投稿日: 2026/03/17

以下の記事は、バラ十字会日本本部の季刊雑誌『バラのこころ』の記事を、インターネット上に再掲載したものです。

※ バラ十字会は、宗教や政治のいかなる組織からも独立した歴史ある会員制の哲学団体です。

区切り

恐怖心を転換する
Transform Your Fear

ジョージ・F・バレッツァ
By George F. Buletza

思考を表現したイラスト

私たちのだれもが、人生で恐怖を経験します。そして恐怖の助けによって私たちは、痛みや体を傷つけてしまうような状況を避けることができます。しかし、恐怖によって、古い体験の記憶から逃れられなくなり、人格の望ましくない特徴が固定してしまうこともあります。つまり、創造的で、思いやりがあり、繊細で、正直であるといった私たち本来の性質が表面に表れないようになってしまうことがあります。健全な人は、心の中にある創造性や思いやり、繊細さや正直さを自由に表現することができます。また、バラ十字会で学んでいる生徒には、恐怖や迷信、無知など、本来の自分を自由に表現する妨げを克服する手段が伝えられ、その機会も提供されます。

恐怖がどのようにして健康や幸せを損なうのか理解するために、バラ十字会員は自律神経系の働きについて学びます。自律神経系には、体の活動を活発にする交感神経と、体をリラックスさせる副交感神経があり、この2つによって、バランスと調和、健康がもたらされます。人間がまだジャングルの中で暮らしていた頃のことを考えてみましょう。たとえば、歩いていてトラと遭遇したときには、交感神経の体の活動を活発にする働きが、戦ったり逃げたりするためになくてはならないものでした。トラとの戦いに勝ったとき、あるいは無事に逃げ延びることができたときには、安堵して、その幸運に感謝したことでしょう。しかし、今日では、本来感じるべき安心感からの利益、副交感神経のリラックス効果を得ることができず、恐怖感と交感神経の働きによる活性化が慢性的に続くことに苦しむ傾向があります。その結果として、不均衡や不調和や病気が生じることが多いのです。

立ちはだかるトラや向かってくる自動車、怒り狂った群衆、他にもさまざまな危険を秘めた状況に対して恐怖感を持つことは本能の働きであり、短時間であれば、有益であり、むしろ歓迎すべきことです。問題となるのは、恐怖感が継続する場合です。用心深さという意味で恐怖が継続しているのではなく、不安や、恐怖症や、習性となってしまった他の行動パターンによって恐怖が継続し、その人の内部の真の性質が外に表されることが制限されてしまいます。このような有害な恐怖は、ほとんどの場合に抑圧(訳注)されています。なぜなら人は、感情的な苦痛に直面することを避けようとするからです。

(訳注:抑圧:自我を脅かす願望や衝動や感情を、意識から締め出して意識下に押し留める働きを表す心理学の用語。)

しかし、このような抑圧された恐怖や感情は、自覚の無いままに外の世界での態度や行動に反映されます。その場合は、自分自身でコントロールすることができません。「なんで、あんなことをしたんだろう」。「なんで、あんなことを言ったんだろう」。「ああ、そんなつもりはなかったんだ」。理不尽さを感じたり、恐怖を抑えつけながら、あるいは、憤りや後悔に向き合いながら、私たちの多くが、このように嘆いたことがあるでしょう。

このような感情に直面したとき、それを解放することができれば、私たちは以前にも増して強い自制心を得ることができます。そして、勇気と誠実さを示すことができます。このような心の変容を目撃することは、特別な恩恵であり名誉なことです。自分の人生に責任を負うことができるようになると、私たちの顔は誇りに輝き、内面の奥深くから周囲に影響を及ぼすようになります。そして、周囲の人々にエネルギーを与え、元気づけることができます。以前よりものびのびとして、喜びに満ち、自由を感じるのですが、一方で、人の心に痛みや傷を与えたり、他の人のふるまいに干渉したりすることがなくなります。仕返しを恐れるだけでは、他の人を傷つけることを完全には止めることができません。むしろ、他の人たちと自分が、ほんとうは一体であることを理解することによって、私たちは他の人を傷つけることがなくなります。H・スペンサー・ルイス博士は、このような同調を「一体化」(at-one-ment)と呼んでいますが、それによって、私たちは愛という贈り物を経験することができます。ですから愛とは、与えたり受け取ったりするものであるというよりは、より大きな全体を感じることであり、他の人たちとの一体性を感じる体験のことです。私たちの愛のあり方は常に成長しているので、愛が心の中で生じて大きくなっていくように感じられます。しかし、愛はすでに存在していたのであり、常に完全なものです。愛のこの完全性の自覚こそが、心の中で成長していくものです。

恐怖が全くない状況の中で生きることはできませんが、愛と誠実さに同調することで、私たちは恐怖心に打ち勝つことができます。愛や、お互いへの尊敬、誠実さや正直さがあふれる世界で生きることは、心に深く根付いた恐怖や不安や迷信や、私たちが生み出す偽りの現実という心のレンズを通して見た世界とは全く異なります。しかし、愛と尊敬に満ちた世界に心を開くことは、傷つきやすくなることであり、悲しみや心の傷に対して無防備になることです。きっと、それはとても困難な道であると、あなたも考えてしまうかもしれません。子羊はライオンの隣でまどろむことはしないかもしれません。常に勝利を収めるのは、勇気を備え一貫した指針に従って行動する正直な人ではなく、押しが強く口がうまい人であるように思えます。

しかし、現実には様々な視点があります。愛と尊敬に満ちた世界に心を開くことは、傷つきやすくなることであり、無防備になることであるという視点は、もちろん、今日の世界で多くの人が採用している視点のひとつです。この視点は、物事を否定的に見るやり方ではありますが、この視点に従って生きることを選んだ人も、この視点とは反対の方法で現実を捉えることを選んだ人と同じように、人生の中で学び、成長し、進歩しています。つまり、様々な視点を持って生きているいずれの人も、この世界の中で、うまく暮らしています。一方、以前のやり方で生活していたときよりも、現在のほうが成功した人生を送っているバラ十字会員がいることも事実です。

実際のところ、自身の人生を押さえつけてしまうような無意識の恐怖があまり多くなければ、他の人に不当な仕打ちをすることなく積極的な行動をすることができ、他の人を抑えつけることのない指導者になることもできます。また、他の人に依存したり、他の人を避けることなく、鋭敏な感受性を保つことができます。そして、過度に親切だったり“感じのよい人”になったりすることなく、思いやりや愛を示すことができます。心理的な壁や感情的な抵抗を進んで取り去ることによって、私たちは他の人に心を開き、良い意味で無防備になり、正直になることができます。そのようにすると、「人から嫌われるかもしれない」、「誰かに傷つけられるかもしれない」、「過ちを犯すのは悪いことである」、「何かを行えば傷つくかもしれない」といった耐えがたいほどの恐怖から開放されます。

瓶の中の男性

他の人を信頼することを学ぶために、私たちは宇宙に助けを求めることができます。現代という状況では、おそらく私たちは、過度に組織に縛られ、管理され、何らかの脅威から身を守るような生活をしているかもしれません。また、自分が理想的だと考える方向に実生活が進んでいかないと、私たちは周囲の状況や他人を非難する傾向があります。

しかし、非難は時間の浪費です。どれほどたくさん他の人の欠点を見つけても、それを変えることはできません。非難をしても、自分が進歩することはありません。

非難とは、自分の不幸や不満の原因を外に探すために、自分自身の状態から目を反らしていることにすぎません。非難することによって他の人に罪の意識を負わせることができることもあります。しかし、自分を不幸にしている身の回りの何ごとも変えることはできません。私たちは「なぜ私なのだろう」、「なぜ、こんなことが私の身に起きているのか」、「こんな目に合うなんて、私が何をしたというのだろう」と尋ねることもできるでしょう。そうすると、穏やかな小さな声で、私たちの内側から答えが返ってきます。「信頼することを学ばなければならない」。そして、私たちは信頼について学ぶことになります。私たちが支配を求め、何かから逃れようとし、他人や状況を非難して抵抗している場合、信頼を学ぶことは苦痛に満ちています。しかし、抵抗を止め、少しだけ先に進もうとすれば、心が高揚感や喜び、感謝、平安であふれることに気づきます。

恐怖心があっても、その恐怖と向き合うたびに、恐怖の中身について知り、それを取り除いていくことで、私たちを支配する恐怖や、私たちが担っている〈光〉に値しない行ないの原因となっている恐怖が緩和されていきます恐怖は必ずしも「世界が従うべき習慣」ではありません。恐怖なしに謙虚に何かを経験をすることは、自己の変容という奇跡であり、その結果私たちには、新しい状況がもたらされます。そのとき私たちは、ただ生きていることに、言葉にすることもできないほど感謝することでしょう。自分自身と同じ源から生じている人々の多くの人生に関わり合うことで、私たちは恩恵を受け取っています。そしてその恩に対して、私たちは恩をもって報いることができます。私たちが触れあっている他の人ひとりひとりの心は、私たちが話す言葉を通じて、私たちが唱える祈りを通じて、私たちが書く手紙を通じて、私たちが行なう仕事を通じて、あるいは、私たちが過ごす人生を通じて、「根源的生命力」(Vital Life Force)という息吹によって活気を取り戻すことができます。

恐怖や、〈新たな領域へと踏み出すときの恐れ〉のような個人的な体験を深く調べることを通して、私たちは進歩し、成長し、変容をなし遂げることができます。そして私たちは〈心の中の師〉の、静かにささやく声を知るようになります。〈心の中の師〉と同調することを通して、そして、〈大いなる作業〉へと私たちの努力を結集させることを通して、また、バラ十字会に伝わる行動指針を日常生活で実際に活用することを通して、私たち一人ひとりは-、偉大なる自己理解と自己支配に達することができます。

※上記の文章は、バラ十字会が会員の方々に年に4回ご提供している神秘・科学・芸術に関する雑誌「バラのこころ」の記事のひとつです。バラ十字会の公式メールマガジン「神秘学が伝える人生を変えるヒント」の購読をこちらから登録すると、この雑誌のPDFファイルを年に4回入手することができます。

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