資料室

空想に力を発揮させる

Making Daydreams Work

ヴィヴィアン・バカン

By Vivian Buchan

 人は誰でも、ひとりになって空想に浸るための個室を持つべきです。ドアには「お静かに! 夢想家が仕事中」と書いた札を下げましょう。毎日そこへ足を運んで空想をしながら時を過ごすのです。こう聞いてショックを受けるお堅い仕事の虫がいらっしゃいましたら、そうした方にこそ、お勧めしたいのです。

 望ましい種類の空想を行うと、より創造的で能力が高く、説得力のある人になれるという研究結果が、いくつも報告されています。空想好きと聞くと、特にこれといったこともせず、目的のない日々をダラダラと過ごしている、非効率的な輩だと見なす人が多いのですが、そのような批判は間違いです。いえ、そう考えているとすれば、その通りになります。

 専門家によると、現実的な目標を頭の中に設けることなく、思考をさまよわせる遊びを自分に許さない人に比べて、日々、心の中の道をあちこちへと歩き回っている人は、肉体的にも精神的にも、感情的にも健康であるばかりか、成功を掴みやすいのです。

 ニューヨークの心理療法士、ジョーン・T・フレイバーグ博士(Joan T. Freyberg)は、学習したり、集中したり、元気を取り戻したり、同僚と良好な関係を築いたりすることが、空想によって助けられていると考えています。彼女はまた、空想が得意な患者ほど治療の成果が早く現れ、緊張やストレスに上手に対処できることを見いだしました。また、別の心理学者、サラ・シミランスキー博士(Sara Similansky)は、空想をするように指導された人たちは、コミュニケーションが上手になり、あらゆるタイプの人たちと良い人間関係を築くのに、成功しやすくなることを発見しました。

 空想しているときに、あなたには大切なことが起こります。それは、自分自身をもっとよく知るようになるということです。自分自身と友達になるのは簡単なことではありません。しかし、自分がどういう人間であるのかを知っていて、正しい自己評価を下せる人は、裏表がなく、自然体で、独創的です。そのような人は、内面的な自己との上手な付き合い方が身についており、それによって、他の人との交流の仕方も上達します。

 空想する時間を持つことは、自分自身とデートするようなものです。自分の精神やソウル(soul:魂)とのデートです。アメリカの女流作家ドロシア・ブランド(Dorothea Brande、1893-1948)は、空想した後は新たな活力がみなぎると語り、「まるで、私の心が解き放たれて、大きな安堵のため息をつき、手足を一杯に伸ばしているかのよう」と表現しています。

 問題に真っ向から挑み、解決策が見つかるまでリラックスすることを拒む人たちは、欲求不満のイライラを感じがちです。空想を問題解決の手段として利用する人は、そのようなフラストレーションを感じることがあまりありません。問題を解決しようと意識して、やっきになればなるほど、答えは見つけにくくなりがちです。

 有名な発明家や科学者の中にも、最高のアイディアのいくつかは、思いがけず閃いたと告白している人がたくさんいます。たとえば、ニュートン(1642-1727)は、自分の最高のアイディアが浮かんだのは、まるで関係のないことを考えていた時だったと認めています。トマス・エジソン(1847-1931)は、込み入った問題に取り組んでいると、頭が「まどろんだ」状態になるのでした。彼はそうした時に、ソファーの上に体を伸ばして、夢想や空想が彼の心を占めるのに任せていました。

 「まどろんだ」状態では何が起きるのでしょう。意識的な思考のスイッチが切れ、潜在意識のスイッチが入るのです。そして、潜在意識によって呼び覚まされたデータが、直観的思考や瞬間的洞察という形で、ぱっとひらめきます。

 最も価値の高い空想は、自分が成功に向かっている姿を思い描くことです。問題に対する別の解決策を見つけたり、自身の目標に至る新しい道筋を発見したり、計画を評価し直したりしている様子を思い描きます。日々の暮らしから受ける様々な重圧や要求のもとでは、全体的な展望を見失いがちです。しかし、目先の見通ししか立てないと、日々の課題という狭い視野しか持てないため、将来像がぼやけてしまいます。

 人道主義者であったハリー・エマーソン・フォスディック博士(Harry Emerson Fosdick、1878-1969)はこう言っています。「素晴らしい人生の第一歩は、自分がいつかやってみたいこと、いつかなってみたい姿を、想像の中で思い描くことである」。フローレンス・ナイチンゲール(1820-1910)は看護師になることを夢想し、トマス・エジソンは発明家になることを夢見ました。コンラッド・ヒルトン(1887-1979)は、小さな子供だったときにホテルを経営することを夢見ていました。

 日常と平凡さから脱出し、創造的な世界へ飛び込むことを、空想は助けてくれます。そして、本当の自分と自分の可能性を見いだすことになります。

 フォスディック博士は続けて、こう語っています。「将来の姿を鮮明に思い描くことで、そうした人たちは誰もが、状況の単なる奴隷になることを免れ、思い浮かべた方向に進んでいったのです。自分自身が負けた姿をありありと思い描けば、それだけで勝利は不可能になります。勝った姿を生き生きと思い描けば、それだけで、成功することが計り知れないほど助けられます。勝者でもなく敗者でもない中途半端な姿を思い描いてはいけません。そうするならば、あなたは打ち捨てられた船のように漂うことになります」。

 勝利を手にするスポーツ選手は、勝者としての自身の姿を想像して、そのような自分の姿を思い浮かべることに多くの時間を費やします。トラック競技の選手はゴール・テープを切る瞬間を思い描き、棒高跳びの選手は、勝利を確定させる高さのバーを自分が越えているところを想像します。バスケット選手なら、シュートをするたびに、ボールがバスケットに吸い込まれるシーンを思い浮かべます。ゴルファーのジャック・ニクラウス(1940-)は、トーナメント戦が始まる前にはいつも、勝利の気分を味わう瞬間を思い描いていました。彼はこう述べています。「その気分を思い浮かべると、カップまでのラインがはっきりと見えるようになる。まるで脳に刻み込まれているかのようにね」。

 何年も前のことですが、十種競技選手のジム・ソープ(1888-1953)は、オリンピックの開催地に向かう船上で、他の選手たちが甲板でトレーニングに励んでいるときに、目を閉じて座っていました。何をしているのかと心配したコーチが尋ねると、「練習だよ、練習」とソープは答え、十種の競技を思い描くことが勝利の可能性をどれほど高めてくれるのかを説明しました。

 心の中に描いた像が成功という結果をもたらすのはなぜなのでしょうか。形成外科医であり、『サイコ・サイバネティックス』という本の著者であるマクスウェル・マルツ博士(Maxwell Malz)の説明によれば、イメージした体験と実際の体験をヒトの神経系は区別できないため、いずれの体験でも、前頭葉から発した情報に対して、神経系は機械的な反応を示します。つまり、人が実際のできごとだと考えたり想像したりしたことに対して、神経系がそれにふさわしい反応を起こします

 空想した内容は、データとして中脳と神経系に蓄積されます。この領域に入力された自己のイメージを高めるデータは、それがどのようなものであっても、その人の成果に望ましい影響を与えます。あなたが目標を達成したいのであれば、そこまでの道筋を描き、その道を辿って目的地にたどり着く自分自身の姿を思い描いてください。成功について空想してください。そうすれば成功が得られます。

 毎日15~20分、心の休暇を取りましょう。誰にも邪魔されない場所へ行き、目を閉じて、映画館の何も映し出されていない大きなスクリーンの前に腰を下ろしているつもりになってください。次に、あなた自身が俳優であると考え、その俳優が、あなたの行いたいことを行っていて、あなたがそう見られたい姿であり、あなたがそう語りたい通りに語っているところを思い浮かべます。

 あまり遠くの未来に目標を設定してはいけません。短期的な目標を達成することで、ありありとした空想を頻繁に行おうとする気持ちが湧き起こり、励まされるからです。実際に成功するかどうかは、自分自身の成功した姿を思い描く能力に比例しています。

 心の休暇から戻ったあなたは、心身ともに充実して、まるで実際の休暇を取ったかのように元気を回復していることでしょう。仕事部屋が十分広ければ、ソファーをひとつ置いて、その上で空想しながら昼休みを過ごしましょう。ソファーを置ける広さがないか、そもそも仕事部屋をお持ちでなければ、公園に出かけて、人が来ない静かな場所を選んでベンチに座ってください。空想のために費やす時間も勤務時間の一部と考えましょう。それは、あなたが成功を収める上で欠かせない何かを実現するための時間なのですから。空想を巡らすことに罪悪感を抱いてはいけません。それは、一日の行動の中で最も大切なことだとさえ言うこともできます。

 望ましい種類の空想であれば、空想を行う人は時間を浪費しているのではありません。創造性と独創性を発達させ、成功しつつあるのです。彼らは人生への投資をしているのであり、空想をしない人よりもはるかに多くのものを得つつあるのです。

 ピエール・キュリー(ノーベル物理学賞受賞、1859-1906)は、マリー・スクウォドフスカ(ノーベル物理学賞・化学賞受賞、1867-1934)と結婚する前に、彼女に宛てた手紙の中でこう書いています。「人生から夢を作らなくてはならない。その夢から現実を作らなければならない」。

 ですから、「お静かに! 夢想家が仕事中」と書かれた札を、あなたが空想を行う部屋のドアに掲げて、あなたの望みにぴたりと合う未来を作ることに、さっそく取りかかりましょう。

 ※上記の文章は、バラ十字会が会員の方々に年に4回ご提供している神秘・科学・芸術に関する雑誌「バラのこころ」の記事のひとつです。バラ十字会の公式メールマガジン「神秘学が伝える人生を変えるヒント」の購読をこちらから登録すると、この雑誌のPDFファイルを年に4回入手することができます。

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