まえがき
バラ十字会の本庄です。
※ バラ十字会は、宗教や政治のいかなる組織からも独立した歴史ある会員制の哲学団体です。
当会(バラ十字会AMORC)のフランス代表が、自身の人気ブログに書いたスピリチュアリティ(spirituality:精神性)についての記事の翻訳をご紹介します。
原題は「スピリチュアリティへの呼びかけ」なのですが、「心こそが大切だと考える人に訴えます」ということがこの文章の真意です。

記事:『スピリチュアリティへの呼びかけ』

この数十年というもの、人間の活動のあらゆる分野において、世界は危機に直面しています。数年前に始まった新型コロナウイルス(Covid-19)による感染症の流行によって、その危機が一層浮き彫りにされ、人類は何らかの責任に向き合わなければならないということが露わになりました。広い分野にわたるこの危機の原因は一つではありませんが、最大の要因は、現代社会が物質の価値を重視する考えに偏りすぎたことにあると私は考えています。それと並行して多くの国で、「常なるもの」も普遍的理想も存在しないと考える傾向が爆発的に広まり、その結果、特に西洋においてあまりにも多くの人が、超越性という概念を完全に失ってしまいました。
現在の状況が示しているように物質主義は、人間の性質の中のあまり高貴とは言えない部分を助長します。所有欲、支配欲、自己の個人的利益を最重要だと考えること、肉体的な快楽を極限まで追求すること、見栄を張ることなどです。物質主義はまた、肉体や外見への崇拝を生みだし、人生にある本質的な価値から多くの人を遠ざけてしまっています。ファッション、特に服飾やコスメティックの分野で、人工的で表面的なものがこれほど称賛されるようになったのは、おそらくかつてなかったことです。残念ながらその影響力は増すばかりで、世代を問わずますます多くの人たちが、多かれ少なかれ意図的に、物質主義をひとつの文化にしてしまうことに加担しています。

物質主義の台頭
今日、お金、所有物、そして外見が極めて多くの人の選択や生き方を左右しているという事実を別にしても、物質主義の「台頭」をそれ自体が反映している現象があります。それはトランスヒューマニズム(transhumanism)です。人間ができるかぎり長生きできるようにするために、あらゆる手段を尽くすべきであるという考えに基づいているこの思想に、ますます多くの人が惹きつけられています。この観点から、トランスヒューマニズムを信奉する人たちは、人間の身体と精神の能力を向上させるだけでなく、加齢とともに機能不全に陥った臓器を人工臓器に置き換えるためにバイオテクノロジーを利用することを熱心に支持しています。一般的にこれらの人たちには、物質主義であり死を極端に怖れているという共通点があります。
もし、物質主義的な生き方と精神性を尊重する(spiritualistic)生き方の本質的な違いを端的に言うとすれば、前者は「持つこと(所有)」に、後者は「あること(存在)」に基づいていると言えるでしょう。今日、大多数の人たちにとって最も一般的な関心事は、常により多くの物を持つことです。確かに、特にいわゆる後発開発途上国や発展途上国において、あまりにも多くの人が劣悪な物質的環境で暮らしており、本来享受すべき快適さが得られていません。ですからそれらの人が、より多く、より良いものを持ちたいと望むのは正当なことです。しかしその一方で、快適な生活を送り何ひとつ不自由のない多くの人たちが常に不満足を感じており、所有したい、金持ちになりたい、消費したいという欲望には際限がなく、そのために世界の混沌とした状況が生じています。
私の見解では、物質主義者や無神論者が「所有すること」を重視するのに対して、精神性を尊重する人(spiritualist:心こそが大切だと考える人)は「存在すること」を重視します。なぜなら、物質の世界に生きてはいるけれども、自らの内に精神的な要素、つまり魂が存在すると考えているからです。またそれに加えて、精神性を重視する人の多くが〈超越的なもの〉、つまり宗教が神だとしている存在が自らの外にあると考えています。それと同時に、自身の生活上の満足や探し求めている幸福は、物質的な所有物や身体的な喜びや外見などに還元されるのではなく、それ以上にとは言わないまでも、それと同じくらい自身の内面生活に左右されると深く感じています。このため精神性を重視する人は誰しも、自分の幸せの本質的要素を自己の内面から引き出そうとする傾向がありますが、これは物質主義者には当てはまらないことです。

精神性を生き方の基礎にする
消費至上主義、生産至上主義、ロボットへの過度の依存、環境破壊などの逸脱行為を伴う物質偏重主義への傾倒を人類が続けるならば、中期的に見て、自らの破滅を招くことになるということを私は確信しています。そう遠くない過去には、ごくわずかの説教者と「最後の審判を唱える預言者」だけが世界の終わりを予言していました。しかし今では、特に地球温暖化、世界の人口の指数関数的な増加、自己の生存が脅かされると互いに殺し合うという人間の傾向などの理由から、さまざまな科学者が、人類が絶滅する可能性を唱えています。それゆえに、私たちの個人と集団としての行動、さらに言えば、私たちが人生に与える意味そのものを根本的に変えることが急務であり、それゆえに私はこの文章『スピリチュアリティへの呼びかけ』を書いています。
今日、広い意味のスピリチュアリティは、極めて多様なメディアを通して広まっています。たとえば、主要な宗教(ユダヤ教、キリスト教、イスラム教、ヒンドゥー教、仏教など)、いわゆる秘伝的思想運動(バラ十字会、マルティニズム、フリーメイソンなど)、ニューエイジ思想のグループ、さらにはスピリチュアル系の書籍やウェブサイトです。一見するとスピリチュアリティに興味を持つ人の方が、それに興味がない人よりもはるかに多いように思えます。しかし実際にはそうではありません。なぜならユダヤ教徒、キリスト教徒、イスラム教徒、ヒンドゥー教徒、仏教徒などや、バラ十字会、マルティニスト会、フリーメイソンなどの会員、ニューエイジ思想などの信奉者であることが、スピリチュアリスト(spiritualist:精神性を尊重する人)という語の最も高貴な意味においては、スピリチュアリストとして行動する人であることを意味していないからです。極端な例を挙げれば、宗教の狂信者や原理主義者は、精神性を自身の生き方の基礎に据えている人に想定されるのとは正反対の行動をしています。
最も高貴な意味においてスピリチュアリストであるとはどういうことでしょうか。先ほど述べたようにスピリチュアリストであるとは、魂(soul)と〈常なるもの〉の存在を(その概念はさまざまですが)、認めることを意味します。しかしそれはまた、おそらく何にも増して人間の最良の部分、すなわち一般に「資質」や「徳」と呼ばれているものを発揮するために自らを磨く努力をしていることを意味します。たとえば、誠実さ、謙虚さ、忍耐、執着しない心、慈悲深さ、非暴力などです。もしあらゆる人がこの努力をするならば、世界はあらゆる面で今よりはるかに良くなるということに、あなたもきっと同意することでしょう。したがってスピリチュアリティを呼びかけるということは、私たち一人ひとりが自身の判断と行動において、聡明さを示すことができるように努力しようと呼びかけることを意味します。このことはまさに、バラ十字会AMORCがその哲学と学習教材を用いて、日々努めていることに他なりません。

共に、より善く生きること
最近、「共に生きる」(vivre ensemble)という言葉を頻繁に耳にしますが、このことは、現状では、人と人との関係が本来あるべき姿から外れていることに多くの人が気づいていることを示しています。しかし、この表現にはどこかあいまいなところがあります。なぜなら、好むと好まざるに関わらず、私たちが同じ地域、同じ国、同じ地球上で共に生きていることは、まぎれもない事実だからです。重要なのは、「共に、より善く生きること」です。つまり、友情に満ちた関係を育み、すべての人と個人個人の利益のために、考え得る最も美しい価値観に基づいた世界が出現するように共に取り組むことです。そしてこのことが可能になるのは、私が先ほど述べた意味においてスピリチュアリティ(精神性)を、人類全体が指針として採用した場合だけだと私は確信しています。
あなたもきっと気づいていることと思いますが、いかなる国家元首も政府の長も、物質主義からではなく精神を尊重するという観点から人生に向き合うように国民に呼びかけたことは、これまで一度もありません。なぜでしょうか。それは、「精神的な価値を信奉するか信奉しないか、それに関心を持つか持たないかは個人の選択であり、私的な領域の問題である」と述べることが、「政治的にも中立的立場からも正しい」とされているからです。確かにその通りです。しかしそれでも人類の大半が次の明白な事実に気づく日が来ることを私は願っています。すなわち、もし人類が明るい未来を望むのであれば、精神性(それは必ずしも宗教的であること意味しません)を個人の選択と集団の選択の基礎にすることが必須であるということです。そのためには、広範な意識の目覚めが必要になり、社会に蔓延している物質主義と個人主義から決別する意志が必要になります。私たち人類の存続そのものが、まさにこのことにかかっています。

もしあなたが、精神的な価値を尊重する人であれば、この訴えは無用とまでは言えないとしても、おそらく、あまり必要でないものに思えることでしょう。もしあなたが物質主義者や唯物論者であり、単なる好奇心からお読みになったのであれば、自身と人生の意味について、深く問い直してみたいという願いが、あなたに呼び起こされない限りは…、この文章のことをおそらく無意味なものだと見なすことでしょう。いずれにせよ世界の現状は、個人および集団としての生き方の選択について自問することを、すべての人に促しています。バラ十字会AMORCが2014年に発表したマニフェスト『バラ十字友愛組織からあなたへの訴え』(訳注)にはこう主張されています。「誰もが幸せを、多かれ少なかれ求めていますが、幸せは物質的な事柄と精神的な事柄がバランスした状態に備わるのであり、どちらか一方を切り捨てて実現されるのではありません」。
訳注:原題『Appellatio Fraternitatis Rosae Crucis』。下記URLで日本語版を読むことができます。
https://www.amorc.jp/manifesto/
もしあなたが、この文章『スピリチュアリティへの呼びかけ』で示された考えにご賛同なさるなら、ぜひこの呼びかけのことを他の人にも知らせてあげてください。そしてご自身に向けて次の誓いを行っていただきたいと思います。「社会が過度に物質主義的になったことを意識し、私は『持つこと(所有する)』よりも『あること(存在)』を重んじ、他の人の信条や信念を尊重すると同時に、自らの人生に精神性に基づく指針を与えることを誓います」。
内なる光によって導かれる聡明な精神性という絆のもとに、あなたへの訴えであるこの文章を締めくくります。
バラ十字会フランス本部代表
セルジュ・トゥーサン
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第2号:人間にある2つの性質とバラ十字の象徴、あなたに伝えられる知識はどのように蓄積されたか
第3号:学習の4つの課程とその詳細な内容、古代の神秘学派、当会の研究陣について
関連記事1:『スピリチュアルとは?本当の意味を簡単に解説、4つの実際の例』
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執筆者プロフィール
セルジュ・トゥーサン
1956年8月3日生まれ。ノルマンディー出身。バラ十字会AMORCフランス本部代表。 多数の本と月間2万人の読者がいる人気ブログ(www.blog-rose-croix.fr)の著者であり、環境保護、動物愛護、人間尊重の精神の普及に力を尽している。
本庄 敦
1960年6月17日生まれ。バラ十字会AMORC日本本部代表。東京大学教養学部卒。
スピリチュアリティに関する科学的な情報の発信と神秘学の普及に尽力している。
詳しいプロフィールはこちら↓
https://www.amorc.jp/profile/





