こんにちは、バラ十字会の本庄です。
東京板橋は、すっかり暖かくなりました。モッコウバラやハゴロモジャスミンが満開です。
いかがお過ごしでしょうか。
皆さんの中には、直接見たことのある方が、きっといらっしゃることと思いますが、エジプトのギザ高原の三大ピラミッドのすぐ近くにあるスフィンクスは、実に巨大です。体長は74メートル、高さ20メートルほどだそうです。
人間の頭と動物の体を持つスフィンクスは、さまざまな文化に見られるので、ギザのこのスフィンクスのことを、以下では大スフィンクスと呼ぶことにしましょう。
調べてみたのですが、大スフィンクスは謎だらけです。
写真を見てください。このスフィンクスの姿は、人間の頭とライオンの胴体の組み合わせのように思われますが、私には、胴体に比べて前足が、なぜか特に大きく強調されているように感じられます。
三大ピラミッドのうち中央にある二番目に大きいピラミッドは、エジプトの第4王朝(古王朝時代)のカフラー王(紀元前26世紀頃)のものだとされており、第2ピラミッドと大スフィンクスを地上でつなぐ、参道のようなものが発掘されています。
そこで、このピラミッドもカフラー王が命じて造らせたものであり、大スフィンクスの頭は、カフラー王を模したものだと一般には考えられています。
動物界で敵なしのライオンの体とファラオの頭部を組み合わせた壮大な像により、王の権威を広く誇示したのだとされています。しかし、カフラー王の顔とは全然似ていないという意見の人もいます。
一方で、大スフィンクスは黄道十二宮の象徴であるという説もあります。つまり、スフィンクスは人間(みずがめ座)の頭、牡牛(おうし座)の体、獅子(しし座)のかぎつめのある前足、鷲(わし、さそり座)の翼の組み合わせだというのです。
さそり座は、古代では鷲で表されていたのだそうです。メソポタミアや古代ギリシャのスフィンクスには鷲の翼があります。しかし、現在の大スフィンクスには翼は見られません。風化で失われてしまったのでしょうか。
黄道十二宮のすべての星座には、四大元素が配されています。みずがめ座(Aquarius)は空気を象徴し、おうし座は土(Taurus)を象徴し、しし座(Leo)は火を象徴し、さそり座(Scorpio)は水を象徴します。
図を見ると分かりますが、この4つの星座は黄道上で90度ずつ離れています。占星術では、季節の節目、不動(固定)宮にあたるということです。
ギザの大スフィンクスは古代エジプト哲学の四大元素(空気、土、火、水)を象徴しているというこの推測が、とても有力なように私には感じられます。
古代エジプトや古代ギリシャの哲学では、四大元素は極めて重要な意味を持っていました。
参考記事:『五大と四大元素について』
大スフィンクスは、石灰岩でできています。しかし別の場所から運ばれたのではありません。
このスフィンクスが位置しているのは、石灰岩の採石場の窪地の中央です。まず、スフィンクスの周囲の石灰岩が取り除かれ、中央に残った地層にスフィンクス像が彫られたと考えられています。
化石や地層の調査から、大スフィンクスの周囲から取り除かれた石灰岩のブロックが、隣接する「スフィンクス神殿」と呼ばれている神殿の建設に使われたことが判明しています。
写真を見ると分かりますが、大スフィンクスを構成している地層には固いところと柔らかいところがあり、風化によって形が層状にでこぼこしています。
この風化の進み具合から、このスフィンクスが造られたのは、エジプトに王朝ができるはるかに以前だったのであり、三大ピラミッドは、大スフィンクスがあった場所に後から建てられたのだという説を唱えている人もいます。
写真を見ると分かりますが、大スフィンクスの両足の前には、高さ3.6メートルの花崗岩の板が置かれています。この石版は、第18王朝(新王朝時代)のトトメス4世(紀元前15~14世紀)によって建てられたものです。
トトメス4世が真昼に大スフィンクスの陰で休息したときに、ハルマキス=ケペリ=レー=アトゥム神から王位を授けられた夢を見たことが、この石版に書かれています。
ケペリとはフンコロガシによって象徴される日の出の神、レーは太陽神ラーの別名で正午の太陽の神、アトゥムは夜の太陽の神で、ハルマキスはこの3神が習合した(再解釈によって同一とされた)神です。
つまり、新王朝のこの時代、エジプトでは太陽神が信仰されており、太陽神がファラオに権力を与えると考えられていたことと、大スフィンクスが太陽神信仰と深く関わっていたことが分かります。
古代エジプトのスフィンクスは古代ギリシャに伝わり、ギリシャ神話の一部になりました。テーバイは、アテネやスパルタと紀元前4世紀頃に覇権を争った強大な都市国家であり、ギリシャ神話の重要な舞台になっています。
テーバイは女神ヘーラーによって送り込まれた怪物スフィンクスに悩まされていました。このスフィンクスはピーキオンという山の頂上に住み、ライオンの胴体、人間の女性の顔と、鷲の翼を持ちます。そして旅人に「朝には四つ足、昼には二本足、夜には三つ足で歩くものは何か」というなぞなぞを出し、間違って答えた者を喰らっていたのだそうです。
ギリシャ悲劇で有名なテーバイ王のオイディプース(エディプス)は、この謎を解くことでスフィンクスを退治したとされています。
大スフィンクスやピラミッドのような古代の遺物に対して、伝統的な調査だけではなく、最新のテクノロジーを用いた調査が、近年行われるようになっています。
少し前のことになりますが、たとえば当会のバラ十字古代エジプト博物館(米国カリフォルニア州サンノゼ市)では、シリコン・グラフィックス社(SGI)とスタンフォード大学との協力で、子供のミイラのX線調査が行われました。
参考記事:『子供のミイラ「シェリット」の調査』
当会の研究によれば、3大ピラミッド、大スフィンクス、古代ギリシャの演劇には、当時の神秘学派と深い関連があります。
大スフィンクスは当時の神秘学派の守り神で、学派の入門儀式で重要な役割を果たしていたのであり、大スフィンクスと三大ピラミッドは地下通路でつながっていたという言い伝えがあります。
最新のテクノロジーによって、いずれこのことが確かめられるときが来るのではないかと想像すると、とてもワクワクします。
以上、スフィンクスにまつわる言い伝えとさまざまな謎をご紹介してきました。
最後までお読みくださり、ありがとうございます。
では、この辺りで。 またお付き合いください。
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