投稿日: 2023/10/27

◆ 本屋さんにて

つい最近、新刊本の案内広告にちょっと気になるタイトルの本を見つけました。

『墨のゆらめき』というタイトルで、著者名は『三浦しをん』となっています。

これは絶対に面白い、直感的にそう思いました。

数日後に行きつけの本屋さんに。すると棚には一冊だけ。こういった時はすかさずレジに直行することにしています。

以前に古本屋さんで超のつく珍しい本を見つけた時のことです。『こんなモノを欲しがる物好きは自分の他に誰もいないだろう。まずは店内を一回り見てからにするか』。

ということでまずは店内を一巡り。

その後、さきほどの棚に戻ると……(ありゃ?)。

物好きな方が私の他にもおられたようです……。

神保町の古書店

◆ ちょっと気になるタイトルの本の中身

さて、気を取り直して本題に入ることにしましょう(笑)。

物語は都内の老舗ホテルに勤務する続力(つづきちから)が書道家の遠田薫(とうだかおる)宅に仕事を依頼するために訪ねる場面から始まります。

遠田薫氏は続力が勤務するホテルと契約している筆耕士(住所・氏名を代筆する仕事人)という設定となっています。

続力は遠田薫とはこの日が初対面です。

実はこの遠田薫氏、あらゆる筆跡を自在に書き分ける書道家なのです。

その性格は自由奔放、さらに他人の話を最後まで聞かずに自分勝手に行動に移すという一面も(笑)。

大きな筆で制作中の書道家

こんな遠田氏の言動に振り回される続力氏、いやいやながらも手紙の代筆(文章作成を続力・清書を遠田薫)を手伝わせさせられることになるのです。それでも、続力は遠田薫の文字に魅入られていくのです。

物語の最初のところで遠田氏が自分の書道教室に通う小学生から『先生に相談があるのですが』と声を掛けられると最後まで話を聞かずに『いじめに会っているのか?』と早合点し、『これを相手に渡すか廊下に貼りだせ』と絶縁状を書き上げるのですが、本当の相談は転校する友達に渡す手紙の代筆の願いだったのです。

この絶縁状の内容が実に明瞭かつ爽快!! もし本当に学校内に貼りだしたならば学校内はもとよりPTAや教育委員会も大騒ぎになるのでは?と思える様な内容となっています。

実は、このことがきっかけとなり、続力が遠田薫の代筆を引き受けさせられることになるのです。

次の代筆の依頼人は若い女性で、ラブレターの代筆と思いきや、恋人に渡す絶縁状を作成してくれといった依頼です。

実はここで続力が思わぬ才能を発揮することになるのですが、詳しいネタばらしは控えることにしましょう。

筆で文字を書いている人

◆ 漢詩の話

他にも書をテーマとした物語に相応しく漢詩に関連した話題も組み込まれています。ここは必読の価値ありです。

といったことで、私の高校時代に漢文の授業がありました、その時は『こんなモノ学習して何の役に立つ!!』と思っていましたが、今になって猛反省しています、勉強しとけば良かった~と。

その後も読力と遠田薫の付かず離れずと言った不思議な交友関係が続いていくのです。

そして中盤を越えた頃から遠田薫氏の思いがけない過去が徐々に明らかになっていくのです。

さらっと読んでいきますと単なる娯楽小説のように思えますが、じっくりと読んでみますと全編に墨の香りが漂うような不思議な感覚を味わえます。

書に興味のある方には一読をお勧めします。

墨と筆で描かれた抽象アート

◆ ラブレターの思い出

後書きのようなものです。

文中にラブレターの文字が出て来ましたので昔~しの楽しい思い出が甦ってきました。

クリスマスが近づいて来たある日のことです。

友人から『クリスマス・パーティーをやるから参加しないか?』と電話が入りました。『良いよ』と返事をすると『そうか、それじゃ不特定多数の女性に向けてのラブレターを一通、書いて来るんだよ』と。私は『なんだそりゃ?』。すると今回のパーティーの参加者は男女同数なので余興として男性が書いたラブレターを女性が、女性が書いたラブレターを男性が読み上げるのだとか。もちろんのことですが誰が書いたのかは伏せるのだと。

さあ困りました、ブラック・ジョークを考えて来いと言われた方がよっぽど楽でした。

それでも何とかせねば。

焦りに焦った末に閃きました。

先ずは、その当時にヒットしていた曲のタイトルを思いつくだけ箇条書きにしました。

もうお気付きの方も居られるのでは?

そうです、モノになりそうなタイトルをつなぎ合わせてラブレターを作り上げたのです。途中どうしても繋がらない箇所には曲名ではなく、歌詞をはさみ込むことで体裁を整えました。

赤い封筒に入った手紙を渡す女性と受け取る男性

さて、当日です。

私を除く男性全員が『誰だ~こんなトボケタ手紙を書いたのは~!!』と大騒ぎに。

ちなみに、読んで下さった女性は、お腹抱えて大笑いされていました。

私は知らん顔で『誰だ・誰だ~!!』。

楽しい思い出です(笑)。

ただ一つ残念なことがあります。あの時に書いた内容がいくら頑張っても思い出せないんです。

区切り

筆者紹介:

バラ十字会日本本部AMORC 理事 山下勝悦
バラ十字会日本本部AMORC 理事 山下 勝悦

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