こんにちは。バラ十字会の本庄です。
本を出版しました。題名は『図形と数が表す宇宙の秩序』(以下『図形と数…』と書きます)で、ルイ・グロースさんというフランスの方の書いた本の翻訳です。バラ十字国際大学の公認講師を長年務めていた方で、この本は一般向けの、まさに彼のライフワークにあたります。
『図形と数…』では、かなりのページ数を割いて古代ギリシャの哲学者ピタゴラスの考え方が紹介されています。
このブログでもご紹介したことがありますが、ピタゴラスは、宇宙のことをマクロコズム、人間のことをミクロコズムと呼び、この2つは数という秩序(調和)に支配されていると考えていました。
この考え方は、カバラ(ユダヤ教の秘伝思想)などで扱われている世界の成り立ち(創造)と深く関連しています。またこの考え方は興味深いことに、世界中の古代文化でほぼ共通しています。
すべての数には意味があり、それが「図形と数…」で詳しく解説されているのですが、ここでは1から4の数についてだけ、簡単にご紹介します。
1という数は、創造の基礎になった潜在的にしか現れていない〈一なるもの〉を象徴しています。宇宙が出現する前の状態は、そこにはすべてがあったとも、何もなかったとも言えます。
この状態は、円、無限に小さい点、自分の尾を食べている蛇(ウロボロス)などの図形・図案で象徴されます。
次に宇宙には、対立する2つのものが現れます。光と闇、プラスとマイナス、心と物、雄と雌などです。その象徴が2という数です。
これは創造の最初の段階にあたり、古代文化では絡み合った2本の木、2つの顔を持つヤヌス神などで象徴されています。
そして3という数は、対立する2つのものが結びついて第3の新しい要素が生じることを示しています。雄と雌からは子が生じ、プラスとマイナスからは電流が生じます。
このようにして世界に数多くの新しい要素が生じ、世界はますます複雑になっていきます。3という数を象徴する図形・図案には、正三角形、三つ巴、王家のゆり紋章などがあります。
4という数は、大地や地上を象徴しています。大地には、東西南北という4つの方位があります。古代ギリシャ・古代インドでは、火・水・空気・土の四大元素から大地が構成されているとされました。
4という数を象徴する図形には正方形、中央に点が打たれた正三角形、ギリシャ十字(4本の腕の長さが同じ十字)などがあります。
『図形と数…』では、これらの図形・図案がひとつひとつ解説されています。
以上の4つの数から、他のあらゆる数が生じていきます。たとえば、3x4=12は、マクロコズム(宇宙)の展開を支配している数で、一年の月数、12星座などに表れています。
ピタゴラスは1から4の数が、特に万物の秩序のおおもとになっていると考え、10個の点三角形状に配置し、この図形をテトラクテュスと呼び、神聖なものだと見なしていました。
ちなみに、哲学にあたるギリシャ語「フィロゾフィア」という語はピタゴラスが作ったもので、「知(sophia)を愛する(philo)」ことを意味しています。
ピタゴラスの思想は、プラトンなど古代ギリシャの他の多くの思想家に影響を与えたため、神秘学(mysticism:神秘哲学)、さらに広く言えばヨーロッパの哲学全体の基礎になっています。
さて、この写真は『アテナイの学堂』というラファエロ作の絵画です。バチカン美術館にあるこのフレスコ画には、ピタゴラスの興味深い姿が描かれています。
『アテナイの学堂』の左下の部分です。ノートに何かを書き込んでいる頭の禿げた男がピタゴラスで、栗毛色の髪をした女性が、ピタゴラスのために黒板を支えています。
左下にいる男性はノートを熱心にのぞき込んでいますが、その上の身を乗り出しているターバンを巻いた男性は、むしろ女性のほうに興味があるようです。
この拡大写真は黒板のアップです。黒板の下部には先ほど話題にしたテトラクテュスが、ローマ数字Iを10個並べて表されています。
一方、黒板の上部にある4本のあみだくじのように見える部分は、ピタゴラスが発見した音と音の関係を示している図です。
よく見ると縦線の上には、ローマ数字の6,8,9,12が書かれています。これは楽器の弦の長さ、もしくは弦の太さを表しています。
『図形と数…』の第9章には、ピタゴラスがこれらの関係を活用して、どのようにして西洋で初めての音階を作ったのかが説明されています。
この写真は、以前にもご紹介したことがありますがローマにあるサンタ・チェチリア教会です。ヨーロッパ旅行の楽しみのひとつは、歴史ある大聖堂や小さな教会を見学することだと感じている人は多いことでしょう。
『図形と数…』に紹介されていることのひとつですが、大聖堂や教会の設計には深い謎が秘められています。
この図は『図形と数…』の17章に登場する、フランスのトロワの大聖堂の平面図です。
この図の中央付近に注目してください。この建物の設計の秘密を明らかにするために、著者のルイ・グロースさんが書き入れた長方形と円と正方形がありますが、この3つの図形は周囲の長さがすべて同じになっています。
この長方形と円と正方形は、中世の奇譚、アーサー王と聖杯の探求の伝説に登場するテーブルを再現したものであると考えられています。そのうち最も有名なのはキャメロット城の「騎士の円卓」です。
皆さんも魔術師マーリンと円卓の話をお聞きになったことがあるのではないでしょうか。この伝説には古代ケルト文化の影響が色濃く表れています。
以上、新刊書『図形と数が表す宇宙の秩序』の内容のごく一部ですが、ご紹介させていただきました。
最後に、この書籍の他のいくつかの情報も書き添えておきます。ご興味をお持ちになった方は、どうぞご購入なさってください。
★ 書籍『図形と数が表す宇宙の秩序』
ルイ・グロース著 翻訳監修:バラ十字会日本本部AMORC 翻訳委員会
★ ピタゴラス、プラトン、ユークリッド、フィボナッチ、デューラー、そして古代の偉大な建築家たちが駆使した、神秘哲学、数の象徴学、古代幾何学を理解する。
「数学は面白い、宇宙と自然界と人間には密接なつながりがあるということを読者の皆さんに実感していただければ、心から嬉しく思います。」(監修者の言葉)
「この本では、図形と数の象徴としての意義や、哲学的な価値を発見あるいは再発見していただく機会を読者の皆さんにご提供します。そして、図形と数を通して、この宇宙の根本にある法則がいかに簡潔で驚嘆すべきものであるかを示していきたいと思っています。」(「まえがき」より抜粋)
A5判、288ページ、現代書林
(もしくはwww.amazon.co.jp で「図形と数」と入力して検索してください)
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第1号:内面の進歩を加速する神秘学とは、人生の神秘を実感する5つの実習
第2号:人間にある2つの性質とバラ十字の象徴、あなたに伝えられる知識はどのように蓄積されたか
第3号:学習の4つの課程とその詳細な内容、古代の神秘学派、当会の研究陣について
執筆者プロフィール
本庄 敦
1960年6月17日生まれ。バラ十字会AMORC日本本部代表。東京大学教養学部卒。
スピリチュアリティに関する科学的な情報の発信と神秘学(mysticism:神秘哲学)の普及に尽力している。
詳しいプロフィールはこちら:https://www.amorc.jp/profile/
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