バラ十字会日本本部の本庄です。こんにちは。
台風が過ぎて、また暑さが戻ってきました。体調に気をつけて過ごしていきたいですね。
今日は終戦の日です。そこで、多少重たい話題なのですが、「人間とは何?」という疑問について考えてみる良い機会ではないかと思ったのです。
そして、この問いかけに対して、どちらも適切だと思われる、まったく正反対の2つの答えがあるように思われるのです。
あなたは、そのどちらが適切な考えだと思われますか。
鈴木さん(仮名)はこう考えています。
人間のもっとも大切な部分っていえば脳ですよね。脳は、コンピュータにかなり似ています。そして、脳を作り上げている部品は神経の細胞です。
神経細胞は、電気的な信号と化学的な信号を、別の多くの神経細胞に伝えます。そして、ある神経細胞が、別のいくつかの神経細胞から信号を受け取ると、それらの信号から“計算”が行なわれ、その結果が、さらに別の神経細胞に伝えられます。どの神経細胞がどの神経細胞にどの程度の信号を伝えるかは、経験という学習によって変化していきます。
このような神経細胞のネットワークによって脳の働きが作り上げられています。そして、コンピュータ上でこのネットワークをまねたプログラムを作ると、チェスや将棋を指す人工知能を実際に作り出せることが分かっています。
ですから、人間の思考というのは、突き詰めて言えば、脳の中の電気と化学物質の動きでしかありません。また、人間の記憶というのは、ある神経細胞がどの神経細胞と、どのように接続されているかにあたります。
こう考えると、人間の心というのは脳とその働きにすぎず、物質や電気などのほかに、物理学や化学では扱わないような、何か特別な非物質的な要素が関係しているわけではありません。
物質や電気がどのように動くかは、物理学の法則によって定められています。もちろん、人間の脳はあまりにも複雑ですし、現在の状態を正確に測定することはできませんので、ある状況に置かれたときに、ある人が将来どのように行動するかを計算することは実際にはできません。
しかし原理的に言えば、物理学の法則によって、現在の脳と体の状態と周囲の環境が同一であれば、次に人間が取る行動は同じなのであり(正確に言えば、確率的に同じなのであり)、自分の意志で自分の行動を選ぶことができるとされる、いわゆる“自由意志”は、単なる思い込みであると言わざるをえません。
ある人が死を迎えると脳は働きを失います。ですからこのとき、その人の心は失われます。もちろん、その人に子供があればその存在や、他の人や世の中に与えた影響などは残りますが、個人としてのその人の意識は、その時点で完全に終わりとなります。
さて、大石さん(仮名)は、次のような別の考え方をしています。
人は、体と魂の組み合わせでできているのだと思います。体と魂が互いに影響をおよぼし合っている結果として、人の心が生じています。たとえを使って言うならば、水面、つまり水と空気の間にできるさざなみのようなものです。
現在の物理学者はまだ見つけてはいないようですが、魂の働きの影響は、今後の物理学者が発見することになるのでしょう。
体は魂の乗り物です。魂が体に宿ると、この世界でその体を使ってどのような行動をするかを、魂は選ぶことができます。つまり、そこには自由意志が生じます。
魂は、ふさわしい行動を選ぶことも、そうでない行動を選んでしまうこともあります。そしてその結果を体験して、魂は学びを得ることができます。ですからこの世界は学校に似ています。
人が死を迎えると、魂は体から離れていきます。そして、いわゆる“あの世”に行きます。そして魂は、以前に亡くなった親しい人たちと暮らし、直前の人生を反省し、次回の人生の計画を立てて、しばらくすると、再びこの世に戻ってきます。
そのときは、まったく新しい赤ちゃんの体の中に自分がいるのを発見することになります。性別も現在と同じであるとは限りません。今の国にふたたび産まれることもあるでしょうし、別の国に産まれることもあるでしょう。
このようにして、魂は多くの人生で学びを重ねて、完全な状態に少しずつ近づいていくのでしょう。
いかがでしょうか。あなたの考えは、この2人のどちらに近いでしょうか。
ちなみにこのテーマは、当会が開講している神秘学の通信講座で、細かく検討される題材のひとつになっています。しかし、あなたに押しつけようとする何らかの考えが当会にあるわけではありません。そうではなく、多数の思想家の考えや、医学的事実や、関連するさまざまな事例が、受講者が自身で考えるための材料として提供されます。
最初に述べたように、鈴木さんの考えと大石さんの考えは、まったく異なる2つの意見のように私には思えるのです。そしてそのどちらを選ぶかで、私たちの人生に対する心構えというか、望ましい生き方だと考えることが、かなり変わってくるのではないでしょうか。
あるいはもしかしたら、この2つの意見がおおむね両立するような、優れた総合的な見方があるのでしょうか。
今回ご紹介したことが、あなたの意義深い思索のきっかけになれば、心から嬉しく思います。
それでは、また。
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