投稿日: 2026/03/17

以下の記事は、バラ十字会日本本部の季刊雑誌『バラのこころ』の記事を、インターネット上に再掲載したものです。

※ バラ十字会は、宗教や政治のいかなる組織からも独立した歴史ある会員制の哲学団体です。

区切り

人生の暗い谷 - 疎外を創造的に活用する
The Dark Valleys of Life – Creative Alienation

メアリー・ウィルソン
By ary Wilson

苦悶する女性と背景の谷

私の息子は、三歳の誕生日の数日前に髄膜炎にかかりました。痛みで叫ぶ息子の姿を見るのは耐え難いことでした。集中治療室で2日を過ごした後、一時容体は安定しているように思えたのですが、突然病状が悪化してしまいました。夫と私は恐れと悲しみで取り乱していました。専門医が優しく私たちに警告してくれたことが起こるかもしれないという恐怖と、すでに脳の損傷が起こっているかもしれないことに悲しみを感じていました。

そしてこうしたことが起こっている間も、法律関係の仕事に携わっていた私は、重要な案件を処理し続けなくてはならず、一方で、化学技術者の夫は精油所の問題に責任者として対処しなければなりませんでした。忙しくあわただしい仕事を持つ二人と重病の子どもでは、幸せな家庭を築くのは困難です。

実は、息子が病気になる数ヵ月前からいくつもの問題が次々と起こっており、そのすべてによって私の自信は打ちのめされていました。私は法律家として有能さを認められ勤勉に働いてきたのですが、キャリアの壁にぶつかっていました。私は、本来こなすべきよりもはるかに多くの案件と取り組んでいました。そして、どれほど改善しようとしても時として結果は、良くても平凡という程度でした。今にも仕事で失敗するかもしれないという不安を抱え、さらには昔からの友人でさえ、悩みとストレスで押しつぶされそうになった私に戸惑い、少し怒っているように見えることもありました。

すべてが間違った方向に進んでいるように思われ、不吉で変えられない運命が私たちを破滅に導いているように感じられた、そんな時期のことでした。私は鏡の中の自分の顔を見るのも嫌でしたし、そのような私のことを周りの人たちはどうして我慢できるのかと、しばしば不思議に思うほどでした。私が出会うほとんどすべてのことが、私の目の前に挫折と敗北をもたらすために共謀しているように思えました。私と周りの世界との調和が、ひどく失われていたのでした。

調和を失って

このようなとき、人は孤立し、社会から引き離され、方向感覚を失い、人生のリズムと調子を合わせることができないように感じます。整然とした天球のシンフォニーも、耳障りな不協和音に変わってしまいます。取り組もうとすることすべてがうまくいかず、必要以上に複雑になってしまうのです。私たちは家族や友人や仕事の同僚からも隔てられたように感じていました。最悪だったのは、自分があまりにも無価値だと感じ、この状況を変える気力さえも失っていたことです。私は他の誰とも調和することができずにいるのに、明らかに、私以外のすべてのことが普段通りに営まれているのでした。どういうわけか私だけが軌道から外れ、混乱した空間の中でどうすることもできずに、もがいていました。

全体として適切に役割を果たすことができていれば、私たちはほとんどの問題に対処することができます。しかしそうでないとき、どうすればこの疎外された空しい孤独な時間を生き延びることができるのでしょうか。哀れで気の毒なヨブはこう叫びました。「わたしの苦悩を秤にかけ、わたしを滅ぼそうとするものをすべて天秤に載せるなら。今や、それは海辺の砂よりも重いだろう。わたしは言葉を失うほどだ。全能者の矢に射抜かれ、わたしの霊はその毒を吸う」(『ヨブ記』6:2-4)。私は現代のヨブというわけではまったくありませんが、それでも私たちがヨブと同じように無力と混乱を感じるのは、それほど珍しいことではありません。そして良くなるにせよ悪くなるにせよ、私たちとともに、あるいは私たちと関係なく、問題はやがて解決します。遅かれ早かれ、私たちかそれとも他の人が、こうした問題を一掃する力を持つようになります。私は最も辛い時期に、心の中で聞こえてくる「これもまた過ぎ去るものだ」という言葉にたびたび慰められました。

私たちの息子の病気は、昏睡状態に入った数時間後に突如として峠を越えました。彼は普通に目を覚ますと、顔には生気が戻り、そしてまもなく活力あふれる健康を取り戻しました。そして私の悩みや問題のすべては、わずか数ヵ月で何事もなかったかのように消え、新しいチャレンジの余地が生まれたのです。しかし、足場をひどく失っていたため、バランスを取り戻すのにおよそ一年がかかりました。激しく急速に私を落ち込ませた一連の出来事によって、私はひどく動揺していました。

穏やかで整然とした成長の道からもし外れてしまったなら、再びその道に戻って、人の役に立つ役割を生き生きと果たさなければなりません。問題の深刻さ以上に私たちを不安にさせるのは、私たちが陥ってしまった孤立化した混乱した状態です。ではどうすれば、そのようなときに人生を元のしかるべき状態に戻せるのでしょうか。それは、決してあきらめないこと、逆境に直面したときに耐える力を常に失わないでいること、そして決して自己憐憫に陥らないことです。

多くの場合、ただ辛抱強く待つだけで十分です。もしまだ道を見つけていないなら、いずれ道のほうが私たちを見つけてくれると信じるだけでいいのです。この自信さえあれば、巡礼の道と巡礼者は再びお互いを見つけ出すことができます。いつの日か、私たちは再び世界と一つになります。鳥たちの優しいさえずりや、木の葉のささやきが耳に響き始め、満足感をもたらす優しいメロディーの前触れになります。もし自分の道徳心を曲げずにただ持ちこたえれば、自分がかつて歩んでいた道がもう一度足もとに現れ、再び楽しめる自分のものになります。そしてそのとき、混乱のベールが自分の目から取り除かれるとき、おそらく、これらの最悪の時期でさえ人生の必要な部分であったことに気づきます。こうした苦しい状況だけが確実に与えてくれる方法で、私たちは成長することができたのだからです。

宇宙のすべてのものが、秘められたリズムに従って盛衰を繰り返しているように、私たちの人生もまた時には内向きに収縮し、再び膨らむことを繰り返しています。続いて起こる成長と生産の時期を経験するためには、望みを失った厳しい時期に耐えることが必要なのかもしれません。いかなる人生も、まっすぐで途切れることのない平坦な道を進むことはありえません。宇宙には、そのように平坦で実りのない種類のものは存在しないのです。すべてのものが満ちては引き、上昇しては降下し、膨張しては収縮しています。丘が存在するためには谷が存在しなくてはなりません。人生の暗い谷は、成長と理解のための前奏曲です。時には耐え難いものであったとしても、経験こそが知恵に導き認識を深めてくれます。

私たちが落ち込む時期は罰でもなければ、理由もなく耐えなければならない厳しい試練でもありません。それは善い人生を送るためのレッスンであり、それによって内面的な成長と意識の拡大、精神と感情の成熟がもたらされます。私たちが十分な洞察力を持ち、十分に注意を払って観察するならば、そのメッセージを聞き逃すことはありません。それらの教訓を聡明さと認識の向上に役立てるかどうかは私たち次第です。

ヨブは苦痛の中で、単に救いを求めて叫んだのではなく、導かれ、存在の意味を理解することを求めました。私たちもまた、苦悩の時間を創造的な瞑想に使い、人生の意味や方向性を個人として探求する進歩に役立てることができます。宇宙は決して無秩序ではありません。私たちが方向を見失う、ときおり起こる時期は、人生の不思議さと美しさをより深く理解するための手段にすることができます。

※上記の文章は、バラ十字会が会員の方々に年に4回ご提供している神秘・科学・芸術に関する雑誌「バラのこころ」の記事のひとつです。バラ十字会の公式メールマガジン「神秘学が伝える人生を変えるヒント」の購読をこちらから登録すると、この雑誌のPDFファイルを年に4回入手することができます。

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