投稿日: 2015/07/03
最終更新日: 2023/05/29

こんにちは。バラ十字会日本本部の本庄です。東京板橋では、朝から強い雨が降り続けています。梅雨明けが待ち遠しいですね。

バラ十字会日本本部代表、本庄のポートレイト

そちらは、いかがでしょうか。

今回は、ややディープな話題をご紹介したいと思います。

このページの内容を要約した動画を作りました。どうぞ中央をクリックして、ご覧ください

エメラルドタブレットの話を、何かお聞きになったことがおありでしょうか。

それは、錬金術の最も重要な原理を、エメラルドの板に彫り込んだ秘宝があるという、やや怪しい言い伝えです。

まず、「錬金術」という言葉が怪しいですが、それが怪しく感じられるのは、この言葉が、努力しないでお金儲けをする方法というような意味で使われることがあるからかもしれません。

しかし、エジプトで発生し、中世に全盛期を迎えた錬金術という分野は、決して不真面目な分野でも詐欺まがいの分野でもありませんでした。

錬金術師の大部分は、まじめな研究によって、世界の根本原理を発見しようと努力していたのです。それは、現代の物理学者が統一理論を見つけようとしているのと、動機としては変わりません。そして、錬金術の研究からは、現代の化学や薬学が生まれました。

卑金属を純金に変えるというのは、やや古い時代の錬金術の目標でした。この分野が成熟期を迎えたころ行なわれていたことは、傲慢さや利己心などの人間の卑しい性質を、謙虚さや寛容さのような反対の性質のものに変えるために有効な方法を探し求めることでした。そして、この種の錬金術は、精神の錬金術(spiritual alchemy)と呼ばれています。

やや話がさかのぼりますが、古代ギリシャ時代には、特に偉大な哲学者が3人現れました。ソクラテス、プラトン、アリストテレスです。このうちアリストテレスの授業を受けたアレクサンドロス3世は、その知識によって優れた王になり、領土を拡大し、紀元前4世紀には、自分の名を付けたアレクサンドリアという都市をさまざまな地に建設します。

その中でも、エジプトのナイル川の河口にあるアレクサンドリアは、後に古代世界の知識の中心地になります。ギリシャ文化とエジプト文化と、そして、さらに東方の文化が混じり合ったのです。

アレクサンドリアの港
現在のアレクサンドリア

アレクサンドロス3世の後継者プトレマイオス1世ソテルは、これらの知識を後世に伝えることを自分の使命だと考え、この地に巨大な図書館を作ります。この図書館の最盛期には、一説によれば70万巻の貴重な書物が保管されていたということです。

そして、この図書館の内外にはさまざまな学校が設立され、世界中から研究者が集まってきました。

エジプトを征服したギリシャ人たちは、エジプトのトート神とギリシャのヘルメス神をなぜか同一視するようになります。

トート神とは、エジプトの広い地域で信仰を集めていた神であり、偉大な魔術師であるともされていました。一年が365日からなる暦を人間に与えたのも、文字の書き方を人間に教えたのもトート神であるとされていました。また、トート神は、他の神々の書記であるとされ、神々の意志を人間に伝える役割があるとされていました。

Thoth

トート神 By Jeff Dahl (Own work) [GFDL (http://www.gnu.org/copyleft/fdl.html) or CC BY-SA 4.0-3.0-2.5-2.0-1.0 (http://creativecommons.org/licenses/by-sa/4.0-3.0-2.5-2.0-1.0)], via Wikimedia Commons

大英博物館には、ナポレオンが遠征で発見したロゼッタ・ストーン(ロゼッタ石)が展示されています。ロゼッタ・ストーンとは、プトレマイオス5世の善行をたたえる、石に刻んだ布告文ですが、3段に分けて異なる言語で同じことが書かれていたため、フランスのエジプト学者シャンポリオンが、当時の言語を解読する決め手になりました。

そして、このロゼッタ・ストーンには、トート神のことが「偉大な、偉大な、二重に偉大なる者」と書かれています。

Rosetta Stone

ロゼッタ・ストーン See page for author [Public domain], via Wikimedia Commons

プトレマイオス2世フィラデルフォスは、紀元前3世紀に父の王位を継ぎ、エジプトの歴史家であり神官であったマネトに、当時の神秘学派の知識を本にして残すように命じます。

このマネトの本によれば、トート神とは人間に言葉を与えた神であり、後に「第1のヘルメス」と呼ばれるようになります。そしてずっと後になって現れた、エジプトに住んでいた優秀なある哲学者が、「第2のヘルメス」と呼ばれるようになったのだそうです。きっと「第1のヘルメス」のように優れた人という意味だったのでしょう。彼は当時の優れた思想を資料として収集し、その息子が本にまとめました。

これがヘルメス文書であり、その内容がヘルメス学であるとされます。その内容には、先ほどご説明した錬金術も含まれています。

この「第2のヘルメス」は、別名「ヘルメス・トリスメギストス」とも呼ばれました。トリスメギストスとは「偉大な、偉大な、偉大な」、つまり「3重に偉大な」を意味します。それはこの哲学者が、神智学、錬金術、魔術の3つの分野の達人であったからだとされています。

ヘルメス文書は全部で42巻あり、法律、神智学、筆記法、数学、錬金術、医学の6つの部門に分かれていたそうです。

先ほど述べたエメラルドタブレットも、ヘルメス・トリスメギストスが作ったとされています。

しかし、文書を彫り込めるほど大きなエメラルドの宝石の板があるとは、常識ではとうてい考えられません。もしかしたら、エメラルド色の特別な素材の板だったのでしょうか。

バラ十字会が世に広く知られるようになったのは17世紀ですが、当時の会員たちは、錬金術を含むヘルメス学を熱心に学んでいました。

そして、18世紀後半には、『バラ十字会員の秘密の象徴』という本をドイツ北部の町アルトナ(Altona:現在のハンブルグの西部)で発行しています。

どのようにして手に入れたかも出典も分かりませんが、この本にはエメラルドタブレットが登場します。円形をした図版とラテン語の表題が2つあり、ドイツ語の説明が書かれています。

この文章が日本語に翻訳されるのは初めてだと思います。バラ十字会AMORCの北中南米担当英語圏本部の所有している英語訳のデータから日本語訳を作りました。

おそらく、キリスト教が発生する300年ほど前に作られた、この文章を味わっていただければと思います。

ご専門の方以外は、一読しただけでは、きっと意味がさっぱり分からないことと思います。しかし、このような謎に満ちた文章を、リラックスしながら、自分の直観を活用して味わうのは、なかなか素敵な体験になります。

今までご説明してきたことからご理解いただけることと思いますが、この文章には、傲慢さや利己心などの人間の卑しい性質を、謙虚さや寛容さのような高貴な性質に変えるための鍵が含まれています。

* * *

ヘルメスのエメラルドタブレット(Tabula Smaragdina Hermetis.)

ヘルメスの秘密の言葉(Verba Secretorum Hermetis.)

エメラルド・タブレットの図版

次のことは真実であり、偽りは含まれていない。すなわち、下にあるすべてのものは、上にあるものに似ており、上にあるすべてのものは、下にあるものに似ている。それは、ひとつの偉大な仕事をなし遂げるためである。すべてのものは、〈唯一であるある物〉から生じるが、それは、〈唯一であるある物〉を〈自身の精神〉の中に作った〈唯一なる者〉の意志と言葉による。それと同様に、あらゆる物が存在するのは、この〈統一性〉のおかげであるが、このことは〈自然界〉の秩序による。そして、その〈精神〉に自身を適合させることによって、あらゆる物は進歩することができる。

その〈父〉は太陽である。その〈母〉は月である。〈風〉はそれを子宮の中に入れて運び、〈土〉がそれを育む。この〈物〉は、この世界の完璧な物すべての〈父〉である。それが再び〈土〉に変わるとき、その力は最も完璧である。〈土〉から〈火〉を分離し、粗雑なものから微細なものを分離しなさい。しかしこのことは、注意深く、優れた判断と優れた技巧をもって行ないなさい。

それは、大地から天上へと上昇し、ふたたび下降し、大地に新たに生まれる。そのようになされるのは、〈上〉と〈下〉の力によってである。それゆえに、全世界の栄光はあなたのものになり、あらゆる暗黒はあなたから逃げ去るであろう。

これは、あらゆる能力の中でも最も強力な能力である。あらゆる力の中の力である。というのもそれは、形のないあらゆる物に打ち勝ち、形のあるあらゆる物を突き通すことができるからである。このようにして、世界は創造され、珍しいさまざまな組み合わせと、多くの種類の驚異がもたらされた。

それゆえに、私は「ヘルメス・トリスメギストス」と呼ばれる。世界中の3種の英知に習熟した者である。「太陽の作業」とも呼ばれる錬金術という最高の技術に関して、私が述べなければならないことは以上で全てである。

* * *

冒頭の「下にあるすべてのものは、上にあるものに似ており、上にあるすべてのものは、下にあるものに似ている。」という部分は、エメラルドタブレットであるとされている他の文章にも含まれており、エメラルドタブレットの中でも最も有名な部分です。

この中に出てくる「上」とは、マクロコズムと呼ばれる宇宙のことです。宇宙と言っても、天文学者が考えるような、星々と宇宙空間からなる宇宙ではなく、物と心の両方が含まれる世界のことです。そして「下」とは、ミクロコズムと呼ばれている人間のことです。

ですから大まかに言えば、この部分は、宇宙と人間が同じ秩序、同じ法則に従っているということを述べています。

バラ十字会の通信講座で学習されている方の多くは、このことの応用が思い浮かぶことと思います。

今回は、かなりディープな話題でしたが、少しでもお楽しみいただけたなら、心から嬉しく思います。次回は、やや軽い話題を扱いたいと思います。またお付き合いをいただければ幸いです。

それでは、また。

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