投稿日: 2023/10/31
最終更新日: 2023/11/17

以下の記事は、バラ十字会日本本部の季刊雑誌『バラのこころ』の記事を、インターネット上に再掲載したものです。

※ バラ十字会は、宗教や政治のいかなる組織からも独立した歴史ある会員制の哲学団体です。

区切り

あるバラ十字会員のエジプトの話
A Rosicrucian Tale of Egypt

ポール・パニキアン(オーストラレーシア担当英語圏本部元代表)
by Paul Panikian

これは、私と同じ長年の会員であるひとりのフラター(訳注)が、私の生まれた町でもあるカイロで体験した風変わりなエピソードです。
(訳注:フラター(Frater):兄弟を意味するラテン語。バラ十字会では伝統的に、男性会員をフラター、女性会員をソロール(Soror:ラテン語の「姉妹」)と敬意を込めて呼んでいる。)

1960年代の初めのことでしたが、私は記者としてエジプトのカイロに赴任しました。西洋文化で育った私にとって、それは大冒険とも言えるできごとでした。私はその時初めてカイロを訪れたのですが、この街が、いくつかの意味で真の宝であることを知ったのです。カイロの街は最初から私を魅了し、想像力をかきたてたのでした。たくさんの観光客が訪れる主な観光名所を訪れ、現代的な商業地区を堪能した後も、さらに毎日、街を探検していました。私が特に惹きつけられた場所は、カイロの旧市街の路地でした。毎晩、私は住んでいるアパートから出発して、生鮮食品の市場を横目にしながら、古風な広場を抜け、東へと通じているごみごみして汚れた大通りまで足を延ばしました。15分ほど歩いて、アーケードと狭い横丁を通り過ぎると、古きカイロへと通じる大きな門の前に出ます。

ここで、通りの人々の往来をただ眺めていると、数時間が数分のように過ぎて行くのでした。そこは実際、これまで私が慣れ親しんだ世界とはまったく違う世界でした。そのようにして歩き回っているときに、私はこれまでとは違う意識の状態を何度か体験したようでした。まったく馴染みのない感覚の世界に入っていくと同時に、あたかも、はるか昔の記憶が呼び覚まされたかのような懐かしい感じがしたのです。私はこの体験について、もっと詳しく知りたいと思っていました。

1963年の春のある夜のことです。私は旧市街の角を曲がったのですが、その先には信じられない光景が広がっていました。狭い小路の真ん中で、4、5人の男が、体を右や左に回転させながら踊っていたのです。女がひとり、激しいリズムの笛と打楽器に合わせて歌っていました。私がこれまでによく聴いていた他のアラビア音楽とは、まったく違うものでした。人々が周りに座りこんで、お茶を飲みながら見物していました。私は生まれて初めて「マウリド」(moulid)の行われている場所に居合わせ、生まれて初めて「ズィクル」(Zikr)という神秘的な踊りを目の当たりにしたのです。

カイロのズィクルを描いた絵画、1904 年
カイロのズィクルを描いた絵画、1904 年

私はその場にくぎづけになり、狭い小路の真ん中で、人々が見ている前で繰り広げられているこの世のものとは思えない踊りに夢中で見入っていました。集中した状態でいると、突然、すぐそばに予想外の何かが現れたような気がしました。誰かいるのかと振り返ると、驚いたことに、濃い色のスーツを着た品の良い年配の男が立っていました。目が合うと、男は私を安心させるように微笑みかけました。

「あなたが、私たちの街のこのあたりを歩き回っているのを見かけたことがあります」と彼は流暢な英語で話しかけてきました。「ほとんどの外国人はこのあたりに来ることはありません。しかし、土地の人たちは気立ての良い人たちばかりなので、危ないことはありません。それでも、あなたは目立ちますから時には注意が必要です。外国人がひとり、何かを探しているのか毎晩歩き回っているのを見たと、友人と近所の人が私に知らせてくれたのです。それはきっとあなたのことだと思ったので、こうして声をかけたというわけです。」

「このあたりを歩き回っているといつも、遠い昔にここに住んでいたかのような、はっきりとした感じがしてくるのです」と私は自信なく答えました。

「おっしゃる意味はわかります。でもここではいろいろと差し障りがあります」と彼は言うと、小路の反対の端を指差しました。「ここから数分のところに私の家があります。もしよろしければいらっしゃいませんか。そこなら気兼ねなくお話ができます」。

ほんの数分のうちに、私たちはほとんど人気のない通りを歩いていました。やがて石造りの外壁に着き、そこには、少なくとも400年は経っているように思える大きな門がありました。その外壁には、東洋風のアカンサス文様の装飾がふんだんに施されていました。門をくぐって中に入ると、いくつかの建物に囲まれた大きな中庭に出ました。時代物の木の階段を上がったところに、彼の住まいがありました。私たちはすぐに腰かけて、お茶を飲みながら話し始めました。

「今夜あなたがご覧になったのは」と言いながら、彼はカップを口に運びました。「私たちがマウリドと呼んでいる祭りの一部です。ある聖者の生誕日を祝う祭りです。彼はふだんはこの世にいないのですが、時々生者になります。ズィクルという踊りは、神を思い起こすための行です。エジプトに何年も住んでいても、なかなか見ることはできません。しかしあなたは、心の底からの好奇心に動かされて、この祭りの一部を見ることができたわけで、その結果こうして私たちはお話をしています。何ごとも偶然には起こらないのです。

「好奇心とお考えなのですね。しかし確かにあなたが言うように、単なる偶然ではないのでしょう。」

「あなたは何をお探しだったのですか?」と、彼はずばりと聞いてきました。

「どう言えば良いのか分かりませんが、うまく説明できないけれども知識のようなものに飢えているのです」と、私は答えました。

「それは、珍しいことでも何でもありません。エジプトに来ると、敏感な人のいくらかは、そのようになります。あなたは歩き回ることで、カイロのエネルギーを吸収していたのです。このあたりは、特に宗教や神秘についての古くからの伝統のいくつかが息づいています。さまざまな聖者が作った団体があって、それぞれに信奉者がたくさんいます。あなたは、それらのエネルギーに身をさらして歩いているのです。」

そう言われても私は驚きませんでしたが、他にも何か理由があるような気がしていました。

「しかし私は、そういった宗教や神秘については何も知りませんし、そこから何を受け取れるのかも分かりません」と私は答えました。

「それではまず、それらは、ほとんど何もあなたに与えないと言っておきましょう。ただ、あなたの中で何かを目覚めさせるきっかけになったというだけのことです。それらは特定の条件のもとで最も効果があるので、あなたには合いません」。そう言うと彼は少し黙り、どのように続けるかを考えているようでした。「あなたはあなたの奥深くに、すでに知恵の木の種を持っています。しかし、その種をまくのに適した土を見つけなくてはなりません。」

私は彼に尋ねました。「西洋風の服を着ておられますし、英語も見事に使いこなされていますし、あなたは両方の世界を股にかけているのですね。どうしたら、そのようにできるのですか。」

「うまくいくこともありますし、そうでないときもあります。しかし、話を戻しましょう。私が研究によって得たのは、もっと科学的で具体的な知識です。この知識の中心となるのは太陽です。太陽には命を与えるいくつかの要素があることを知られているので、それらの要素を、自然の法則と心の法則として研究します。これはとても古い知識であり、何度も復活し、新たな発見があるたびに追加されてきた知識なのです。」

彼の話は、聞けば聞くほど私を虜にしていきました。彼の言葉は、私の心に強く響きました。

「どうすればその知識を学ぶことができますか?」と私はすぐに尋ねました。

あなたがエジプトに滞在したことで、下意識として知られている場所にある記憶が呼び覚まされました。もう一度言いますが、このことは偶然ではないのです。この知識を学ぶことが、あなたの人生における使命です。しかし、エジプトでそれを学ぶことはできません」と彼が言ったので、私は驚きました。「あなたの国には、この知識を手に入れられる場所がありますし、あなたはそれを見つけることになります。探す時には、2つの象徴を覚えていてください。太陽とバラの花です。」

この言葉で、私の新しい友人は話を終え、私を案内して、カイロの旧市街の暗い路地を通り過ぎ、新市街まで送り届けてくれました。

エジプトでのその後の滞在の間に、それはそう長くはならなかったのですが、さらに何度かこの友人と会いました。彼は政府の高官で、財務関係の重要な地位にあることを私は知りました。彼はナイル河畔の島の高級住宅街に住居を構え、アレキサンドリアにも別荘を持っていました。しかし、カイロの旧市街に住むことが明らかに彼の好みであり、そこには、大きな図書館と実験室と、50人は優に収容できる会議室がありました。彼は秘密と謎に満ちた人物であり、私には知らされていないことがたくさんありました。

その後、私はすぐに故郷に帰り、仕事を再開し、家族との生活や社会の日常に戻りました。しかし、あの夜に友が話してくれたことを、忘れたことは一度もありませんでした。そして私の人生には、間違いなく何かが欠けていました。そして、すぐにある雑誌の広告が目に留まりました。広告そのものにではなく、バラの花と十字の象徴に引きつけられたのです。バラの花についての友の言葉がよみがえってきました。そして私が探していたのはまさにそれだと分かったのです。それは、カリフォルニア州サンノゼ市に本部がある、バラ十字会AMORCの広告でした。さらに、私が住んでいるところからほんの少し行ったところに、小さな殿堂があったのです。

私がバラ十字会に入会してから50年目の記念日が近づくにつれて、このできごとの記録を、『あるバラ十字会員のエジプトの話』として公開し、他の探究者のみなさんと分かち合うべきだと感じたのです。あなたが、さらに満ち足りた、さらに良い人生を達成する助けになればと思って、私はこれを書きました。あなたには幸せになる権利があり、私はそのお手伝いがしたいと願っています。あなたはきっと、安らぎと確信、愛と友情、あるいはお金も、欲しいと思い必要としていることでしょう。まずは“理解”を手に入れ、何をすれば良いのか、どのようにすれば良いかを知れば、これらはすべてあなたのものになります。

バラ十字会は、あなたや私のような人たちに、そのことを教えることに力を注いでいます。その学習の課程は徹底したものであり、私たちの知る限り、人生のあらゆる側面に及んでいます。

50年間の学習の中で、私は探していた知識を手にすることができ、抱えていた多くの疑問の答えを知ることができました。あらゆることがそこにあり、あなたがすべきことはただ、会員のひとりになって、コツコツと忍耐強く学び、学んだ知識を自分の人生に活用することです。

※上記の文章は、バラ十字会が会員の方々に年に4回ご提供している神秘・科学・芸術に関する雑誌「バラのこころ」の記事のひとつです。バラ十字会の公式メールマガジン「神秘学が伝える人生を変えるヒント」の購読をこちらから登録すると、この雑誌のPDFファイルを年に4回入手することができます。

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