすべての人の意見が一致するでしょう。このような経験をもとに、私たちは物体を分類し名前を付けて、その結果として、「そこにある」堅固な外的現実を経験しています。

イス

量子波の結びつきは物理学の法則に従います。物理学の法則は、物理的宇宙を私たちの今理解しているもの、つまり「時空」という性質がある宇宙に限定します。そのため、五感と脳だけを用いている場合、私たちには物理学の法則という枠内に限定された宇宙が見えています。時間という感覚は、物理的構造の変化に伴って存在しています。物理的現実とは、動きのシミュレーションのようなものです。

バーチャル・リアリティー(VR)を取り上げ、さらに詳しく説明しましょう。VRでは、人工的に作られた世界の中に住み、そこにある対象を見つけて、それらと相互に影響を与え合います。しかし、VRの世界は、コンピューター上で動作しているプログラミングコードによって作られた世界であり、そのコードは他の何か、すなわちプログラマーのチームによって開発されたものです。これらの新しい世界に没入して、ここが全宇宙であり存在するもののすべてだと、人は確信する可能性があります。しかし、それはコードの制約に支配されたシミュレーションにしかすぎません。強いとまどいが生じることでしょうが、コードがハッキングされると、シミュレーションもその人の認識も変わってしまいます。

ここで、「物理学の法則」と「量子波の相互作用」を「コード」に置き換えてみると、物理的現実の世界とVRの世界は概念上、極めて類似していることが理解されます。VRの世界では、見て、動いて、影響を与え合うことで、解釈が行われます。物理的な現実世界でも、見て、動いて、影響を与え合うことで解釈が行われます。これを私たちは「生きること」と呼んでいます。あなたは没入していますが、完全に没入しているわけではありません!VRのシナリオ内では、ヘッドセットを取り外すことですべてが変わります。物理的現実においても、瞑想したり眠ったりすることで、すべてが変わります。肉体の死後、あなたの現実に起こる変化は計り知れません。もはや物理的感覚が残っていないからです。

ヴァーチャルリアリティ

ある思考実験をしてみましょう。五感を一つずつ取り除いていくと、残るものは何でしょうか。五感がなければ、物理的現実を解釈することはできませんが、それでもあなたはまだ「そこ」に存在します。では、「そこ」とはどこでしょうか。この問いは、実際に解釈を実行しているものは何かという質問です。ここで私たちは、この記事の核心にたどり着きました。解釈しているのは意識に違いありません。それが意識であるとすれば、「解釈された対象は、意識の一部として存在することになります」。

しかし、意識とは何でしょうか。ここで私は一つの定義を示し、通常の「さまざまなレベルでの認識」から離れ、私たちが行き着くところを確かめていきます。エネルギー(すべての科学者は宇宙の活動がエネルギーによるものであることに同意しています)は「活動する意識」、すなわちある種の影響力であるとすれば、エネルギーは「ただ存在する」影響力であり、時間を超越した影響力であり、バラ十字会員が「宇宙」(Cosmic)と呼ぶ、無数の方法で作用する、知性を持つ影響力です。「宇宙」には、私たちが知っている宇宙の物理学の法則と、私たちが知らない、あるいはまだ気づいていない別の次元や別の宇宙の法則が組み込まれています。

ここで、アインシュタインの方程式E = mc2の美しさを理解することできます。Eは活動する意識であり、それは質量 × 光速の2乗と等価です。「したがって、物質は意識と等価です」。

現実世界は意識が存在するときにだけ存在しています。結局のところ、私たちが量子波を解釈しているので、現実世界は認識だと言えます。私たちが認識するものは、私たちが信じるものであり、私たちが信じるものは私たちが経験するものです。つまり、私たちが経験している世界は、私たちの認識に依存しています。私たちの認識が変われば、世界で経験することも変わります。認識を変えれば、現実も変わります。

何世紀も前には、人々は世界が平らであるという認識を持っていました。結局のところ、世界は平らに見えたので、平らな世界が当時の人々の現実でした。もちろん、今は世界を球体だと認識できるため、私たちの「現実」は異なります。しかし、平らな世界と球体の世界といういずれの現実も同じように、そこそこ妥当なものでしかありません。認識するすべての「現実」の背後に存在する「実在」を私たちは決して知ることができないからです。認識するものだけを私たちは知ることができ、認識するものが私たちの現実です。何世紀か後には、より高い次元やより多くの宇宙が発見され、その時に私たちの地球はまったく異なるものとして経験されるようになるかもしれません。それはまさに「新たな現実」です!

砂時計

最後に、時間について少しお話ししたいと思います。時間とは奇妙なものです。私たちは、変化や季節の規則正しい移り変わりなどによって、時間を認識しています。しかし、時間は概念であり、この概念は、時空を伴う物理的な宇宙を理解するために必要です。しかし、過去について考えているとき、過去の光景を再現しているとき、私たちはどこにいるのでしょうか。静かに座って、未来をリアルに思い浮かべているとき、私たちはどこにいるのでしょうか。大部分の方は、「現在にいる」と答えるでしょうし、あるいは「今にいる」と答える方もいることでしょう。しかし、この「今」から離れられるときはありますか? 過去や未来にいるときはありますか? 決してありません。なぜなら、過去も未来も概念であり、私たちには「今」しかないからです。

速度や変化率を測定したり、振動を理解したりするためには、時間と呼ばれる尺度が必要です。距離を「光年」という単位で測る場合、空間であっても時間という観点で計測されます。それは、物理的世界、私たちの物理的現実が、光の速度による制約を受けているからに他なりません。別の次元、別の宇宙、別の現実には異なる法則があることでしょう。ちょうど、別のVRゲームをヘッドセットに入れるようなものです!

「現実とは、何かをどのように解釈するかということ……」、すなわち経験であると、理解していただけたのではないかと思います。認識を変えれば、現実も変わります。もし、自身の認識をより望ましい世界へと変える人の数が臨界点を超えれば、世界全体がその認識に合うように変わり、より望ましい未来のための様々な夢と希望が実現することになります。このことには、考えてみる価値があります! 今、おそらく私たちは、新しいヘッドセットを必要としています。

惑星と地球

※上記の文章は、バラ十字会が会員の方々に年に4回ご提供している神秘・科学・芸術に関する雑誌「バラのこころ」の記事のひとつです。バラ十字会の公式メールマガジン「神秘学が伝える人生を変えるヒント」の購読をこちらから登録すると、この雑誌のPDFファイルを年に4回入手することができます。

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