投稿日: 2025/07/23

バラ十字会日本本部AMORC 理事 山下 勝悦
バラ十字会日本本部AMORC 理事 山下 勝悦

※ バラ十字会は、宗教や政治のいかなる組織からも独立した歴史ある会員制の哲学団体です。

いつだったでしょうか? テレビのトーク番組か何かで知った言葉です。

禅語の一つで「水を掬く(きく)すれば、月は手にあり」と読むとのことです。

その意訳は「両手で水を掬(すく)うと、その手のひらに月が映るように、遠くにあると思えるものも、実はすぐ近く、あるいは自分の手の中にある」と、なるのだそうです。

つまり、努力すれば遠くにある目標も手に入れることができると解釈できるそうです。

あるいは、真理は遠いところにあるのではなく、実は自分の中にあるといった意味合いもあるとのことです。

杯の中の水に映った月

さらに、似たような言葉で「水の中の月を掬うがごとき行為」といった言葉もありました。こちらは不可能を試みること、または努力しても報われないことに対しての無駄な努力を戒める言葉だそうです。

そこで「あれっ!?」と思い出したことがあります。

唐の時代の詩人『李白』が長江の采石磯(さいせきき)で酒に酔い、水面に写った月を掬おうとして舟から落ち、溺死したという話です。

実際には李白は病死だったそうですが、この話は李白がいかに酒好きだったかを誇張するために作られた伝説であろうと言われています。

とはいっても李白の一生はまさに、『水の中の月を掬うがごとき行為』だったとか。

李白の作品『月下独酌』を読んでみますと、う〜ん何となく解る様な気が…

ということで、話題を唐の詩人、李白にチェンジしましょう。

それでは、もうしばしのお付き合いを。

李白の肖像
李白の肖像、National Museum of China, Public domain, via Wikimedia Commons

まずは『月下独酌』の現代語訳です。

  月の下で独り酒を飲む

春らんまんの花咲く庭に徳利が一つ

相親しむ者もなく一人手酌で酒を飲む

杯(さかずき)を月に向けて「一杯どう」と呼び掛ければ

自分の影も現れて三人となる

月はもとより酒は飲まず

我が影はただ自分の動きに随(したご)うただけである

月と影とを相手にして暫(しばら)く飲もうか

春の時節(ころ)には遊びたのしまねばならぬ

我歌えば月はそぞろに歩き

我舞えば影はしどけなく散り乱れる

まだ醒めているうちは互いに遊べても

酔いつぶれれば月は月に、影は影に、みな元の姿に戻っていく

月よ影よ末永く付き合おうではないか

次に会うときは、あのはるかな天の川で

ガラスの徳利と杯に入った酒、黒い盆、夜桜

どうでしょうか。李白は『月下独酌』の中で現実世界と幻想の世界をゆるゆると行き来しています。

李白のような天才詩人にしてみれば現実と幻想の世界の間には境界線などは存在しなかったのではないでしょうか?

水面に写った月も李白にしてみれば現実世界そのものだったのではないでしょうか?

もしかすると、李白は本気で水面に映った月を掬おうとしたのではないでしょうか?

さて、李白の常人離れした行動の詮索はさて置きまして、現実の世界に話を戻すことにしましょう、とは言っても私個人の話になりますが……

私が「水の中の月…」の言葉をテレビで見たときに、テレビ画面に向かって無意識の内にこんなことを言っていました。

「水の中の月を掬うような行いをやらかして何が悪い!!」。

最初っから、何も考えずに「無理です、不可能です、もう歳ですから」等といった言い訳ばかりで行動に移そうとしないのでは残りの人生に対して失礼というものじゃないでしょうか。

私は人生最後の瞬間まで水の中の月を掬い続けるつもりです。

といったことですので、もし私が溺れそうになったときには「俺は泳げないんだ〜!!」と大声を上げますので、よろしくご配慮の程をお願いしておきます……

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執筆者プロフィール

山下 勝悦

1947年11月22日生まれ。山形県村山市在住。バラ十字会日本本部AMORC理事。 おやじバンドでの演奏と地元のお祭りをこよなく愛し、日常生活の視点から、肩ひじの張らない神秘学(mysticism:神秘哲学)の紹介を行っている。

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