Incense – A Scent of Heaven

シボーン・ラッセル

By Siobhan Russell

お香(線香)

現在のグアテマラにある、古代マヤ文明の都市ティカル(Tikal)の幅9メートルほどの土手の道を歩いていたときの思い出ですが、ツアー・ガイドの方が、空高く伸びている大きな立派なパンヤの木のあるところに、私を呼び寄せました。木の根元には、スグリの実ほどの大きさの赤いイチゴのような実がなっていました。ガイドの方はその実を2つ手に取って、心地よい甘い香りをかがせてくれました。その実はマヤでは「ポム」(Pom)、アステカでは「コパル」(Copal)と呼ばれていたそうです。

お香(incense)が太古の昔から使われていたことは知られていますが、その起源は推測するよりほかにありません。野営のためにたき火をしていた古代の人々が、気分を和らげてくれたり、安らぎを醸し出し、うっとりさせるような香りがする木や草があることに気がついたのかもしれません。もしかしたら私たち現代人は、たき火の香りを嗅いでいるときに、8万年以上前の最初期の祖先の世界に連れ戻されるのかも知れません。古代の祖先たちは、たき火を前にして、亡くなった先祖の霊の住む世界に思いを巡らしたり、将来のできごとを知ろうとしたり、人の能力を超える力を求めたりしたことでしょう。

はるか太古の人間にとって、嗅覚は、現代の私たちよりもはるかに洗練された、重要な感覚だったに違いありません。低木の茂みに一人で取り残されたとしても、次の食べものがどこにあるのかを嗅ぎ当てることができれば、間違いなく、現代人よりもたやすく生き延びることができたことでしょう。また、危険な場所からできるだけ早く、静かに逃げなくてはならないという状況がたびたび起こり、風上にいる危険な捕食者の存在を嗅ぎ分けることができることは、生き延びるために決定的に有利だったことでしょう。ですから、現在の哺乳類のほとんどにとってそうであるように、太古の祖先にとって嗅覚が、すべての五感の中で最も重要だったことは確実です

パンヤの木
パンヤの木

お香の始まりにさかのぼる

Fast Forward

非物質的な世界についての、さまざまな種類の意識が生じ始めた数万年前にさかのぼってみましょう。先史時代には、祖先崇拝のための儀式や万物には霊が宿っているという考え方が生じましたが、そのほとんどについて今日では知ることができません。その後、多神教が発達し、明確に宗教と呼ぶことができるさまざまな信仰が発生して数千年にわたって進歩し続けました。神々には人のような感情があり、人間を助ける力も邪魔する力もあるとされたため、神々は、愛したり敬ったりすべきであると同時に、恐れなければならない存在であるとされていました。

たとえば、生け贄の動物を戸外の祭壇で焼くときの刺激的で食欲をそそる匂いや、かぐわしく心地よいお香の香りなど、人間が喜びを感じるものは神々も喜ぶと考えられていました。神々は結局のところ、人間の姿に似た何かだと想像されていたのであり、強大な力と活力を持つと通常は考えられていたものの、崇拝する側の人間よりも優れた振る舞いをすることは、あまりないとされていました。やがて、神々は崇拝する人のために何らかのことをしてくれるのであるから、人間が喜ぶような貴重な品々で、その好意を保っておく必要があるという考えが広がり、香りのよい木や樹脂が、それらの品々の一部になりました。

さまざまな厳粛な儀式が行われ、香りの良い特別な食べ物や、薬草(ハーブ)、樹皮、草花などが神々に捧げられました。山や岩などの自然界の要素、大空、大地、星々などが、敬うべき超自然的な存在だとされ、それらの神々への崇拝のために、ある場所が聖なる場所として捧げられるときには、香りのよい花々が地面にまかれたり、祭壇の上に置かれたりしました。そうすれば、崇拝する人々の願いを、神々がより良く聞き入れてくれると考えたのでした

心地よい香りがするものを、定められたやり方で用いることが最初に行われたのは、ほぼ間違いなく宗教の儀式でした。死者の体には香油が塗られ、花で飾られました。香油は他の材料と混ぜ合わされて、香水のように用いられました。古代のペルシャ人は、悪を行った人は、死後に悪臭が立ち込める場所に送られるという罰を受けると考えていました。つまり、生きている人間にとって不快なものは、生前に犯した悪行に対する報いとして、死後は、なおいっそう不快になると考えられていたのです。キリスト教徒の一部は、罰の一種として地獄には悪臭のする蒸気や煙が存在すると考えています。それは、古代ペルシャ人の考え方とよく似ています。これらのことから、お香は以下のように用いられていたことが分かります。

  • さまざまな宗教儀式の重要な要素として
  • 悪臭や不快な臭いを消すための方法として
  • 悪魔や悪霊を撃退するための手段として

お香は、香りを発する芳香性の物質と、特定の形に成形するための可燃性の結合剤を混ぜて作るのが一般的です。お香の原料となる芳香性の物質は、多くの場合に植物性であり、樹脂、樹皮、種子、根、花などさまざまな種類があります。バラ十字会ではモスローズ(コケバラ)のお香がよく用いられていますが、これも植物性のお香の一例です。

楽園のイメージ

Visions of Paradise

ユダヤ教、キリスト教、グノーシス派の文献には、楽園では良い香りがしているという考えが見られます。神々の住んでいるところは、嗅覚にとって心地よい場所であるに違いないと考えられていたのです。死後に快適な状態が得られることが、ある種のご褒美だと考えられているとも言えます。

お香は古くは、神々への供物として主に用いられていましたが、実用的な目的、象徴的・神秘的な目的でも用いられていました。実用的な目的としては、火葬の際に香木を用いて、遺体が焼かれるときに出る強い臭いを打ち消すという用途があり、特に暑い地域で行われていました。今日でも、たとえばインドやスリランカなどでは、以前と同じ香木を使用する慣習があるため、どの火葬の儀式でも同じような香りがします。この香りは強いため、一度体験すると、近くで火葬が行われていると必ず分かります。実際のところ、この香りは強烈すぎるほど甘い香りです。

香木
特に暑い地域では、火葬の際に香木を用いて、遺体を焼くときに出る強い匂いを打ち消していた。インドやスリランカなどでは現在も行われている

お香の象徴的な用途は、芳香のある草や木や、樹脂を焼いた時に立ち昇る煙に関連していました。煙は祈りの言葉を神々のところまで運び、神々はその香りを喜ぶと考えられていました。また、死者の魂は、自分のために焚かれた香の煙とともに天国まで昇っていくと信じられていました。古代の人々が、自分という有限で物質的な存在と、神々が住んでいると考えていた目に見えない領域、つまり無限なるものとの間に、何らかの具体的な結びつきを求めていたのであり、お香の煙がその役割を果たしていたということは、心理学的に興味深いことです。つまりお香の煙は象徴的なものではなく、祈りを神々に伝えるための実際的な媒体であると考えられていたのです。

古代エジプトのお香

Incense in Egypt

エジプトでは、神殿の奥深くにいる神々にお香が供え物として捧げられました。神々の像が神殿から出る特別な行事では、「香の煙に乗って魂が天上に引き上げられる」ようにと、お香が焚かれました。お香が宗教的な目的で用いられたという最古の記述は、おそらく第11王朝のファラオ、サンクカラ・メンチュヘテプ3世(紀元前2004年~1992年頃)の布告に登場するものです。彼はお香を手に入れるために遠征隊を送り、砂漠を横断し「お香の国プント」まで紅海を船で南下するように命じました。この国は現在のソマリアの北部にあったと考えられています。

古代エジプトのあらゆる神殿では、敷地内や周辺に、お香の原料になる木や草が植えられていたと考えられています。ルクソールのナイル川西岸のデル・エル・バハリには、女性ファラオのハトシェプストの葬祭殿がありますが、そこを訪れたことがある人は、残された優雅な遺跡に加えて、プントの国への遠征によって持ち帰られた香木が、傾斜した通路の正面と両脇に植えられていたという話が葬祭殿の壁に記されているのを見ることができます。

お香は古代エジプトの絵画にも登場する。お香を捧げているラメセス3世。
お香は古代エジプトの絵画にも登場する。お香を捧げているラメセス3世。
お香の使用が示されている『死者の書』の一部(左端の人)
お香の使用が示されている『死者の書』の一部(左端の人)

ナイル川の西側、現在のルクソールの対岸にある、他の王家の葬祭殿の壁には、お香を捧げる王たちの姿が描かれています。「王は片手に釣り香炉を持ち、もう片方の手で小さな球状の香をそれに投げ入れ、神がそれを受け取り、王に長寿を与えてくれるように祈っている」。葬儀の際に、お香は故人を清めるために用いられました。小さな香の粒が、口、目、手に二回ずつ捧げられました。一度目は遺体を北に向けて、二度目は遺体を南に向けて行われました。

エジプトの人々は、神々が良い香りをしていると考えていました。女神イシスは素晴らしい香りをしていて、それを他に与えることができると考えられていました。この香りには、癒しの効果だけでなく、ご利益をもたらす効果もあるとされていました。オシリスは、自分の香りとそれに伴う力を、彼が愛する誰にでも与えることができると考えられていました。

古代エジプトでは、香の原料を輸入して調合する商売が、とても栄えていたようです。膨大な量の香が用いられていました。第20王朝のファラオ、ラムセス3世の治世の31年間で、193万8766個のお香が使われたという記録があります。おそらく、あらゆる神々に香りが捧げられたのでしょう。神々の像にもまた、香りが付けられていました。

古代エジプトの香炉
古代エジプトの香炉

他のさまざまな文化のお香

Incense in Other Cultures

ユダヤ人の哲学者、アレクサンドリアのフィロン(紀元前20年頃~50年頃)は、ヘブライのお香の4種類の成分は四大元素である土、空気、水、火を表しており、したがって宇宙全体を表現していると述べています。古代ギリシャの歴史家ヘロドトス(紀元前485~423年)は、バビロニアでは天と地の神であるマルドゥークの偉大な祭壇に、年に一度の祭りの際に、1000タラントの乳香(訳注)が捧げられたと述べています。ヘロドトスはまた、「レンガの上に香が置かれている土地」について述べています。これはおそらくバビロンのことを指しています。バビロンの大きな建築物の多くは、泥のレンガで造られており、それが瀝青で仕上げられたり、つなぎ合わされたりしていました。瀝青とは、石油が豊富な土地で自然に湧き出るアスファルトに似た物質で、古代にお香の原料として用いられました。

瀝青のお香は、祈りや神託の予言が行われる儀式の際に焚かれました。それによく似た家庭の儀式では、マルドゥーク神や、太陽、月、星々などへの捧げものとして、レンガの上でこのお香が焚かれました。

(訳注:乳香(frankincense):古代エジプト時代にすでに、没薬(後述)とともに使われていたお香の原料。カンラン科の植物の樹脂であり、ミルクがしたたって固まったような色と形をしている。今日でも高級香料として用いられている。フランキンセンス。)

古代のヴェーダの僧侶は、香の主な材料として白檀(ビャクダン)(訳注)を用いていました。神殿や家庭でも神聖な儀式を行う際に、彼らはこの香を用いていました。白檀や他の香木が、神聖な木として火に入れて燃やされました。インドでは現在も、火葬の際には同様のことが行われています。ガンジス川では、ガート(訳注)に火葬用の薪が積まれると、香木の香りが漂ってきます。ヒンドゥー教の文学作品『ラーマーヤナ』では、詩人である編纂者自身が、祖父の都に厳かに入っていくときの様子が描写されています。「町は花輪で飾られ、乳香と甘い香りの香水の匂いがしていた」。しかし、これらのお香はインドの原産ではなく、主にアラビアから持ち込まれたものでした。

(訳注:白檀(sandalwood):ビャクダン科の常緑樹。インドネシア原産。皮、芯材、根がお香、香料、薬用に用いられる。)

(訳注:ガート(ghat):ガンジス川の川岸に設置される、沐浴や葬儀のための階段。)

仏教の寺院でお香が焚かれている様子
仏教の寺院でお香が焚かれている様子

チベットの人々も、ローマ・カトリック教会と同様に、儀式のためにお香を使用していました。チベットの僧侶は、カトリック教会でも行われているように、お経を唱えながら、祭壇をお香で清めていました。チベットではまた、僧侶の入門式や僧院での日常の儀式でも、お香と吊り香炉が使われていました。初期の仏教では、形式的な儀式や式典を行うことは、望ましいとは考えられていませんでした。その後、仏教のある一派がさまざまな式典を発達させ、仏教の教えには多様性がもたらされ、教団の分裂が生じました。後の時代になると、それらの儀式が広く行われるようになりました。仏像の前には、香水と花が置かれます。

有名なヴェスヴィオス火山の噴火で亡くなった古代ローマの哲学者、大プリニウス(西暦23~79年)は、著作の『博物誌』に、ギリシャの人々は「生け贄から煙の柱となって立ち上る杉(cedar)と柑橘類の木(citrus)の匂いしか知らなかった」と書いています。彼は、香料の大部分が神聖であると考えられていたアラビアの樹木から作られていたと付け加えています。時代が経つと、さまざまな儀式でお香が広く用いられるようになりました。

フェニキア人は、アルベラの戦い(紀元前331年)の後、交易が目的でアレクサンダー大王のインドへの遠征に同行しました。「彼らは荷物を運ぶ小舟に没薬(訳注)の樹脂を積んだ。その量があまりにも多かったので、その地区一帯が芳香で満たされた」。

(訳注:没薬(myrrh):主に東部アフリカおよびアラビアなどに産するカンラン科の諸植物から採集したゴム樹脂。ミルラ。)

古代ローマ人の神への供物の多くは生け贄でしたが、血を流さない供物のうち最も重要なもののひとつがお香でした。お香はやがてあらゆる儀式に欠かせないものになり、高い祭壇の上や火鉢の中で焚かれるようになりました。キリスト教がローマ帝国の公式の宗教になると、初期の教会は、建物の中でも最も神聖な場所に香を焚くという慣習を受け継ぎました。現在ではお香は、カトリック教会や正教会の儀式で広く用いられていますが、初期のキリスト教の教父であるテルトゥリアヌス(西暦155~230年)はそれを非難していました。「私はお香に、ほんのわずかな価値も認めない」と彼は強く主張しました。また、キリスト教の哲学者であり、教会の教父であったアテナイのアテナゴラス(西暦133~190年)は、花やお香の甘美な香りを神は必要としていないと述べています。しかし、現在では、ローマ・カトリック教会では、入祭唱(訳注)を伴う厳粛なミサや、祝福の儀式、行進、埋葬の儀式などでお香が用いられています。また、英国国教会の多くでは、「祈りを表す象徴的な儀式」でお香が用いられています。

(訳注:入祭唱(introit):ミサの最初に歌われる賛美歌や詩篇。)

現在ではお香は、カトリック教会や正教会の儀式で広く用いられている
現在ではお香は、カトリック教会や正教会の儀式で広く用いられている

お香の種類

Types of Incense

お香に用いられる材料は、地域や製作者によってさまざまです。よく知られている香りの成分には次のようなものがあります。

  • シナモン
  • 乳香
  • 麝香(ムスク)
  • 没薬
  • パチュリー
  • 白檀

樹液や樹脂は、何千年も前から世界中でお香として用いられてきました。中東では、店や家を香りで満たすために、乳香が惜しみなく用いられています。乳香は素晴らしい香りがします。お香には可燃性の結合剤が含まれており、着火すると燃えて煙が出ます。結合剤の素材はさまざまですが、たとえば炭や木材の粉末などがあります。

匂い、香り、香気、芳香と、どのような言葉で呼ぶとしても、それを特定の反応を引き起こすために用いることができます。たとえば、リラックスを促す、眠りを助ける、集中力を増す、創造性を刺激する、やる気を高めるなどです。さらに言えば、宗教的な多くの目的や、感覚的な喜びという目的、実用的な目的のいずれにも、香りが用いられます。また、特定の香りや成分が、それ特有の目的に用いられることもあります。

お香は、料理、ペット、湿った衣類などの好ましくない臭いを隠すために、簡単に素早く利用することができます。杉(Cedar)、没薬、柑橘類の香りは、空気を”清浄にし”、爽やかさと新しい始まりを感じさせる気分を与えてくれます。香りによって、脳には著しい反応が引き起こされ、過去のできごとや人々や感情を一瞬のうちに思い出すこともあります。私たちは香りによって、古代エジプトや日本の春など、自分の記憶の貯蔵庫の中にあるあらゆるものへ思いを馳せることができます。そして、素晴らしい気分が一瞬にして訪れます。

良い香りの効果によって、脳内のセロトニン(訳注)が増加することが示されています。薬を飲む代わりに良い香りを嗅ぐと、薬に頼ることなく脳内のセロトニンの量を増やすことができ、感情の状態の改善を、副作用や常習性の危険なく行うことができます。セロトニンは天然の精神安定剤だと考えられており、睡眠、食事、消化作用を助けます。セロトニンはまた、気分の落ち込みを防ぎ、不安を和らげ、頭痛を抑えます。

(訳注:セロトニン(serotonin):脳内の神経伝達物質のひとつで、日光を浴びたり、幸せを感じると増加する。精神の安定に寄与する。)

乳香
乳香

現代におけるお香の用途

Uses of Incense in Modern Times

集中力を高めるために、お香を用いることが提案されています。仕事や勉強の際に、感情を高揚させる効果のあるお香を焚くと、集中力を高めることができます。香りは、音楽を流すよりも邪魔になりませんし、心と体に微妙で繊細な影響を与えてくれます。ですから、細部に集中することを必要とするような作業や、勉強や趣味などのパートナーとして最適です。現代のように、昼夜もなく常に活動し、しかも、さまざまな活動がたびたび中断されがちな社会では、不眠症に悩む人が増えています。ラベンダー(シソ科の植物)は、ベチバー(イネ科)やカモミール(キク科)と同様に、特に睡眠を助ける効果があります。

リラックスして心を解きほぐしたいときには、お香を焚いて、紅茶や本やゆったりとした音楽とともに、ソファでくつろぐのがお勧めです。また、お風呂に入って、照明を消して、1本か2本の線香を焚くのも良いでしょう。リラックスしたいときは、強くない香りのほうが適しており、日常生活のわずらわしさから解放された時間と空間を提供してくれます。乳香や白檀や杉(シダー)は、いずれも「心を落ち着かせる香り」であり、一般的なリラックス効果を得たいときに役立ってくれます。

ストレスや不安を軽減することは、単にリラックスするよりも一歩進んだ行いです。心拍数や呼吸をはじめとする、ほとんどすべての体の活動が抑えられるからです。まずは、あれこれ悩んだり、次から次へと手がけていることを変えるのを止めるようにしてください。そして、ストレスを軽減するためには、純度が高く上質な白檀の香を用いることがお勧めです。ラベンダーとローズマリー(シソ科)の香りも、ストレス解消に適しています。

多くの宗教で、注意力を高め、感覚を鋭敏にし、精神を高揚させるために、瞑想時にお香が広く用いられています。瞑想には白檀や蓮のお香が良く使われていますが、自分に合ったものを選んでください。瞑想の邪魔にならず、あなたを必要な場所に連れて行ってくれるものを選んでください。

香を焚くことは、公式な場合でも個人が行う場合でも、宗教にかかわる場合でもそうでない場合でも、スピリチュアリティ(spirituality:崇高な精神性)への扉を開いてくれます。お香は現在も、そして何千年間もの間、世界の多くの宗教で、特にヒンドゥー教、仏教、キリスト教で日常的に使われてきました。

お香の象徴性と研究

Symbolism and Study of Incense

不快な臭いを消すための手段や、宗教儀式での使用という実用的な用途に加えて、お香には伝統的に、神秘学や秘伝思想に関連する象徴的な意味があります。神秘学を学ぶ人にとって、お香の象徴的意味とは、その人個人の理想や心情を何らかの対象によって表したものに当たります。お香の赤熱や香りや煙は、それ自体に重要性はありません。単にお香を用いる人の思考と感情の核心を表現しているに過ぎません。

たとえば、自身の信条に対する熱意と献身は、赤熱している部分の輝きによって象徴的に表現されます。美しい香り、心地よい香りは、このうえない喜びである調和を象徴しています。そして煙は、意識の向上と、人間という有限な存在が無限の宇宙に投射されることを表しています。

お香は何世紀にもわたって世界中で使用されてきましたが、健康維持や健康増進に対して、何か効果があるのでしょうか。健康への効果についての研究は、まだそれほど数多く行われているわけではありません。入手することのできる研究結果の多くが、香の原料である乳香と没薬に集中しています。

香を焚くことは、昔から宗教的な実践と瞑想に結びついてきました。しかし、お香には心を鎮めたり、精神を活性化させる効果が実際にあるのでしょうか。2008年に細胞の培養とマウスによって行われた実験では、乳香の樹脂に含まれる化合物によって、抗うつ剤に似た反応が生じることが確認されました。さらに、この化合物に対する反応は、不安や憂鬱に関連する脳の領域で見られました。また、思いやりの感情に関連する神経受容体が活性化されました。

2017年のある研究では、乳香と没薬の樹脂から分離されたいくつかの化合物には、マウスの怒りを鎮める作用があることがわかりました。研究者たちは、樹脂から数種類の化合物を分離し、そのうちの一部が、用量に応じてマウスの怒りの反応を抑制することを発見しました。

ただしこれらの研究では、乳香の樹脂から精製した化合物を研究者が用いていることに留意が必要です。香の煙の中に、これらの化合物が含まれているかどうか、また、人間に対しても同じ反応を引き起こすかどうかについては、さらなる研究が必要です。

白檀とそれを粉末状にしたもの。よく使われるお香の原料のひとつ。白檀には心を落ち着かせる香りがあり、リラックス効果を得るためによく用いられる。
白檀とそれを粉末状にしたもの。よく使われるお香の原料のひとつ。白檀には心を落ち着かせる香りがあり、リラックス効果を得るためによく用いられる

自分で作るお香

Making Your own Incense

お香を作る人たちは、それぞれ独自の技術を持っており、その方法は伝統によって大きく異なります。しかし、自分で線香や円錐の形のお香を作ってみたいとお考えでしたら、応用できる基本的な方法があります。

まず、粉末状のお香を作るために、良質な天然素材を入手する必要があります。樹木、樹脂、薬草(ハーブ)、香辛料などから選ぶことができます。ここでは、素材の種類別に原料の例をいくつか紹介します。

  • 樹木:白檀、沈香、松、杉(シダー)
  • 樹脂:琥珀、没薬、乳香、ハイビスカスなどのフヨウ属の植物
  • 薬草や香辛料:バニラ、セージ、ジンジャー(ショウガ類)、シナモン

混合する場合には、少なくとも樹木か樹脂を1種類用いるようにします。次に、これらの材料を砕いて、燃えやすいように、ごく細かい粉末にします。できた混合物に、炭の粉末とトラガカントガム(tragacanth gum)などの結合剤を加えます。あるいは、タブノキの樹皮から作られた「タブ粉」を加えることもできます。タブ粉には可燃性があり、水に溶けます。

粉末状の混合物に、少量の蒸留水と一緒にタブ粉を加えると、円錐の形のお香や線香にすることができます。材料を混ぜるとき、水は特にゆっくりと加えてください。混合物は多少粘りがあり柔らかいぐらいが成型に良いのですが、型に入れて乾燥させることもできます。

適度な硬さになったら、円錐形や線香の形に成型していきます。芯材として竹串を使う場合には、仕上げや着色がされておらず、添加物が入っていないものを使うようにしてください。

成型できたら、放置して乾燥させます。これには数週間かそれ以上の時間がかかりますが、円錐形のものは線香状のものより長時間かかることに注意してください。円錐形のお香が乾いたかどうかは、さかさまにして、裏側の全体が同じ色になっているかを調べます。平たい部分の中央がまだ濃い色である場合には、もう少し時間が必要です。

※上記の文章は、バラ十字会が会員の方々に年に4回ご提供している神秘・科学・芸術に関する雑誌「バラのこころ」の記事のひとつです。バラ十字会の公式メールマガジン「神秘学が伝える人生を変えるヒント」の購読をこちらから登録すると、この雑誌のPDFファイルを年に4回入手することができます。

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