以下の記事は、バラ十字会日本本部の季刊雑誌『バラのこころ』の記事を、インターネット上に再掲載したものです。
※ バラ十字会は、宗教や政治のいかなる組織からも独立した歴史ある会員制の哲学団体です。

同情の本質
The Nature of Compassion
セシル・A・プール
By Cecil A Poole

私たちの言語には、もっと深く理解するべき、ひとつの言葉があります。それは「同情」(Compassion)という言葉です。この言葉の意味には、他の人に共感するということや、友情や思いやりを感じるということや、他の人々の苦しみを自分のものとして理解し実感するということが含まれています。詩人のロングフェローはこのように書いています。
「これまでに私が見聴きしてきたことはわずかであるが、そこから私が学んだのは、他の人たちの過ちを、怒るのではなく悲しむということである。」
私たち人間には、他の人の感情を、相手の立場になって理解することができる能力があります。ある人が困難や心配事に出会っているときにもたらされる感情には、他の人の理性に悲しみの感情を引き起こし、同情をもたらす傾向があります。
ある人を完璧かつ公正に判断することは、私たち人間にできることではありません。というのも、その人が現在の状況に至った事情のすべてを知ることはできないからです。ですから、判断を下すことよりも、同情することのほうが適切で重要なことです。同情は、すべての人の心に、もともと備わっている特徴であり感覚です。それは、他の人の体験を、自分自身の体験として実感するか、あるいは少なくとも、そのことについての何らかの感情を抱く能力です。私たちは自分自身に対して混乱を感じたり、悲しみを感じたりすることがよくあります。ですから、他の人のことを気の毒に思ったり、あるいは少なくとも他の人の直面している困難な事情を理解することを、「同情」という言葉ひとつで表すことができます。
このように同情とは、苦しみや逆境に襲われている他の人に対する、深い共感と悲しみの感情です。同情という感情には、しばしば、他の人の苦しみを和らげてあげたい、その原因を取り除いてあげたいという強い願いが伴います。同情という言葉の意味を、最大にまで広げて考えるならば、それは精神的な能力やサイキックな能力を用いることにあたり、この世界とはそもそも、人間の経験の複雑な集合体であるという理解が私たちにもたらされます。自分自身の能力を最大限に発揮して生きていくことを私たちがもし望むのであれば、自分だけではなく、仲間である他の人をも理解しようとする手段として、同情という能力を、私たちは自ら進んで用いることになります。
人類学者のローレン・アイズリー(1907-77)は、この意味の同情を提唱していた偉大な思想家でした。また、原始人が生き残り、環境を支配するという勝利を最終的に収めるために、同情という要素が重要であったことを指摘しています。哲学者でもあり、古生物学者でもあったアイズリーは、原始人とその生活の状況について、数多くの研究を行ないました。そして、ネアンデルタール人についてたびたび述べています。ネアンデルタール人は、現代人よりも、身体も生活の方法も原始的でした。
しかし、彼がさまざまな機会に指摘していたように、「人間」の初期の段階であると考えることができる明らかな証拠が、ネアンデルタール人にはあります。ネアンデルタール人の埋葬の方法について、アイズリーは次のように書いています。
「がっしりとした石のように堅い手で墓を掘り、死者の頭を守るために平らな石を置いた。動物の足や腰の肉が、死者の旅の助けとなるように置かれている。加工された火打石、すなわち黎明期の人類のささやかな宝物が、愛情を込めて墓に振りまかれている。何千年もの時を超えて、言葉のないメッセージが伝わってきた。『私たちもまた人間だったのです。私たちもまた苦しんだのです。私たちもまた墓が終わりではないと考えていたのです。私たちの顔はあなたがたを怯えさせるでしょうが、私たちもまた人間の苦悩と人間の愛を知っていたのです。』」
「5万年を経た今でも、埋葬という行為に、何ひとつ変化もなく変更も加えられていないことに思いを巡らせることは重要である。猿を思わせる額の下から彼が我々を見つめているとしても、その人間らしい行ないによって、我々は彼が人間であるということを知る。もし今後5万年経っても、涙を流して悲しむことが、人間にまだできるのであれば、そこには、人間らしさが生き残っていることであろう。この点が、とどまることなく激しく進んでいく科学の時代に対して、我々が問いかけるべきすべてである。」
私たちが生きている科学の時代の未来がどのようなものであるかは、同情心を、人が心に保ち続けられるかどうかに左右されると、アイズリーが考えていたことが、この引用文からはっきりと分かります。私たちが涙を流して悲しむことができる限り、そして、自身の幸せだけではなく、他のすべての人々の幸せも考えに入れるということから生じる感情を示すことができる限り、現在の文明は存続することができるでしょう。私の見解では、「同情こそが人類の未来を開く鍵」です。
すべての人々が同情を表すことができる限り、間違いなく人類は、これからも進歩し続け、いまだかつてない素晴らしい功績をなし遂げるために、そして、より洗練された状態を手に入れるために努力し続けることでしょう。バラ十字会の神秘学と人生そのものから学びを得るのと同時に、同情は、自身の進歩を表わすことができるための、極めて重要なひとつの鍵であるということを心に刻んでおきましょう。人類の進歩が継続し、文明が存続し安定していることを望むのであれば、生きもののすべてに対する哀れみの心である同情を表わしたり、それをもとに行動する能力を、私たちは決して捨て去ったり、失ったりしてはなりません。
※上記の文章は、バラ十字会が会員の方々に年に4回ご提供している神秘・科学・芸術に関する雑誌「バラのこころ」の記事のひとつです。バラ十字会の公式メールマガジン「神秘学が伝える人生を変えるヒント」の購読をこちらから登録すると、この雑誌のPDFファイルを年に4回入手することができます。
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第2号:人間にある2つの性質とバラ十字の象徴、あなたに伝えられる知識はどのように蓄積されたか
第3号:学習の4つの課程とその詳細な内容、古代の神秘学派、当会の研究陣について
参考文献
Eiseley, Loren, “Neanderthal Man and the Dawn of Human Paleontology” in The Quarterly Review of Biology, Vol. 32, No. 4, 1957





