投稿日: 2024/04/09
最終更新日: 2024/04/17

以下の記事は、バラ十字会日本本部の季刊雑誌『バラのこころ』の記事を、インターネット上に再掲載したものです。

※ バラ十字会は、宗教や政治のいかなる組織からも独立した歴史ある会員制の哲学団体です。

区切り

問題を解決する方法
Problem Solving

エドワード・リー
By Edward Lee

エドワード・リー氏は、30年以上にわたりバラ十字会米国本部に勤め、インストラクターを行っていた献身的な会員で、『神秘学の実践』(Practical Mysticism)という本の著者です。その中で、「自分が受け取り回答した多くの質問と答えは、神秘学を学ぶ人だけに関係するものではなかった。自己の内面的な成長は、長い時間をかけて段階的に進むプロセスであるが、結局のところ、それを達成するために必要なあらゆる努力を行う価値があることに疑いの余地はない」ということに気づいたことが、この本を書く理由だったと彼は語っています。

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私たちが人生で問題に遭遇する理由はさまざまです。たとえば、ある状況に対する理解不足、感情のコントロール不足、些細な状況を重大に考えすぎること、深刻な問題を軽視してしまうことなどです。これらの問題に対処する方法や手段は、しばしば、自分の生活や周囲の人たちの生活に広範囲に及ぶ影響をもたらします。

問題とは、解決策や、少なくとも何らかの決断を必要とする未解決事項だと言えるでしょう。通常、ある問題の望ましい解決策を得るためには、集中して考えたり、個人の技能を発揮したりすることが必要になります。問題には、たいていの場合、疑いや疑念、時には恐れが伴います。社会的な問題、隣人との問題、子供の問題など、問題にはさまざまな種類があります。この考察の中で重点的に取り上げる問題の種類は、個人的な問題とその解決手段です。そして、解決をなし遂げるための実用的なツールとして神秘学(神秘哲学:mysticism)を使用します。

問題の解決は、基本的な種類の思考であるとされ、心理学者やバラ十字会の研究者など、人間の行動に興味を持つ人たちによって多くの研究が行われてきました。問題を解決する手順は、大きく2つに分けられます。単純な試行錯誤に重点を置く場合と、時として「洞察」と呼ばれるものを、ある程度必要とする場合です。このうち第二の方法は神秘学に深く関連していますので、後ほど検討を行います。

第一の試行錯誤という方法では、問題となっている状況の各々の要素を調査し操作していくことによって、可能性のある解決策を列挙し、想定した目標に近づくことを一歩一歩進めていきます。試行錯誤という方法で何を行うべきかは、ジグソーパズルのピースを組み合わせようとしている場合とは異なり、必ずしも明白ではありません。あなたにも経験があるかも知れませんが、問題を解決しようとしているのに、単にその難しさについてあれこれと考えたり、何がこれから起こるのだろうかと心の中で考えたりするだけになってしまうことがあります。疑問に対する答えを見つけるために、あるいは少なくとも、望ましい実際的なゴールに達する手段を見つけるために、あなたは、考えるという努力を行うことでしょう。そのとき、何か特定の問題に気を取られていても、心の平安と調和が保たれることを望むべきです。

一部の研究機関で用いられている方法に頼ることもできます。すなわち、状況全体をより明確に把握するための助けとして図表を用いることができます。図表は、問題の全体的な構造を探るための指針として用いたり、他の方法では見逃すかもしれない有望な一連の行動を明らかにするために用いたりすることができます。図表を検討することで、問題の状況が複雑過ぎて直ちに解決できないことが分かる場合もあります。そのような場合には、その問題を一度に解決するのではなく、いくつかの段階に分割して手順を踏んで取り組む必要があります。

エドワード・リー
エドワード・リー

先に進む前に、最終的な目的を明確にすることがとても重要であることを忘れてはなりません。目的が漠然としていたり、大まか過ぎたり、あるいは過度に理想的である場合には、望ましい結果に決して達しないかもしれません。ですから、目的は現実的で、進めていく上での基準になる、十分に明確なものでなければなりません。自分が置かれた状況を十分に調べていないと、問題に着手し始めても選択肢が明らかになる可能性は高くありません。したがって、最初に行うべきことは、目的をできる限り明確に言葉で表すことです。この段階で、その分野で多くの経験を積んでいるとあなたが考えるひとりの人、あるいは複数の人に、相談する必要があるかもしれません。しかし、全体的な目的は何かという問いを決して忘れてはなりません。

興味深いことに、一部の小中学校や高等学校では、通常の学習課程の一部として問題解決のテクニックに重点的に取り組んでいます。子供たちはその取り組みによって、学校内や地域社会で起こる問題を発見し、定義し、分析する技能と態度を身につけることができます。クラブ活動や生徒会などの課外活動も、問題解決の技能を高めるために役立ちます。この技能は、生徒がその後の人生で何が期待されているかを理解するための参考になる、追加の枠組みになります。彼らはこの技能によって、将来、国際人になるための能力を十分に身につけることができます。

創造力に恵まれた学生は、自分が考えている問題が十分な強烈さを持つものであり多くの人たちの関心を呼ぶものであれば、最善の解決策は、劇や小説やエッセイを書くことだと判断することが、たびたびあります。そのことによって、実際の社会の病んだ部分を、真に迫った姿で暴き、明るみに出すことができます。そのようなテーマには、人種差別、反ユダヤ主義、女性蔑視、金銭や権力への貪欲さ、政治の腐敗などがあります。このようなテーマのすべてが、さまざまな作家によって極めて効果的に取り上げられてきました。プロテスト・ソングや社会派の演劇は、視聴者の思考や議論を刺激することがたびたびあります。これらが励ましとなって、さまざまな芸術の創作家が苦しめられていた重圧という問題が、ある程度緩和されることがあります。

潜在意識(イメージ)

第二の方法である、個人的な問題に直観的な洞察を用いる際には、まず、問題と求める解決策に関係するさまざまな原理や要因を明確に理解する必要があることを、最初に強調しておかなければなりません。次に、その問題で求められていることは何なのかを検討します。つまり、問題の各要素が相互にどのように関わっているのかに注目し、目標に直接導いてくれる可能性がある規則や指針を探します。精神的に自制が保たれており、意志に柔軟さがあれば、計画を着実に進め、必要であれば計画そのものを変更しながら解決に向けて進んでいくことができます。

しかし多くの場合、解決に行き詰まってしまう時点が訪れます。問題を極めて熱心に、深い洞察力をもって検討していても、答えがどこにあるのかが分からないと思えるようになります。そのようなときには、その問題を手放して、「より高次な判断力」に委ねることを検討するべきです。言い換えれば、助けと導きを得るために、問題の全体を潜在意識(subconscious:下意識)に向けて解き放ちます。正直なところ、これは、簡単なことではありません。人間には、問題にしがみつき続けることを望み、論理的な思考からの助言だけを求めようとする傾向があるからです。

しかし、私たちが問題を手放して内的な自己に委ねることに成功すれば、心の中のこの偉大なガイドが、そのうちに、数時間後か数日後か数週間後かもしれませんが、その問題に関する高度な判断を私たちの顕在意識に効果的に示してくれます。この解決策やその手順は、完全に正しいと感じられます。与えられた解決策に関しては、何の疑いもためらいも生じません。さらに、この内的なメッセージには、ある種の感情の高揚やワクワク感が伴っています。この直観的な知識は、突然の閃きとして意識に飛び込んでくることもあれば、段階を追って心の中に展開されていくこともあります。これは、「宇宙意識」と呼ばれる知性の作用です。宇宙意識は、内なる潜在意識の領域のさらに内部に宿っています。この有益な情報が、外側の客観的意識(顕在意識)に入ると、「虫の知らせ」、直観的な「感じ」、「予感」、「感触」などと多くの場合に呼ばれているもの、あるいは現在の科学の用語を用いるならば、まさに「洞察」と呼ばれているものになります。

ここで強調しなければならないことは、まず外的な自分自身(顕在意識)で、何らかの方法で問題解決に取り組まない限り、内的な自己は、問題解決のための直観的な洞察という形で力を貸してはくれないということです。つまり、適切で有益な洞察を得るためには、潜在意識に問題を手渡す前に、予備的な基礎準備と真剣な努力と願望が必要です。そのため、状況をより詳しく知り、先ほど述べた問題を解決するテクニックをより深く理解し活用すればするほど、必要としている宇宙意識からの助けが、より包括的なものになるのを期待することができます。

いずれにしても、直観的な助言についての学習の全体は、実際のところ、正統派の神秘学(神秘哲学:mysticism)で教えられてきた内容のほんの一部に過ぎません。人間の肉体的な面、精神的な面、スピリチュアルな面を含む全体としての性質は、長期にわたる学習を通して徹底して探究するべきテーマです。“宇宙”(Cosmic)の本質、精神による創造、サイキック能力の開発、意志の強化、性格と人格の向上、視覚像の形成、瞑想、他の多くのテーマにわたる神秘学の学習は、日常生活で実際に活用されることが意図されており、学習者の人生を豊かにする補助になります。

※上記の文章は、バラ十字会が会員の方々に年に4回ご提供している神秘・科学・芸術に関する雑誌「バラのこころ」の記事のひとつです。バラ十字会の公式メールマガジン「神秘学が伝える人生を変えるヒント」の購読をこちらから登録すると、この雑誌のPDFファイルを年に4回入手することができます。

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