Treasures from Rosicrucian Egyptian Museum – The Grapes of Peace – RC 433
古代エジプトのアマルナ時代は、戦争や侵略よりも、宗教の改革が行われたことで有名です。エジプトの東側の多くの地域では小規模な戦闘が続いていましたが、エジプトの人々はそれらの戦いとは距離を置いていました。当時のファラオであったアクナトン(アメンホテップ4世)は、それまで人が住んでいなかった地域に首都を移転しました。アクナトンはこの新しい首都に、「アテン神の地平線」を意味するアケトアテン(Akhet-Aten)という名前を付けました。この地で発掘された小さな美しい遺物の数々は、アマルナ時代の壮麗さと、当時の人々の価値観を物語っています。
バラ十字公園内にある平和公園は、首都アケトアテンの遺跡で発掘されたいくつかの庭園を見本として作られました。アケトアテンの人々は、家の隣に設けられた、薬用植物と美しい花々でいっぱいの庭園で休憩することを習慣にしていました。エジプトの人々はとても現実的で、庭で育てている植物はすべて、食物や薬として用いるものでした。しかし、それぞれの植物の美しさが引き立つように、丹精込めて庭造りをしていました。庭には池があり、魚が泳ぎ蓮の花が咲いていましたが、リラックスしたり瞑想したりする涼しい場所にもなっていました。庭に設けられた小さな殿堂は、祖先や王室の人々を敬う場所でした。あずまやには葡萄棚が作られ、庭を引き立てていました。葡萄は果物やワインとして家族でいただいていたのでしょう。
アケトアテンの人々は、葡萄を特に好んでいました。それは、耐久性のある陶器で葡萄のレプリカを作ったほどで、今回ご紹介する遺物はその一例です。この葡萄は、鮮やかに彩色され堅く焼かれた陶器で、ファイアンス焼き(faience)という技法で作られています。用いられた原料は、「自己施釉型の石英ガラス」とも呼ばれています。原料の石英は、非常に細かい砂から採取されて、さらに細かく粉砕され、着色剤として鉱物が加えられています。ファイアンス陶器を焼成すると、陶器の表面に着色剤が表出し、通常の陶磁器類と同じように光沢のある表面になります。古代エジプトの人々は、さまざまな工芸技術に長けていることで有名でしたが、ファイアンス陶器の製作もそのひとつです。人々は、「きらめき輝くもの」と呼び、宝石よりもファイアンス陶器を選ぶ人も多かったほどでした。この葡萄の房の形をした陶器の裏側には、取り付け穴がついていますので、葡萄の葉をあしらって、窓枠に飾られていたのだと推測することができます。おそらく、葡萄の下がった美しいあずまやの印象を、部屋の壁に加えたのでしょう。この作品の細やかな細工からは、古代エジプトの人々の細部に対するこだわりが見てとれます。また、人々が生命と美をどれほど愛していたかがよく表されています。
この葡萄の房は、アクナトン(紀元前1360年~1343年頃)の時代のもので、現在はアマルナと呼ばれているアケトアテンの都市の遺跡から1920年に発掘されました。バラ十字会AMORCが後援し、エジプト探査協会(Egypt Exploration Society)が行なった発掘作業で出土した遺物のひとつです。
青紫のファイアンス陶器、高さ10.9cm
リサ・シュワッパハ・シリフ、文学修士
バラ十字古代エジプト博物館学芸員、副館長
米国カリフォルニア州サンノゼ市にあるバラ十字古代エジプト博物館は、毎年10万人以上が訪れる人気の観光スポットです。また、子供向けの考古学のイベントを開催して、地元の教育に貢献しています。
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