投稿日: 2022/07/01
最終更新日: 2022/08/08

こんにちは、バラ十字会の本庄です。

東京板橋も、全国の他の多くの場所と同じように、猛烈に暑くなっています。ベランダが、まるで軽く熱したフライパンのようです。育てている草花が、毎朝、水を欲しがっています。

いかがお過ごしでしょうか。

さて、当会の神秘学(mysticism:神秘哲学)の通信講座で学び始めた人たちに、その動機を聴いてみると、さまざまな答えが返ってくるのですが、その中のひとつに、「この世界の正体というか、本当の姿を知りたいのです」というものがあります。

この思いは、他の人に説明するのが難しい点があります。というのも、この世界は、まさに見ているのだから、見ている通りのものだとも言えるからです。

この見方は、少し難しい哲学用語になりますが、素朴実在論と呼ばれています。世界はまさに見ているとおりに、実際に存在しているという考え方です。

ここで、素朴実在論とは違うどのような見方があるのかを理解するために、米国の現代の哲学者トマス・ネーゲルが発案した「コウモリであるとはどういうことか」という思考実験について考えてみましょう。

コウモリ(イラスト)

思考実験とは、頭の中で考えるだけの実験のことですので、何の用意もなくても、今すぐここで行うことできます。

コウモリは高等生物ですので、きっと人間ほど複雑なものではないとは思いますが、初歩的な意識を持っていることでしょう。「ああ、暑い夏だ」、「きれいな青空だな」と私たちが感じるような意識です。

コウモリは暗闇を上手に飛ぶために、自分の口から超音波を発して、周囲の物体からのその反射をとらえて、世界を知覚しています。

それは、私たちが物体を見るときに、その物体を照らしている太陽や照明の光の反射によって、その物体を知覚するのとよく似ています。

さて、あなたがコウモリになったところを思い浮かべてください。あなたにとって世界は、どのようなものになるでしょうか。

あなたは世界を見ているのでしょうか、聴いているのでしょうか。

世界は音の集まりなのでしょうか。それとも、ある光景として、世界のことを感じているのでしょうか。

いずれにしても、私たち人間の感じている世界とは、ずいぶんと異なる世界であることが想像できるのではないでしょうか。

犬と女の子

この思考実験によって、感覚器官の違いによって、世界が違うあり方になるということが理解できます。

つまり、私たちは世界の本当の姿ではなくて、世界の感覚によってとらえることのできる姿を知覚しています。

また、感じ取ることができない振動は、その生物にとって存在しないのと同じことですから、感覚器官の制約によって、私たちは世界の一部を知っているだけだということもはっきりします。

実際に、他の生物が知覚することのできる超音波も、赤外線も紫外線も、私たちは感じることができません。

犬は、人間に感じることができない犬笛が発する超音波を知覚することができますし、人間より100万倍ほど臭覚が優れていると言われます。

ミツバチは紫外線を感じることができ、ある種の花はミツバチを引き寄せるために、紫外線を目印として用いています。

これらの生きものだけでなく、ほとんどすべての生きものは、きっと人間とはまったく異なる世界を知っていることでしょう。


ミツバチと花

また、天文学の世界では、さまざまな電磁波や、素粒子や重力波などを検知して天体を観測することが行われています。

これらの検出機器によって、宇宙の今まで知られていなかった姿が明らかになっています。それは現代になるまで、人間には知られることのなかった宇宙の姿だと言うことができます。

しかし、これらのすべても、世界の本当の姿ではなく、知覚したり観測したりすることのできる姿でしかありません。

別の興味深い事実があります。300年ほど前のドイツの哲学者エマニュエル・カントが明らかにしたことですが、人間は感覚器官によって得た情報を、すべての人に共通なある形式をあてはめることによって理解しています。この形式の中には、たとえば時間や空間が含まれています。

つまり、時間や空間は世界に実在しているのではなく、ものごとを整理するために、人間の心が作り出しています。

(ちなみにこのことは、当会の講座では、人間の深層心理のしくみとともに、学習を始めた直後に紹介されます。瞑想とは何かを理解するために役立つからです。)

らせん状にゆがんだ時計(時間と空間のイメージ)

それではここで、時間と空間がない、自分がどんな生きものであるかにも関係のない、世界の本当の姿を想像してみてください。

そんなことができるのでしょうか。

以上に説明してきたような、世界の本当の姿を知る上での妨げは、少し難しい説明になりますが、知覚の二元性ということが原因になっています。

つまり、何かを知ろうとしている自分という主体(subject)がいて、知ろうとしている対象(object)があり、この2つが別々であるので、世界を知ろうとするときに、私たち生きものは、感覚器官を使います。

そのため現代の心の哲学者からは、怪談のように恐ろしい次のような思考実験さえ発案されています。

「自分とは実は、培養液に満たされた水槽に浮かんでいるむき出しの脳なのだと考えてください。あなたの感じている世界は、美しい風景も、レストランで味わったおいしい食事も、親しい友人も恋人も、脳波をコントロールするように接続された電極によって、超高精度のコンピューターから送り込まれているバーチャル・リアリティーなのです。」

こう言われても、私たちには反論できないと思われるところが、この思考実験の面白い(ぞっとする)ところです。

参考記事:「水槽の脳

ヴァーチャル・リアリティー(VR)を用いて研究する人

ではもし、知覚の二元性を超越することができ、感覚器官を使わずに世界を知ることができたとしたら、どうなるでしょう。

そんなことができるのでしょうか。

はい。古代ギリシャの哲学者の時代から、それが可能なことが知られています。知覚の二元性を超越した体験は、いわゆる「神秘体験」と呼ばれています。

時間と空間を超える神秘体験というと、何か極めて特別なことに感じますが、初歩的な段階であれば、誰でも体験することができます。

たとえば、リラックスして、あなたのお好みの音楽に完全に没頭してください。

時間も空間も、自分もなくなったように感じないでしょうか。

このとき、音楽とあなたは一つであり、主体と対象に分かれてはいません。

音楽を聴いたときに限らず、何かに没頭して、このような体験をしたことが、あなたにも何度もあるのではないでしょうか。

これは決して気のせいではなく、人間の心の性質に由来しているということが、今までの説明から、ある程度ご理解いただけるのではないでしょうか。

宇宙(神秘体験のイメージ)

バラ十字会の哲学では、神秘体験は、3つに分類されています。直観(Intuition)、インスピレーション(Inspiration)、啓示(Illumination)の3つです。英語やフランス語ではいずれも「I」で始まるので、「3つのI」と呼ばれています。

音楽に完全に没頭したときの体験は、このうちの直観体験にあたります。

当会の通信講座では、さまざまな実習に段階的に取り組んでいくことで、直観体験だけでなく、お望みであれば、他の体験もできるようにカリキュラムが組まれています。

しかしこれらの神秘体験は、単に興味を満たすことを目的にするのではなく、より充実した意義ある生き方をすることに役立てるのが望ましいことです。

以上のことにご興味をお持ちの方は、下記のURLで最初の月の教材を手に入れてください。(学習継続のお申し込みがなければ、2ヵ月目以降の教材が送られることはなく完全に無料です。)

★ 神秘学の通信講座「人生を支配する」、無料体験のご案内

https://www.amorc.jp/free-trial/

最後までお読みくださり、ありがとうございます。

では、今回はこの辺りで。

またお付き合いください。

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