まえがき
フランスの南部にあるトゥールーズという都市は、ヨーロッパ最大の航空宇宙産業の中心地であり、エアバス社の本社があることで有名です。
一方で、交通の要衝として紀元前から人が集まっていた由緒ある地で、歴史的な建造物の多くが赤レンガとテラコッタ瓦(かわら)で作られていることから別名「バラ色の都市」とも呼ばれています。

中世においてフランス南部では、この地を支配する領主が領民の思想に対して際立った寛容の精神を示していました。そのためトゥールーズは、ヨーロッパ最古の文芸アカデミーであり神秘学(mysticism:神秘哲学)的傾向の強い「花合戦のアカデミー」(Accademie des Jeux Floraux)や、キリスト教カタリ派(アルビジョア派)の拠点になっていました。
参考記事:『南フランスの不思議な風土』
バラ十字会AMORCは20世紀の初頭に、トゥールーズで活動していた薔薇十字団の指示によって結成された団体です。
これらの事情のため、「バラ十字会とキリスト教カタリ派には関連があるのですか」という質問を、私もときおり受けることがあります。
このことについて、当会のフランス本部代表が、自身の人気のブログに記事を掲載していますので、その日本語訳をご紹介します。


記事:「カタリ派とバラ十字会の間には、伝統、歴史、そして考え方についてのつながりはありますか」

ご質問にお答えします。まず思い起こしていただきたいのは、カタリ派は12世紀の中期にヨーロッパに出現したということです。ドイツ、イタリア、そしてフランス王国、特にその南部に、カタリ派の共同体が誕生し、次のようなさまざまな名前で呼ばれました。カタリ(Cathar)、ピフル(Piphle)、プブリカン(Publican)、織工(Weaver)、ブーグル(Bougre)、パタリン(Patarin)、アルビジョワ(Alblgensians)などです。
元々「カタリ」(Cathare)という語は、ギリシャ語の「純粋」を意味する「Katharos」に由来します。しかしカタリ派の人々は、自分たちのことを「善き人」あるいは「善きキリスト教徒」と称していました。「完徳者」(perfect)という言葉は、異端審問所がカタリ派の人々の評判を落とすために用いたものであり、彼らが自分たちのことを完璧であると考えており、このことこそが異端であるとほのめかすためのものでした。
カタリ派の教会
12世紀のフランスには、アルビー、カルカソンヌ、トゥールーズ、アラン谷という4つのカタリ派の教会が存在していました。13世紀には、アジャンとラゼスという2つの新しい教会が設立されました。これら6つの教会は独立しており、自分たちの司教の権威だけを認めていました。つまり、ローマ教皇やカトリックの聖職者の権威を認めていませんでした。実際のところ、カタリ派の人々はカトリック教会がキリスト教の記念碑や、司教、大司教、枢機卿などが身につける衣装を過度に豪華にすることで、キリストの理想を裏切っていると考えていました。また、カトリックの儀式、特に洗礼や聖体拝領は、初期のキリスト教徒が実践していた儀式からはかなりかけ離れてしまったとも考えていました。

カタリ派の教義
全般的に言えば、カタリ派の教義は、キリストの生涯と御業(みわざ)に基づいていました。彼らはキリストのことを「世の罪を贖(あがな)うためにきた」贖い主(救世主)だとは見なしておらず、救いを得るために従い模倣すべき精神的指導者と見なしていました。同様に彼らは、キリストが受難を受けたことも十字架の上で死んだことも信じていませんでした。その結果として、彼らは復活の奇跡を信じていませんでした。さらに、彼らの考え方はマニ教(二元論)的であり、世界は2つ存在すると考えていました。ひとつは神の支配下にある「善い世界」であり、もうひとつは悪魔の支配下にある「悪い世界」です。彼らの目的は、前者の「善い世界」を地上に到来させるために尽力することでした。
カタリ派の儀式
カタリ派にはさまざまな儀式がありましたが、その主なもののひとつに「コンソラメントゥム」(慰め)という秘跡があります。これは水によってではなく、キリストが行ったとされるように按手(手を置くこと)によって洗礼を施すものでした。この洗礼を受けた信者は全員が、その後禁欲的な生活をし、肉食を断ち、そして「誓約のときに神の名をみだりに使うこと、嘘をつくこと、盗むこと、殺すこと」を禁じる福音書の道徳を実践しなければなりませんでした。カタリ派の唯一の祈りは「主の祈り」でしたが、その内容は、カトリック教会のものとは異なるものでした。このような事情があったため、カトリック教会が彼らを迫害し根絶するためにあらゆる手段を講じたのは驚くべきことではありません。

カタリ派とバラ十字会
以上の説明からわかるように、カタリ派とバラ十字会の間には、伝統的にも歴史的にも、考え方にもつながりは存在しません。バラ十字会AMORCは宗教ではありませんし、その考え方と哲学は、キリストの生涯や御業に基づいていません。さらに、バラ十字会の会員は、あらゆる点において自由であり、自分の望むように生活しています。たとえば、禁欲的な生活を送ることも、菜食主義者になることも会員に求められることはありません。キリスト教、あるいはユダヤ・キリスト教の秘伝哲学に関心を持つバラ十字会員は、20世紀初頭からAMORCが後援している伝統マルティニスト会の哲学を学ぶことができます。
訳注:伝統マルティニスト会(Traditional Martinist Order):「知られざる哲学者」という異名を持つフランスの哲学者ルイ・クロード・ド・サンマルタンの思想を継承する団体。ユダヤ・キリスト教の秘伝哲学、特にカバラ、数の象徴学、テンプル騎士団の伝統思想を詳細に学ぶことができる。その探求は、バラ十字会AMORCが「知識の道」であるのに対して「心の道」であると呼ばれることがある。日本では2026年中にバラ十字会員にオンラインで教本の提供を開始することが計画されている。

カタリ派については、当会の研究家が書いた、下記の詳細な記事があります。
参考記事:『カタリ派とは? カタリ派の思想と歴史、アルビショア十字軍をわかりやすく解説』
こちらは、セルジュ・トゥーサンによる前回の記事です。ご興味をお持ちの方はこちらもご覧ください。
参考記事:『バラ十字会の学習システムとは|神秘学と自己成長の通信講座』
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第1号:内面の進歩を加速する神秘学とは、人生の神秘を実感する5つの実習
第2号:人間にある2つの性質とバラ十字の象徴、あなたに伝えられる知識はどのように蓄積されたか
第3号:学習の4つの課程とその詳細な内容、古代の神秘学派、当会の研究陣について
執筆者プロフィール
セルジュ・トゥーサン
1956年8月3日生まれ。ノルマンディー出身。バラ十字会AMORCフランス本部代表。 多数の本と月間2万人の読者がいる人気ブログ(www.blog-rose-croix.fr)の著者であり、環境保護、動物愛護、人間尊重の精神の普及に力を尽している。
本庄 敦
1960年6月17日生まれ。バラ十字会AMORC日本本部代表。東京大学教養学部卒。
スピリチュアリティに関する科学的な情報の発信と神秘学の普及に尽力している。
詳しいプロフィールはこちら↓
https://www.amorc.jp/profile/





