こんにちは、バラ十字会の本庄です。
※ バラ十字会は、宗教や政治のいかなる組織からも独立した歴史ある会員制の哲学団体です。
ヒューマニズムとスピリチュアリティ
今回は、ヒューマニズム(humanism)とスピリチュアリティ(spirituality)の2つを話題として取り上げます。
このいずれも、その意味についてはすでにご説明したことがありますので、手短にご紹介します。
ヒューマニズムとは、すべての人は尊重されるべきだと考え、人類全体が幸せであることを願う精神のことです。詳しくは下記の記事をご覧ください。
スピリチュアリティとは、意外だと感じる方もいらっしゃることと思いますが、人の心の深い部分が感じる、美しさ、厳かさ、素朴さのことです。こちらも、下記の参考記事に詳しく解説されています。
当会のフランス代表が、「人類と地球を愛するあなたへのお手紙」という文章を、自身の人気のブログに公開しており、その内容はヒューマニズムとスピリチュアリティの2つに深く関わっています。このお手紙の日本語訳をご紹介させていただきます。
人類と地球を愛するあなたへのお手紙(前半)
Open letter to the Citizens of the World
「人間には、自身の本質から発せられる命令によって、そして、生き延びようとする生物としての本能によって、希望を心に抱き、ものごとを楽観的に考える力が与えられています。」
『バラ十字友愛組織の姿勢』(Positio Fraternitatis Rosae Crucis, 2001)より
私たちは、この公開のお手紙をあなたに宛てて書いています。そしてこの手紙が、あなたの心へと届くことを深く望んでいます。そうすることがみなさんの助けになり、今必要なことだと考えているからです。もちろん私たちは、みなさんがこのお手紙の内容に全面的に同意されるわけではないだろうということ、そして異議や反対のご意見や、批判をもいただくかもしれないということを十分に承知しています。私たちは思想の自由に深い敬意を払っています。ですから、みなさんそれぞれに、ご自身の信じるところに従って、このお手紙の内容を判断していただきたいと思っています。しかし、このお手紙をお読みいただくことは、どなたにとっても、少なくとも、さまざまなことを考えるための材料として、お役に立つと考えています。
「人類は集団的な狂気に捉えられている」
まず、現在の世界の状況を、私たちバラ十字会がどのように見ているかについて申し上げたく思います。人類は、社会全体に漂う狂気に悩まされていて、自分自身が進むべき方向性を見失ってしまっていると私たちは感じています。あまりにも愚かで低俗で恥知らずなテレビ番組が、視聴率の最高記録を破り、のぞき見主義が頂点に達しつつあります。最低限の努力で、できるだけ早く金持ちに、そして有名になることが人生の目的であると私たちは信じ込まされてしまっています。暴力がテレビや映画の中で称賛され、日常生活に蔓延しているように思えます。マスメディアはまるで、人間の性質のうちの暗黒面だけを強調するように強いられているかのようです。持って生まれた素質が、たまたま流行に合っていたり、見せかけのエリートたちを楽しませることができた人々が、スターとかアーティストと呼ばれています。高齢者への差別は深刻な影響をもたらしています。ユーモアが、あざけりと混同されています。また、作り上げられた美しい体や高い運動能力を持つ人だけが、盲目的な個人崇拝の対象となっています。無礼な振る舞いが称賛される一方で、品のよい振る舞いは軽蔑されています。厚かましさやでしゃばりや横柄な態度が、まるで美徳であるかのように扱われています。しかも、今申し上げたようなことはほんの一部でしかありません。
現在の世界的危機の原因
世界が、ここ数年来直面してきた財政的、経済的、社会的な危機は、今申し上げたことのすべてと無関係ではありません。人々はこれらの危機を、ゆがんだ金融や銀行のシステムだけのせいにしていますが、それは誤りです。これらの危機は、社会のさまざまな面が、全般的に腐敗していることによっても引き起こされています。そして、この現象はいわゆる先進国で顕著に見られます。さまざまな種類の宣伝や評判は、間違っていることのほうが多いのですが、そのような情報の渦に放り込まれ、どんな犠牲を払ってでも浪費するのが良いことであるかのように、人々は仕向けられています。「所有していること」が人生の理想であり、「ありのままであること」は不利益であると思い込まされているのです。このように、ヴァーチャルなお金や現実のお金が基礎となり、抑制の利かない大量消費社会が成立してしまいました。お金とは、全ての人が物質的な面でごく普通の生活をするために、必要なものを得るための交換の手段にすぎないはずなのですが、お金そのものが目的となってしまっています。お金を手に入れたり、使ったりするときに必要な道徳観は、今では無視されてしまっています。これほどまでに、お金が堕落や腐敗や社会的な不平等といったものの原因になることは、以前はおそらくありませんでした。熱狂的な貪欲と強欲に支配された王国には、お金を巧妙に操作する人たちが無数にいて、人々の新しい崇拝対象としての役を演じています。
みなさんの中には、このような私の主張は深刻すぎるし、あまりにも否定的であり、度を超えた悲観論者が今日の世界に対する見解を述べていると考える方がいらっしゃるかもしれません。あるいは、厳格な道徳的秩序を求めている保守的な夢想家の言葉にすぎないと思われる方もいらっしゃるでしょう。しかし、バラ十字会の哲学によって私たちの多くは、楽観主義、さらにはユートピア的理想主義が好ましいものだと考えています。道徳とは、自分自身や他の人や環境に対する敬意にほかならないとバラ十字会は考えているので、道徳に対する私たちの取り組みは、知的で分別のあるすべての人々が共有できるものだと私たちは考えています。他人に道徳を説くことや道徳を振りかざすことは、真の道徳とは全く関係がありません。そして私たちは、人類の今の状況についてのバラ十字会の意見は、まさに現実に即したものであると考えています。ですから、部分的にではあるかもしれませんが、みなさんが私たちの意見に共感していただけることを期待して、話を先に進めたいと思います。
今問われるべきことは、なぜ世界がこのような状況になったのかということです。バラ十字会の見解では、行き過ぎた物質主義と個人主義の中に、世界が徐々に沈み込みつつあることが原因です。現代では、ほとんどの人々が、あたかも人生の目的は、生活のための物資をできるだけ多く獲得することや、強烈な感覚的な喜びを何度も楽しむことであるかのように振る舞っています。そうすることで、人は人間のもっとも自己中心的な面、たとえば、所有したい、支配したい、人によく見られたいといったさまざまな欲望をますます助長させています。その結果、人々は以前よりも個人主義的な傾向を強め、その必然的な結果として、他人をもっと排除するようになります。さらに、ただ神を信じることや、神について話すことは、今の世の中ではふさわしくないこととされており、ほとんど時代に取り残された考え方とされています。「誰もが自分のために行動する」という風潮は今や文化となり、無神論がライフスタイルになってしまっています。私たちは、このような状況は人類全体の幸せに悪影響を及ぼすと考えており、とても残念に思っています。
もしこのような見方に共感していただけるなら、この悪循環を終わらせるためには、そして、今よりも良い日々が、ふたたび訪れるという望みを人類が抱くためには、たったひとつの解決法しかないことがご理解いただけることと思います。その解決法とは、ヒューマニズム(humanism:すべての人間を尊重すること)とスピリチュアリティ(spirituality:精神性)の大切さを今まで以上に、多くの人たちに気づいていただくことです。そのためにバラ十字会は、会の哲学と講演や講義を通して力を尽くしています。人類が現在の状況から抜け出し、「文明」という言葉がふさわしい状態にまで進歩するために、人類はヒューマニズムとスピリチュアリティという二本の柱の上に立つべきであると、私たちバラ十字会は考えています。もしそうしなければ、私たちが直面している世界的な危機は増大し、さらに多くの難題や試練や苦悩を生み出すことになります。バラ十字会は2001年に、宣言書『バラ十字友愛組織の姿勢』(付記)を世界中で発表しましたが、この宣言書の目的もヒューマニズムとスピリチュアリティの重要性を訴えることでした。
付記:当会の宣言書(manifesto:マニフェスト)『バラ十字友愛組織の姿勢』は、次のボタンをクリックして読むことができます。
「ヒューマニズムの大切さを今まで以上に、多くの人たち気づいていただきたい」
繰り返しますが、「ヒューマニズムの大切さを今まで以上に、多くの人たちに気づいていただきたい」と私たちは申し上げました。私たちが心を配らなければならない最大の焦点は、仲間である人間についてであり、そして、経済や政治や科学や技術といった様々な人間の活動のすべての分野は、すべての人の役に立つためにあるのだということを、ふたたび確認することが緊急の課題となっているからです。人類は進歩を続け、21世紀に至ったというのに、いまだに数百万人もの男性や女性や子供たちが餓死し、飲料水を得る手段を持たず、当たり前の家もなく、極貧の生活を強いられ、医療を受けることもかなわず、屈辱的な条件で働き、読み書きもできないでいるのです。こんなことを誰が認められるというのでしょうか。「生きる」ということと「ただ生き延びる」ということを一緒にしてはいけません。人類全体として見れば、私たちにはすべての人々を幸せにする知識と技術的手段があるのですから、これは、あまりにも悲しく痛ましいことです。このことは意志の問題にすぎないのです。
時代とともに、私たち人間は、自分たち自身が作り出した世界を、人間とは乖離した、よそよそしいものにしてしまいました。この現代社会で私たちは、情報技術と機械に過度に頼るようになってしまっています。以前は技術的に実用化されておらず、必要とされてもいなかった分野で、技術や機械が、ついには私たち人間の代わりをするようになりました。その結果、社会からは人間性が失われ、ただ生き延びることだけが目的になりました。そのような社会においては、希望が絶望へと変わってしまったのです。インターネットの時代となり、人々はモニターの画面を通して交流していますが、実際にお互いに話しかけることはありません。その結果、ほとんどの人々はほんとうには幸せでなく、多くの人々がストレスを感じ、不安になり、抑圧されて、ある意味で不幸になっています。社会の進歩のレベルは、技術的な成果や科学的な知識によって評価されるのではなく、その社会のすべての人々が実際に幸せなのかどうかと、ともに生きていくことで得られる喜びによって評価されるべきです。
現在では国際化が進み、どんなに大きく強い国であっても、他の国々-それがどんなに小さく弱い国であっても-他国の発展を考慮することなしに繁栄することはできません。その意味で、世界は一つの国家のようになっています。これはすべての人が喜ぶべき事実です。そしてすべての人の運命は互いに結びついています。「世界市民」(Citizen of the World)という概念は、もはや単なる机上の空論ではなく、すでにひとつの事実であり、そこでは、すべての人の幸せと、ひとりひとりの幸せを同時に考慮に入れなければならないのです。そこで、もしみなさんがまだそうしていないのであれば、個人主義を超え国家主義を超えて、『人間の義務に関するバラ十字宣言書』の第10項をぜひご自身で実行していただきたいのです。そこにはこう書かれています。「人類全体のことを自分の家族であると考え、いかなる状況にあろうとも、そしてどこにいようとも、世界市民のひとりとして振る舞うことが、ひとりひとりの個人の義務である。そしてこのことは、ヒューマニズム(すべての人間を尊重すること)を、自分の行動と哲学の根本原則にすることを意味している。」
しかしながら、ヒューマニストになるということは、すべての人の幸せのために活動するということだけを意味しているのではありません。それはまた、私たちが生活している環境、私たちの生命そのものが依存している環境にも関心を払うことを意味しています。地球温暖化、広範囲な汚染、過度の森林伐採、増大する生態系の不均衡といった様々な弊害が地球を脅かしています。ご存じの通り、このようなことに終止符を打たない限り、私たちの地球は、暮らすことのできない場所になるかもしれません。このことについても人類は、変化をもたらすのに必要なだけの知識と技術を持っています。しかし、個人として、あるいは集団として、それをなし遂げようとする意志がないのです。私たちの子孫の立場に立って言えば、この状況に気づいていなかったとか、それに向き合うだけの心の準備をしていなかったとかの言い訳は、どれひとつとして正当なものではありません。地球は創造物の中でも最高の傑作であるとほとんどの人が考えているのですから、私たちの矛盾は、なおさら非難されるべきものです。地球が守ってくれている多種多様な自然の王国に見ることのできる美しさと驚異を目の当たりにすると、地球は神聖なものであると無神論者でさえも考えます。このような多くの人の共通認識を考えに入れるならば、地球の保護を、ヒューマニストのための世界共通の行動の動機とすることに、何を躊躇する必要があるのでしょうか。
『人類と地球を愛するあなたへのお手紙』(後半)
前半はこちらから
「精神性の大切さを今まで以上に、多くの人たち気づいていただきたい」
「精神性の大切さを今まで以上に、多くの人々に気づいていただきたい」と申し上げました。その意味するところは、神秘学的な意味での〈絶対的なもの〉について熟知していただくと言うことであり、それは、すべての人の利益になります。神秘学的な意味での〈絶対的なもの〉と申し上げたのは、ほとんどの方が、宗教が説明する〈絶対的なもの〉、すなわち神の概念に同意しないか、あるいは同意できなくなっているということに私たちは十分に気づいているからです。ちなみに、ここで申し上げておきたいのですが、バラ十字会は、様々な宗教に対して最大限の敬意を払っています。しかし、何千年もの間、様々な宗教が、神は天に座し、死すべき時などを含む私たちの宿命を決定している〈超越者〉であると説いてきました。そのような考え方に基づいて、様々な宗教は、信者たちに神の意志に服すことを勧め、その宗教の教義に沿った形で自分たちの救済を求めるように勧めてきました。しかし、歴史が示しているように、その様な信仰の取り組みでは、人間は、より善良になることも、より幸せになることもありません。多くの信者が宗教から離れるどころか、無神論者にまでなってしまうのはこのことが主な理由です。しかし、無神論者になってしまった人々の心は満たされているのでしょうか。
同意するしないにかかわらず、すべての人間には魂があり、高い精神性を求め必要とする性質があります。そのため、私たちは無神論や唯物論の中に幸せを見いだすことができないのです。したがって、今日では多くの人々が〈絶対的なもの〉を拒絶していますが、それは意味のないことであり、やがては行き詰まることになります。今私たちに必要なことは、自分自身が持っている〈絶対的なもの〉の概念についてもう一度よく考え、それに従って生きることです。私たちバラ十字会は、〈絶対的なもの〉とは、万物を生み出した知性、意識、エネルギー、力であると考えています。〈絶対的なもの〉は、全ての人に平等であり永遠に変わることのない完全な法則に従って〈宇宙〉や自然の中に、そして私たち人間そのものの中に、先ほど述べた知性や意識、エネルギーや力として現れています。私たちの誰もが探し求めている幸せは、このような法則を学習し、敬うことの中にこそ見いだすことができるのです。ですから「宗教性」から「精神性」へと私たちが転換すべき時が来たのです。「神への信仰」から、精神的で、普遍的で、自然に基づく法則、つまり「神聖な法則を知ること」へと私たちが転換する時がやってきたのです。
このことを、さらに明確にご説明したく思います。私たちは国家が、宗教によって統治されるシステムに変わるべきだと言っているわけではありませんし、様々な団体が、社会での生き残りのために宗教的な取り組みを採用すべきだと述べているわけでもありません。日常の生活では、政治と宗教が互いに分離していることが必要です。私たちがお伝えしたいことは単に次のことです。つまり、自分自身の物質的な状況をより良いものにしていくことが人間にとって道理に適った目的であるとしても、私たちが幸せになるためには、それだけでは十分ではないということです。遅かれ早かれすべての人は、人生の意味を探求することを始めたいと心から思うようになります。その思いに答えるために、バラ十字会はこの地球上に存在しています。神秘学的な見方で申し上げれば、私たちが今ここに存在している本当の目的は、自身にある神聖な性質をよく知って、自分自身の判断や振る舞いを通して、自身の聖なる性質を日常生活に表現することができるようになることです。つまり、ソクラテスが当時の人に教えたように、私たちは、自身を完全にするために、そして私たちに命を与えている、自身の魂が所有する徳を目覚めさせるためにこの地球上にいるのです。このことがまさしく私たちの存在理由であり、それは、私たち人間のすべてに定められていることなのです。
私たちは確かに、〈絶対的なもの〉の存在を証明することはできません。しかし、私たちは宇宙の一部であり、その宇宙について瞑想したり研究したりすることができます。すべての事柄には原因がありますので、宇宙も明らかに、ある原因から生じたものだということができます。そして宇宙は様々な法則に支配されていて、その法則のことを科学者は、驚異的で素晴らしいと考えています。ですから、この宇宙の根本原因は、並外れて素晴らしい、絶対的知性であるという結論を出すことができます。ですから、この知性のことを〈絶対的なもの〉と呼び、この〈絶対的なもの〉は、万物を生み出した普遍的で非人格的な知性であると考えることができるのではないでしょうか。科学や芸術や文学、建築や工業技術の分野などにおける、とても美しい作品や極めて役に立つ実用品を思い浮かべ、そして、私たちが感じ、表現することのできる愛や友情、思いやりや畏敬の念といった素晴らしい感情に思いを巡らせるならば、私たちの中に神聖なもの、つまり魂が存在することを、疑うことができるでしょうか。
この手紙の冒頭でも述べましたように、バラ十字会はすべての人々の信仰に深い敬意を払っています。同様に、宗教に関心を持っていない人がいるのと同じように、上で述べたような精神性に対してもそれほど関心を持っていない方も、みなさんの中にはいらっしゃるということも理解しています。一方で、この世界にヒューマニズムをさらに広めて確立する必要があるということは、ほとんど全ての人が明らかであると思われるのではないでしょうか。しかし、このことのためには、たったひとつの手段しかありません。それは、すべての人が、思考において、言葉において、そして行動において、ヒューマニストになるためのあらゆる努力をすることです。それは共通の利益のために、できるだけ役立とうとすることでもあります。ですから、人間の尊厳を構成していて、バラ十字会が人間のもっとも神聖な部分であると考えている徳を、目覚めさせ、行動として表わすことが、このことから考えても必要であると思われます。
世界をより良い場所にする
いわゆる原罪という罪があるという推測のもとに、それをあがなう必要があると述べる人もいますが、私たちは苦しむために、この地球で生きているのではありません。そうではなく、幸せを経験によって知り、今よりも高い意識の状態へと徐々に進歩するために生きているのです。そして、もしもこの世界がとても悪い状態にあるならば、それは〈絶対的なもの〉のせいではありません。もちろん悪魔など存在しませんが、悪魔のせいでもありません。それは人間の弱さが原因なのです。ほとんどの人が、いまだにエゴという最もネガティブな面に支配されて行動をしているからです。利己主義や嫉妬や不寛容や暴力などに、身をゆだねているからです。ですからこの世界を今より良い世界にするためには、現在の自分自身を乗り越え、寛大さ、無私の心、寛容や非暴力などを行動の中に表現する方法を学んでいかなくてはなりません。どのようにしてこれをなし遂げたら良いのでしょうか。それは、完璧な人間になるまで、私たちの欠点のひとつひとつを反対の性質に変えるように努力することによってです。このことはまさに、私たちバラ十字会がいつも追究している精神の錬金術なのです。
信仰や政治に対する考え方や、哲学的な信念や、その他のどのような主義や信条にもかかわらず、私たちはだれでも次のことには同意できるのではないかと思います。私たちは、この地上での人生を、ただ通り過ぎていくだけなのです。「最も美しい墓碑は、生きているものの心である」とある作家が述べています。それではあなたは、ともに生きた人々やあなたを知っていた人々のために、どのような思い出を残したいと思われるでしょうか。どのような遺産を今の子供たちと次の世代の子供たちへと渡してあげたいのでしょうか。この世界を離れるべき最後の時が来たら、どんな写真を持って旅立ちたいと思われるでしょうか。ご理解されることと思いますが、魂とは言わないまでも、あなたの良心に向けられたこの質問へのあなたの答えは、あなた自身が人生に与えている意味を明らかにしてくれます。またその答えによって、あなた自身の心の最も深い部分の性質や、あなたが自身や他の人に対して抱いている理解を知ることができます。
私たちという存在は、実際には、「死」と呼ばれているものによって終わりになるのではないと、バラ十字会では考えています。「死」とは、完全に非物質的な世界へと移行することに過ぎないと私たちは考えているのです。さらに、すべての人は進化し続けていて、自身の探求に素晴らしい成果をもたらすために、地上に何度も生まれ変わるとバラ十字会に属している人の多くは確信しています。私たちが自分の人生に与える意味によって、死やあの世や来世に私たちが与える意味が決まります。いずれにせよ、来るべき世界が作られるのは、今であり、この場所であるということには同意していただけることでしょう。この世界が、あなたが心から望んでいるようであってほしいと、もし願うならば、そして、この世界に平和と調和があり、すべての人々がひとつの家族となってほしいと、もしあなたが望むのであれば、新しい文明(New Civilization)の先駆けとなる、新しい人間愛(New Humanity)が生まれ出るように、ともに努力をしましょう。
以上が私たちからのメッセージです。そして、このことについて、みなさんに一緒に考えていただきたいと私たちは思っています。今ここでお伝えしていることは、決して目新しいものではありません。しかしながら、みなさんの中には、この言葉であなた自身の考えがいっそう強くなったという方もいらっしゃると思います。また、そうではない方にとっても、疑問を抱いたり、思いを巡らすきっかけになれば良いと思っています。繰り返し述べますが、この手紙の見解は、決して新しいものではありません。私たちの直接の先輩である17世紀のバラ十字会員は、これと同じ見解をすでに表明していました。その一例である次の言葉は、今日のユネスコ(UNESCO:国際連合教育科学文化機関)の理念の創設者であると考えられているコメニウス(Comenius)のものです。
「老いも若きも、富める者も貧しい者も、貴族も平民も、男性も女性も、すべての人々が一緒に、あるいはそれぞれに、十分な教育を受け、洗練された人となれることを我々は望んでいる。ある特定のことがらだけでなく、自分自身の本質を総合的に理解することができるようなすべての事柄について、あらゆる人が十分に教育や訓練を受けてほしいと我々は考えている。〈真実〉を学び、知り、見せかけにごまかされない。〈善〉を愛し、悪に誘惑されず、自身がなすべきことを行ない、避けるべきことは行なわない。あらゆることがらについて、あらゆる人と分別を持って語り合う。そして最後に、何ごとに対しても、人間と神に対しても、軽率さを避けて常に慎重に取り組み、そして何よりも、私たちの人生の目標である幸せへの道から決して逸れない。あらゆる人に、そのようにあってほしいと我々は考えている。」
もし、あなたのご友人が、この手紙に興味を持たれるかもしれないとお思いでしたら、どうぞご自由にコピーを渡してあげてください。反対に、もし私たちの見解や考え方に共感できないとお思いならばどうぞ忘れてしまってください。しかし、私たちがとても大切だと考えている徳のうちのひとつである寛容を、私たちに対して示してください。
みなさんが、可能な限り幸せでありますように、私たちの心からの友愛の思いをあなたにお伝えします。深遠なる心の平安があなたとともにありますように。敬具
バラ十字会フランス語圏本部主宰
セルジュ・トゥーサン(Serge Toussaint)
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第1号:内面の進歩を加速する神秘学とは、人生の神秘を実感する5つの実習
第2号:人間にある2つの性質とバラ十字の象徴、あなたに伝えられる知識はどのように蓄積されたか
第3号:学習の4つの課程とその詳細な内容、古代の神秘学派、当会の研究陣について
執筆者プロフィール
セルジュ・トゥーサン
1956年8月3日生まれ。ノルマンディー出身。バラ十字会AMORCフランス本部代表。 多数の本と月間2万人の読者がいる人気ブログ(www.blog-rose-croix.fr)の著者であり、環境保護、動物愛護、人間尊重の精神の普及に力を尽している。
本庄 敦
1960年6月17日生まれ。バラ十字会AMORC日本本部代表。東京大学教養学部卒。
スピリチュアリティに関する科学的な情報の発信と神秘学の普及に尽力している。
詳しいプロフィールはこちら↓
https://www.amorc.jp/profile/