こんにちは、バラ十字会の本庄です。
東京板橋では今週桜が開花しました。本格的な春ももうすぐそこですね。
いかがお過ごしでしょうか。
さて、今回の話題は「欲求」です。当会のフランス本部の代表が、このテーマについての文章を自身のブログに先週書いていますので、ご紹介します。
記事:「欲求について」
◆ 欲求とは何か
欲求とは、言葉の定義から言えば「何かを手に入れたり、望みを満たしたりしたいと思う心の傾向です」。人間が生涯の間にいだく欲求の種類はあまりにも多く、人それぞれで異なるので、そのすべてを列挙することはとてもできないように思われます。さらに、他の種類に比べて極めて強力で重要であるため、欲求というよりは「必要」と呼ぶ方がふさわしい欲求もあります。たとえば食欲は、生命に関わる必要から生じるものなので、タバコを吸いたいという欲求と同等なレベルにあるということはできません。喫煙の欲求は、当人が自分で作り出し習慣になった欲求にあたります。
◆ 基本的な欲求
西暦4世紀のギリシャの哲学者エピクロスは、人間の欲求を大きく3つに分類しました。自然で必要な欲求(食べる、水分を取る、眠るなど)、自然で必ずしも必要でない欲求(性欲、スポーツをする欲求など)、無益な欲求(所有したい、有名になりたい、権力を行使したいという欲求など)です。精神分析学者のジークムント・フロイト(1856-1939)は、人は2つの主な欲求に支配されていると考えました。性的な欲求と承認の欲求です。現代の心理学者は、4つの本質的な欲求を列挙しています。健康の欲求、愛の欲求、繁栄の欲求、個人として成長することへの欲求です。実際のところ、人間には多種多様な欲求があり、それは望み、衝動、必要、嗜好などと同じほど多種多様です。
◆ ポジティブな欲求とネガティブな欲求
欲求を2つの大きなカテゴリーに分けて考えるのが有益であるように私には思えます。それは、ネガティブな欲求とポジティブな欲求です。ネガティブな欲求とは、自分自身の誠実さ、尊厳、健康を損なったり、他の人たちのそれを損なう欲求です。たとえば、多くのタバコを吸えば、遅かれ早かれ、程度はさまざまですが健康への悪影響が生じます。権力への欲求は、多くの場合、他の人を犠牲にして満たされます。ポジティブな欲求とは、それらとは反対に、自身の体や心の望ましい状態、あるいは他の人のそれらに役立つ欲求です。自然の中を散歩したいという欲求は、自分自身にプラスに働きます。誰かに同行してもらいたいという欲求も有益に働きます。
◆ 仏陀の欲求についての考え方
おそらくご存じのことと思いますが、人間の幸せを妨げているのは欲求であると仏陀は唱えました。なぜなら、欲求によって人は依存と束縛の状態にとらわれるからです。そのため仏陀は、あらゆる欲求から離れていることを提唱しました。仏教が元々禁欲主義の方針を採用していた理由はここにあります。仏教の信仰に私は深い尊敬の念をいだいていますが、しかし私の考えでは、これは現代人である私たちには、少し度を超えた要求であるように思えます。先ほどお話ししたように、愛したい、助けたい、与えたい、分かち合いたい、役に立ちたい、何かを作り出したい、自分を進歩させたいなどのポジティブな欲求があると私は考えています。これらの欲求は、自分と他の人の幸せのために役立つので、抑制する必要はないのではないでしょうか。
◆ 『欲求の人』
伝統マルティニスト会(訳注)の思想の元になった哲学者ルイ・クロード・ド・サン・マルタン(Louis-Claude de Saint-Martin, 1743-1803)には『欲求の人』(Man of Desire)という題の著作があります。彼は「欲求の人」というこの言葉で、自身を完成させて普遍的英知(Wisdom)の状態に達することを望んでいる神秘家の心の状態を表しています。彼によればこの欲求は、神聖な〈統一〉(Union)をなし遂げたいという望みにあたり、人が人生でいだく欲求の中で最も貴い望みにあたります。彼にとってこの〈統一〉は〈再統合〉、つまり人間のソウル(soul:魂)が普遍的ソウル(Soul:宇宙の魂)へ完全に復帰することに他なりませんでした。
訳注:伝統マルティニスト会(The Ordre Martiniste Traditionnel):「知られざる哲学者」(unknown philosopher)という異名を持つルイ・クロード・ド・サン・マルタンの哲学をもとに結成された神秘学派。バラ十字会AMORCが20世紀初頭から後援している。
セルジュ・トゥーサン、バラ十字会AMORCフランス語圏本部代表
著者セルジュ・トゥーサンについて
1956年8月3日生まれ。ノルマンディー出身。バラ十字会AMORCフランス本部代表。
多数の本と月間2万人の読者がいる人気ブログ(www.blog-rose-croix.fr)の著者であり、環境保護、動物愛護、人間尊重の精神の普及に力を尽している。
ふたたび本庄です。
ずいぶん昔のことになりますが、探査機「はやぶさ2」が目標の小惑星にタッチダウンしようとしているとき、「自己超越の欲求」について記事を書きました。今回の話題と関連がありますので、ご興味のある方は下記をお読みください。
下記は、前回のセルジュ・トゥーサンの記事です。
では、今日はこのあたりで。 また、お付き合いください。
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