投稿日: 2025/08/12

以下の記事は、バラ十字会日本本部の季刊雑誌『バラのこころ』の記事を、インターネット上に再掲載したものです。

※ バラ十字会は、宗教や政治のいかなる組織からも独立した歴史ある会員制の哲学団体です。

区切り

呼吸について
The Breath

マーガレット・ハーガス
By Margaret Hargas

呼吸する女性

誰もが知っているように、呼吸は生命維持に不可欠です。なぜなら、空気が重要な化学成分として体に必要であることはもちろんですが、空気を吸うという行為によって、極めて特別で貴重な種類のエネルギー、いわゆる「生命のエッセンス」が私たちの体にもたらされるからです。そして、私たちは完全に無意識にこの生命のエッセンスを利用して、生命を維持し、肉体にも精神的にも成長していきます。呼吸によって細胞には酸素が供給され、二酸化炭素が主な成分である細胞の老廃物が排出されます。肺は全身の老廃物の25%を排出しています。肺を排泄器官と考えることは通常はないことを考えると、この割合は極めて高い数値です。呼吸はまた、私たちの免疫機能、精神の明晰さ、活力、体の全般的な緊張レベルやエネルギーにも影響を与えています。

呼吸の定義

呼吸は昔からずっと、生命の本質(essence:エッセンス)と関連すると考えられてきました。この生命の本質は、生まれて行う最初の息とともに体内に取り込まれ、死ぬときに去っていくとされています。東洋医学の古い権威ある文書には、生命力が呼吸とともに体内に取り込まれ、次に、肺がこの生命力を空気から抽出し、体内で利用されると書かれています。

呼吸が生命力と関連するとした文明は、古代の中国だけではありません。古代ギリシャには、魂(spirit)と呼吸の両方を意味するプネウマ(pneuma)という言葉があります。英語では、この言葉をそのまま借用して、プネウマが生命を与える原理を意味しています。また、ラテン語に由来する「スピリタス」(spiritus)という言葉があります。この言葉は、呼吸、生命の息吹、ソウル(魂)、精神、心を表現するために使用され、極めて興味深い連想ですが「勇気」を表現するためにも使用されました。スピリタスという言葉から、「inspire」(鼓舞する、ひらめきを与える)、「aspire」(熱望する)、「expire」(息を吐く)という言葉が生じました。これらの言葉は、人間の呼吸という物理的なプロセスだけでなく、心や魂に関連しています。

古代ギリシャやローマの文化よりも昔の古代エジプトの初期の王朝では、呼吸は「サフ」(sahu)と呼ばれていました。この言葉は、呼吸だけでなく、魂、高次の自己などさまざまな意味を表わすために用いられました。サ(sa)は、「神の液体」すなわち人間に命を与える物質を表わす言葉でした。エジプトの旧王国、中王国、新王国時代とおおむね同時期に栄えた古代インドのヴェーダの宗教では、呼吸と魂の両方を意味する「アートマン」(atma)のことが述べられています。古代のこの用語は、呼吸を意味する古代ギリシャの「アトモス」(atmos)という語とも関連があり、この語は「呼吸する」を意味する動詞「atmen」として、現代ドイツ語にほぼそのまま残っています。

また、サンスクリット語には、すべての生物に共通する、呼吸と生命力の両方を意味するプラーナ(prana)という言葉があります。プラーナヤーマ(Pranayama)は、多くのヨガの修行で用いられている呼吸法です。プラーナヤーマの実践は、クンダリニーを目覚めさせるためにも用いられます。クンダリニーとは神聖な火であり、神の原理の女性的な側面です。クンダリニーは通常、人間の背骨の根元に位置するとぐろを巻いた蛇として表現されます。

プラーナヤーマは、多くのヨガの修行で用いられている呼吸法である
プラーナヤーマは、多くのヨガの修行で用いられている呼吸法である

呼吸のリズム

呼吸法はもちろん、治療やサイキック体の投影などのための多くの修練で用いられています。このことに関連していますが、身体の骨格系に「頭蓋仙骨ポンプ」と呼ばれるメカニズムがあるのは興味深いことです。

頭蓋とはもちろん頭蓋骨を構成する骨格のことで、仙骨とは脊柱の下端にある三角形の骨のことです。ちなみに、仙骨(sacrum)という語は、「神聖な」を意味するラテン語の「sacer」に由来しており、仙骨が神聖な火であるクンダリニーのエネルギーの座であるされていることとの間に興味深い一致が見られます。頭蓋仙骨ポンプの働きによって、脳脊髄液に循環が生じ、神経系に栄養が与えられ、老廃物が排出され、神経を構成するさまざまな重要な器官が、衝撃から守られています。

吸気と呼気の安定したリズムによって、脳脊髄液を循環させるポンプ作用が生じます。呼吸による骨格の微妙の動きによって、仙骨とこめかみが穏やかに細かく揺らされ、脳脊髄液の流れが生じるのです。こめかみは大きな骨の両側にあたり、この骨は、頭の幅全体にわたっています。

ポリネシア文化に残るフナ(Huna)の伝統は、四大元素を支配する伝説的な達人であるカフナ(Kahuna)の教えとして良く知られていますが、奇跡をなし遂げ、世界を動かすために呼吸を用います。彼らは、息を吸い込むことと生命力をマナ(mana)と呼んでいます。マナという語は、捧げものをすること、力を与えること、崇拝すること、愛すること、強く望むことを意味します。また、権力や技能や才能という意味もあります。そして、マナは真実、崇拝、観念、瞑想、自信、時間といった言葉の語源にもなっています。感情と知性と高次の自己がコミュニケーションできるようにして、それらを統合するのがマナです。そして、呼吸という行ないを通じて、生命の表現が始まり、維持され、洗練されていきます。

あくびをするときに深く長く空気を吸うのは、身体の自動的な反応であり、浅い呼吸によって血液中に二酸化炭素という老廃物が蓄積されたことへの対応である
あくびをするときに深く長く空気を吸うのは、身体の自動的な反応であり、浅い呼吸によって血液中に二酸化炭素という老廃物が蓄積されたことへの対応である

より効率的な呼吸法

実際的で物理的な観点から呼吸を検討してみると、私たちの呼吸の習慣は多くの場合に、完璧な効率という理想からはかけ離れていることがわかります。呼吸という行為は通常、ごく当たり前のように行われるものだとされています。単に空気を吸ったり吐いたりしていれば、呼吸は正しく行われていると見なされます。しかし残念なことに、時とともに、ストレス、悪い姿勢の習慣、衣服の締め付けなどによって、私たちは幼児期に自然に身につけた呼吸のパターンを失ってしまいます。

呼吸は、吸うときも吐くときも効率的であるべきであり、そのためには両方の肺の全体を用いなければなりません。肺はかなり大きい器官であり、鎖骨から胸郭の下までの胸部の全体を占めています。胸の上に手を置いて普通に呼吸すれば、胸が膨らんだりしぼんだりすることが感じられます。しかし、私たちは通常、胸の上部と肩だけを動かして呼吸しています。しかし実際には、胸全体と脇腹と背中の一部で、肺が膨らんだりしぼんだりするのを感じるべきです。肺の膨張が大きければ大きいほど、それに応じて生命維持に必要な酸素が多く取り込まれるようになり、呼気とともに肺から取り除かれる老廃物の量も多くなります。あくびをするときに深く長く空気を吸うのは、身体の自動的な反応であり、浅い呼吸によって血液中に二酸化炭素という老廃物が蓄積されたことへの対応です。

呼吸は視力にも影響します。呼吸が浅くなると目への血流が減り、視力に悪い影響を与えることが知られています。また、呼吸は私たちの精神面の安定にも関連しています。私たちの感情の状態は、呼吸の速さや回数に影響を与えます。怒っているときの速い荒い呼吸を想像してみてください。感情が呼吸に影響を与えることは明らかです。逆に、このような怒りの呼吸のパターンや他の感情の際の呼吸のパターンを真似てみると、その感情によって起こる身体的な変化や心理的な変化を作り出すことができます。

制限のない自然な方法で呼吸することは、肉体や精神の状態、深層心理学的な状態の、多くの側面を改善するための重要かつ簡単な方法です。この理解を最大限に活用して、健康を改善し、精神を明晰にし、身体と感情に望ましい状態を構築するかどうかを、私たちは選択することができます。まず呼吸が始まり、次に生命が始まります。呼吸をしなければ私たちは生きることができません。ですから、呼吸に注意し、正しく呼吸するために、できることをすべて行うようにしましょう。

草原で呼吸法を行う女性

※上記の文章は、バラ十字会が会員の方々に年に4回ご提供している神秘・科学・芸術に関する雑誌「バラのこころ」の記事のひとつです。バラ十字会の公式メールマガジン「神秘学が伝える人生を変えるヒント」の購読をこちらから登録すると、この雑誌のPDFファイルを年に4回入手することができます。

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