キャロル・H・バーマン
ある一時期、若い妻であり母親でもあるその女性は、二人の赤ん坊の世話をしながら、ほとんどの時間を家で過ごしていました。ある隣人がたびたび彼女の家に立ち寄っては、おしゃべりをしたりコーヒーを飲んだりしていました。この人は気さくで楽しい人でしたが、少々うわさ話が過ぎる人でした。彼女は近所の家族の私生活や行動にひどく興味を持っていました。彼女は頻繁にやって来ては、そのたびに、うわさ話を洪水のように喋りたてるのでした。
初めのころ、その若い母親は、それに対してあまり良い気持ちがしないし、退屈に思っていました。しかしあまりにもしょっちゅう聞いているうちに、うわさ話の繰り返しにだんだんと慣れていき、それが生活の一部になってしまいました。しだいに彼女自身も、コーヒーを飲みながらのおしゃべり会で、うわさ話を交換することに自ら加わり始めました。しかし幸いなことに、ある晩彼女は、魂が目覚めるような突然の感覚に襲われました。急に、その日のうわさ話のひとつで夫を楽しませている自分に気づいたのです。私はこんな風になっていくのかしら。彼女はそう思うとぞっとしました。
賢明なことに、彼女はこの親しい隣人と会う回数を減らし始めました。彼女はあえて玄関のドアに鍵をかけて、隣人がこれまで習慣でそうしていたように、無断で入ってこられないようにもしました。この発展性のない状況から離れ、自分の価値観を考え直し、はまっていた無益なうわさ話というぬかるみから自身を引き上げるために、彼女には自分自身と向き合う時間が必要でした。「非生産的で否定的な状況から抜け出すためには、時には無礼にならなくてはならない」という不愉快な真実を、この若い女性は発見したのです。
友情と仲間
Friendship and Companions
真の友情は美しいものです。真の友情に恵まれている人々は、計り知れないほど価値の高い、豊かな人生を送っています。友人というものは、人をその人らしくない生活に追いやることもできますし、その反面、より自分らしく生きることを手助けしてくれるような奇跡を起こすこともできます。友情は経験を広げ、輝かせてくれます。
確かに、建設的な人間関係という「はしご」を築く基礎となる最初の一歩か二歩は、感じの良い気の合う人たちとの交友でしょう。しかし、一緒に時間を過ごす人たちの多くは、心からの友ではなく、単にお付き合いをしている人です。もちろん、お付き合いの時間を楽しむことに、真の友情は必ずしも必要ではありません。楽しい仲間付き合いも、人生に喜びと満足をそれなりにもたらしてくれます。愉快な会話や楽しい活動に一緒に参加することは、多くの充実したひとときを生み出してくれます。
しかし、私たちが誰かと一緒に過ごしている時には、やりとりする情報や分かち合う楽しい時間などよりもはるかに重要な影響を、その人自身から受けています。
この宇宙に、静止しているものはひとつもありません。すべては動いていて、永久に続く変化の状態にあります。私たち自身の感情や容姿なども例外ではありません。今日のあなたは、昨日のあなたと同じではありません。過去の24時間に起った全ての出来事は、ごくわずかではあるでしょうが、あなたに確実に影響を与えています。
私たちの体のどの細胞も、絶え間なく生まれ、育ち、死滅し、そして補われています。宇宙も変化します。地球も変化します。そして同じように、ひとりひとりの個人も変化しています。変化の原因のひとつは、他の人たちです。友人は、私たち自身の精神の成長と知性の発達に役立つのか、それとも精神や知性を逆に衰えさせてしまうのかを決める要素になることがあります。ですから、そのような友人を選ぶ際に聡明な判断をするのは大切なことです。
直感を活用する
A Matter of Intuition
私たちは、関わり合う人々をいつでも選べるとは限りません。家族に対する義務があったり、仕事上でのお付き合いや、社交的な礼儀から、さまざまなタイプの人たちと、ある程度の時間を過ごすことを私たちは余儀なくされています。その中には好ましいと感じる人も、好ましくないと感じる人もいることでしょう。私たちは自分自身で、友人や関わり合う人々を選んでいます。あるいは、選んでいると自分では思っています。しかし実際には、自分の意志とは関係なく自分が選ばれていて、本当は自分にとって良くない人と一緒に長い時間を過ごすという習慣に、次第にはまっていく危険に直面している場合があります。
では、様々なお付き合いや交友において、どのようにしたら正しい判断ができるでしょうか。一つの確実な方法は、それに耳を傾けようという気持ちがあるのであれば、自分自身の直感を用いることです。無気力や憂鬱をもたらすような、さらに広く言えば、悪い影響を自分に及ぼす人たちを、私たちは避けなくてはなりません。ひどい言い方に聞こえるかもしれませんが、そのような人たちと時間を過ごせば過ごすほど、私たちは魂の成長がより妨げられることになるのです。その一方で、私たちの気分をとても明るくしてくれて、より幸せに、より生き生きと感じさせてくれる仲間たちがいます。そのような友人は、精神的にも知性的にも私たちを高めるものについて、考えたり行動したりするためのヒントを与えてくれます。そのような関わり合いこそが、育んでいくべき人間関係です。レバノンの神秘家であるカーリ・ジブランはこう記しています。「人付き合いに、精神を深める助けを求めることなかれ。何時間も一緒に時間をつぶすことを友に求めるのであれば、何のための友人なのか。友には、一緒に意義ある時間を過ごすことを求めなさい」。一人で過ごしたり良い本を相手に過ごすほうが、愚かな人間関係よりもはるかに好ましいことです。
努力する
Making the Effort
先ほどの若い母親の場合のように、初めは快適に思えるけれども実際には否定的な関係に、徐々にそして知らぬ間に、周囲の環境によって導かれることがあるかもしれません。そのような時には、そのパターンを壊し、精神的に不毛に過ごす時間を意識的に制限する、意志の特別な努力が必要です。もちろんそれは、いつも簡単にできることではありません。罪悪感を感じたり、自分が高慢で傲慢であるようにさえ感じるかもしれませんが、その一方で、豊かで人生を高めてくれる、とても多くの体験が私たちを待ち受けているのに、魂を鈍らせてしまうような状況で時間を無駄に費やすのは全くばかげたことです。
「付き合っている仲間を見ればその人の人柄がわかる」とは昔からよく語られている言葉です。とても素朴な知恵ではありますが、そこには真実の基本的な要素が含まれています。人は、その人が選ぶ仲間によって、多くの場合、ある程度判断できるというのは当然のことです。愚かな関わり合いや付き合いを長引かせればそれだけ、一緒に時間を過ごしている人に似てくることが多いということもまた、自明の理です。ですから、折々に自分の人間関係を振り返って、「このような人たちに自分はなりたいのか」と自らに問うことをお勧めします。もし答えが「いいえ」であれば、状況を変える良い機会であることは確かです。
真の友人と興味深い仲間は、人生において重要な影響を及ぼします。彼らを通して私たちは自分自身を発見し、自身の性質の中の最良のものを引き出すことができるのです。そしてその人間関係のおかげで、私たちは、価値ある何かをお返しすることができるようになります。前向きで有益な、喜びにあふれた友人関係は、人生という旅において最も重要で印象的な場面のひとつです。ですから、素晴らしい友人関係は天の贈り物であり、それを無駄にしないことは、私たちの精神面の発達に欠かせません。
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