こんにちは。バラ十字会の本庄です。
すっかり暖かくなりました。東京板橋では、バラの一番花もそろそろ終わりです。
いかがお過ごしでしょうか。
さて、私が良く受ける質問に、バラ十字会は宗教ですかというものがあります。
2007年から日本本部の代表を務めていますが、すでに100回以上は尋ねられたことがあると思います。
この質問には、人の姿を表す十字という象徴と、十字架という象徴の意味の違いがかかわっています。
このことについて、当会のフランス代表がとても正確な記事を書いていますので、今回はその翻訳をご紹介させていただきます。
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『バラ十字と宗教』
“Rose-Croix et religion”
バラ十字会AMORCフランス語圏本部代表セルジュ・ツーサン
バラ十字会のことを宗教だと考える人がいますが、その大部分は、この会が実際にはどのようなものなのかを調べたことのない人たちです。この誤解は当会の名称に「十字」という言葉が含まれていることが大きな原因のようです。
十字は明らかに宗教的な象徴だと考えている方が大部分です。具体的に言えば、十字から通常連想されるのはキリスト教であり、キリスト教からは長い歳月にわたってさまざまな思想運動が生じてきました。
しかし、知っていていただきたいのですが、初期のキリスト教の象徴は十字ではなく、ギリシャ語で「イクトゥス」(Ichtus)と呼ばれる魚でした。
西暦4世紀に開かれたニカイア公会議(キリスト教の聖職者の最高会議)でキリスト教の教父たちは、この象徴をイエスの処刑に関連する十字に変更することを決定しました。
その後は、あらゆる国の多くの人たちが、十字から自動的にキリスト教を連想するようになりました。
バラ十字という象徴の十字には宗教的な意味は含まれず、キリスト教との関連もありません。この十字は、あらゆる人の身体を表しています。人が両腕を横にまっすぐに広げ、両足を閉じた姿です。
また、十字の腕のそれぞれの先端に3つ付いている丸い突出部は、当会の学習課程の12の段位を表しています。
中央に配置されているバラは、進歩しつつある人間の魂(soul)を象徴しています。バラが赤色をしているのは、この色が伝統的に愛と英知をあらわしているからです。
ですから、バラ十字は全体として、あらゆる人の二元的な性質(物質と精神という2つの要素からなること)を表す、伝統的で普遍的な象徴になっています。
この意味から考えると、キリスト教、ユダヤ教、イスラム教、仏教などのあらゆる宗教の信者や、いかなる宗教を信仰していない人にも、この象徴に親しい印象を持っていただけることと思います。
一般的に言うと、宗教には次の5つの特徴があるとされます。
1)神が存在することを提唱し、神を崇拝や礼拝の対象とすること。
2)預言者、救世主、聖人などと呼ばれた、ある人物の人生や活動に基づいていること。
3)神聖だと考えられている書物(聖書、コーラン、ウパニシャッド、三蔵など)が基礎になっていること。
4)固定的な性質の道徳律や教義が提供されること。
5)信者が日常的に集まる(教会、シナゴーク、モスク、寺院など)場所があること。
これらの5つの特徴は一般に“宗教”だと見なされるものを判定する基準だとされていて、現在存在している主な宗教(キリスト教、ユダヤ教、イスラム教など)と、そこから派生した宗教運動の特徴になっています。
一方で、バラ十字会の哲学は、預言者、救世主、聖人とされる特定の人と関連しておらず、聖典にも基づいていません。また、道徳に関しても、世界や人間についての見解に関しても、固定的な教義を伝えているわけではありません。
他方で、バラ十字思想では神(創造主)が存在すると考えられていることは事実です。しかしバラ十字会員は神のことを人に似た存在ではなく、人格を持たない絶対的知性だと考えています。
この絶対的知性を人間が直接知ることはできませんが、それは、宇宙や自然界や人間の中に、法則を通して表れています。
多くの科学者が、自然界に働く法則や数学上の法則のことを“神聖”だと感じていますが、神の間接的な表れである他の法則も、それと同じ意味で神聖だと言うことができます。
バラ十字思想の目標のひとつは、多くの人にこれらの法則に親しんでいただき、それと調和した生き方をしていただくことです。
人が普遍的な法則と調和した生き方をするということは、幸せであり、あらゆる意味で豊かであるために、決して欠かすことのできない条件であるとバラ十字会の哲学では考えられています。
当会が宗教ではないことから、あらゆる宗教の信者の方々と、いかなる宗教も信仰しない方々が当会に属しています。
特に、若い世代のバラ十字会員の半数以上は宗教を信仰していないようです。年配の人たちとは異なり、若い人たちの大部分は特定の宗教の教育を受けておらず、精神面での疑問への解決を求めて当会の門をたたきます。
固定的な教義が存在しない当会の学習は、若い人たちの気質にとても合っているようですし、幸せと知識と聡明さを求める彼らの望みを満たしているようです。
さらに、若い会員の多くがオンラインで学習していることも注目に値します。このことは、伝統と現代的なテクノロジーが、決して対立するものではないことを示す一例になっています。
(フランス本部では当会の課程をオンラインで学習することができますが、日本本部では現在導入を検討しているところです。)
著者セルジュ・ツーサンについて
1956年8月3日生まれ。ノルマンディー出身。バラ十字会AMORCフランス本部代表。
多数の本と月間2万人の読者がいる人気ブログ(www.blog-rose-croix.fr)の著者であり、環境保護、動物愛護、人間尊重の精神の普及に力を尽している。
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再び本庄です。
上の文章から分かるように、バラ十字会は、宗教に対して否定的なわけでは決してありません。しかし、日本でもヨーロッパでも、多くの人の宗教離れが起っていることは事実です。
「私は精神性を重視していますが、宗教を信仰していません。」(I’m spiritual but not religious.)という言葉が海外では良く聞かれるようです。
一部の宗教だけでなく、硬直化してしまったあらゆる組織に、若い人たちの精神性に適応するための変化が求められているのだと思います。
下記で、前回のセルジュ・ツーサンの記事を読むことができます。
『自分を認めること』
では、今日はこの辺で。
また、お付き合いください。
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