投稿日: 2023/03/23
最終更新日: 2023/03/28

ジーザス・ボニーヤ(Jesus Bonilla)

3つのグナ

カバラ、タロット、易経など世界中の秘伝思想では、万物のあらゆる面に作用している独自の基本原理があると主張されています。古代インドの賢者たちも、ある基本原理によって構成されている世界の微妙な秩序を感じ取り、その働きに関する膨大な知識を後世に残しました。この基本原理についての知識によって、バラ十字会が大切に維持継承してきた多くの原理にも、深い意味と重要性がもたらされます。古代インドの賢者は、自身の知識と経験を3つの「グナ」(Gunas)という名前でヨーガの哲学に取り入れました。グナとは要素のことですが、元々は「ひも、糸、より糸」などを表す言葉でした。この記事のテーマとの関連で言えば、「美徳、長所、秀逸さ」の要素を意味します。『バガバッド・ギーター』(訳注)によると、グナとは人間の体や心を含むあらゆるものの中に存在する3種類の基本的な性質もしくは属性です

(訳注:バガバッド・ギーター(Bhagavad-Gītā):インドの聖典。「主神(バガバット)の歌(ギーター)」を意味する。サンスクリット語の叙事詩「マハーバーラタ」の第6巻に含まれる。18章からなる詩で、ヴィシュヌ神の化身クリシュナが王子アリュジュナに戦争と義務について説く。)

世界は、バランスを保とうとする絶え間ない奮闘において、3種類の原理、すなわちサットバ(Sattva)、ラジャス(Rayas)、タマス(Tamas)というグナを出現させます。これら3種類の原理には、いわゆる「輪廻」(Wheel of Life:生命の車輪)を回転させて、進化がゆっくりと継続的に進んでいくようにする役割があります。ひとつの大周期を終えるごとに、世界は「ブラフマー(訳注)の夜」と呼ばれる顕在化していない状態に帰ります。ここでは世界は、その幻影の世界(物質の世界)なしに存在します。その後、償いの法則すなわちカルマの法則によって、このバランスが破られます。その結果、グナの新たな活動周期が始まり、「ブラフマーの昼」と呼ばれる、物質世界が顕現している状態に戻ります。人間において、タマスは破壊を表し、ラジャスは日常生活でのつながり、愛着、習慣を表し、サットバは解脱へ向かう優れた道を表します。世界全体の中に、この3種類の力の影響から逃れられるものは何もありません。人間は啓示の光(illumination)を得ることによってだけ、これらの力を超越することができます。

(訳注:ブラフマー(Brahma):インド神話の神。最高原理であるブラフマンを人格化した最高神で創造神にあたる。ヴィシュヌ(保持神)、シヴァ(破壊神)と三位一体をなす。仏教に取り入れられ梵天と呼ばれる。)

人間におけるグナ

The Gunas in humanity

グナは人間において、次の3つの性質として現れます。サットバは純粋さと英知であり、〈光〉に向かう動きです。ラジャスは活動と絶え間ない変化であり、タマスは不活動、怠惰、空虚と邪悪さです。ラジャスとタマスは三角形の2つの頂点にあたり、第3の点であるサットバが探し求められます。ひとりひとりの人は、人格の中にこれら3つの力のいずれかひとつが主に現れています。ひとつの性質が優勢になると、他の2つは補助的な要素としてだけ働きます。サットバは幸福、ラジャスは活動、タマスは絶望に私たちをつなぎ止めます。ブラフマーだけが、これらの要素と、古代ヴェーダ語(訳注)で幻影を意味するマーヤー(Maya)を超越しています。

(訳注:ヴェーダ語(Vedic):バラモン教の聖典ヴェーダに用いられた言語。これをもとにサンスクリット語が成立した。)

神秘学におけるグナ

The Gunas in Mysticism

サットバというグナに対応する探求者とは、純粋な状態で生きる人のことです。彼らは「弟子としての探究の道」において瞑想することに情熱を注ぎますが、それはまるで火薬に火が点けられたときのようです。ラジャスの探求者は、乾いた木材のようなものです。彼らの心の中の火を燃え上がらせるためには、入門儀式を重視する組織、修業、伝統知識による導きを必要とします。タマスの探求者とは、日常世界を超越するものに魅力を感じるような内的な進歩の段階にまだ達していない人です。火をつけても煙しか出ない若木のように、タマスの探求者には、熱を発し光を出すための乾燥の時間が必要です。これらの3つの状態は、その程度に違いがあるとしても、あらゆる人の中に共存しています。しかし、1つの状態が必ず他の2つよりも優勢です。

サットバというグナに対応する教えとは、バラ十字会AMORCや伝統マルティニスト会のような、入門儀式を重視する組織が伝えている知識だと考えられます。ラジャスの教えは、真摯で敬虔な宗教的意味合いを帯びてはいますが、真の深遠さが欠けており、秘伝的な知識が開示されることはありません。タマスの教えは、迷信、虚偽、悪習、無知、さらに、光が存在しないことに起因する人間の堕落を引き起こすあらゆる要素によって判別することができます。

食事におけるグナ

The Gunas in the Diet

サットバというグナに対応する食事は、果物、野菜、豆類、穀類、乳製品、種子、ナッツ、未精製の油などからなります。ゆっくりと食べて、よく噛むことがサットバの食事法です。ラジャスの食事は、コーヒー、香辛料、卵、チョコレート、清涼飲料水、塩などの刺激物で構成されています。早食いは、ラジャスの食事法です。タマスの食事は、心と体に対してとても有害です。低級な欲求を刺激するものであり、腐敗した食品や汚染された食品、アルコール、薬物、タバコを含みます。タマスの食事をする人は、衝動に支配されながら食事を行い、食べ過ぎます。

3つのグナとバガバッド・ギーター

The Three Gunas and the Bhagavad Gita

『バガバッド・ギーター』では、3つのグナとは世界の3種類の力であり、光と火と闇であると述べられています。これらの力は、有限の肉体の中に封じ込められていても消え失せることのない、無限なる精神の自由にあたります。サットバは純粋な性質を持ち、物質的な幸せを経て清らかな人生へと人を導く聡明さであり、物質界で幸せを得るための知識と哲学にあたります。ラジャスは情熱的な性質を持ち、人の中に熱望を作り、さまざまな目的の追求と執着が生じます。人を行動に駆り立て、そこから結果が生じます。タマスは無知から生じ、ソウル(soul:魂)を弱らせて、悪と混乱に沈めます。タマスによって人には、無関心、意志力の不足、自発性の欠如が引き起こされます。

クリシュナは、ヨーガというシステムを用いて、世界のこれら3つの力をコントロールして超越する方法を教えたとされます。概念にとらわれることがなく〈光〉を探し求めている人たちは、無知から解放されます。常に激変している世界を目の当たりにしても静かな心を保ち続け、完全な観察者としての立場に留まり、しかも独自の思考をしている人の中では、世界のこの3つの力が適切に活動します。3つのグナの力をコントロールしている人たちは、自身の意識を内なる平安で満たし、喜びにも悲しみにも動じなくなり、愉快な出来事と不愉快な出来事のいずれに直面しても、心の静けさを保ち続けます。

彼らは、誰かから称賛されても中傷されても影響を受けず、その精神には確固とした目的があり、常に心が穏やかであり、目標を見据えています。このような人たちは、栄誉も不幸も冷静に受け入れ、敵対者に対しても、友人に与えるのと同じ愛を与えます。彼らは3つのグナの影響を超越しています。このような人たちは啓示の光を得ている(Illumined)のであり、絶え間ない変化、心配事、さまざまな意図にあふれているこの世の人生は、彼らにとって、もはや苦痛に満ちたものではありません。これらの人はグナを超越して、この世での、完全かつ最終的な人生の支配に到達します。

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