投稿日: 2022/06/22
最終更新日: 2022/08/08

Kiki

ディック・ポヴェイ(1921-2014)

By Dick Povey

猫はサイキックな(psychic:超感覚的な)能力を持ち、その能力を使って、ごく親しい間柄の人たちと心を通わせているのでしょうか。以下の話はすべて事実であり、このできごとによって、完全にとは言わないまでもいくつかの点では、猫にそのような能力があると私は確信するようになりました。これは、ペットのシャム猫キキの話です。

ある日の午後、家に帰り、少し疲れていると感じていた私は、寝室に行って上着を脱ぎ、衣装ダンスに掛けました。すると、ベッドの上でぐっすりと眠っているキキに気がつきました。起きているときにはいつも声をかけるのですが、この日はキキには話しかけずに、食堂で休んでいる他の2匹の猫に軽く声をかけた後に、居間に入っていきました。

居間で、私はカーペットの床に仰向けに寝転んでくつろいでいました。数分もしないうちに不思議な体験をしたのですから、完全にリラックスしていたのでしょう。そのとき、徐々に死が近づいているような感覚に襲われたのです。このような感覚は初めてでした。体の中の生命力がまるで空中に蒸発していくかのように減っていくのを感じ、それとともに完全な穏やかさと諦め、そして深い心の平安の感覚が訪れました。私はこれまでに、私たちバラ十字会員が言う「転化(transition)を通過する」こと、つまり死を恐れたことはありません。恐ろしさではなく、私はそれが美しく安らぎに満ちたあり方で起きつつあることに感動を覚えました。なんて素晴らしいのでしょう!

そして突然、自分が残して去ろうとしている人たちのことが思い浮かびました。そう、妻と子供たちです。私が以前決めていたように彼らのもとを去ることなど、まったくできそうにありませんでした。何とかしなければならないと思いました。自分を奮い立たせ起き上がろうとしましたが、そうすることができませんでした。もうすぐ最後の息をして死んでしまうことが分かっていても、私が奮い立たせようとしたあらん限りの気力を、その時の崇高な感覚が押し流してしまったのです。その感覚にあらがうことができず、どうすることもできずにいました。あと1分か2分もすれば、宇宙の究極の平安と静寂が私のものになると感じていました。

しかし、私はキキのことを考えに入れていなかったのです。視線の端に、扉とそのそばで動く何かが見えました。キキは、私のほうへまっすぐに歩いてきました。躊躇することもなく、立ち止まることもなく、きっぱりと、意図と決意とともに私に向かって大股で歩いてきたのです。彼女は私の胸の前で立ち止まって、後足で立ち上がり、前足で素早く私の胸を叩き始めました。小さくておとなしい猫が人間に応急手当をしているなんて、ばかげていると思われるかもしれません。しかし、それは現実に起こったのです。彼女は、私から静けさを振り払わなければならないことを知っていました。私は静寂を邪魔されなければならなかったし、彼女はそれを確実に実行したのです! 私は彼女の侵入に少しいらだち、去るように彼女に言いました。しかし、彼女は私をまったく無視して叩き続けました。

どうにかして、彼女に叩くのをやめさせたかった私は、やっとのことで片方の肘をついて起き上がり、キキを押しのけました。その動きによって、生命力が突然、強さと活力とともに戻ってきて、私を素早くよみがえらせたことを力強く感じました。キキは自分がするべきことをやり遂げたのです。彼女は私の命を救いました。そして、彼女はそれを知っていました。2、3秒の間、彼女は私の目をまっすぐに見ると、向き直って、さっき来たところを歩いて戻っていきました。

私は立ち上がって椅子に座り、この数分の間に経験したことに思いを巡らしました。私はまさに死の淵にいたのであり、そのことにほんのわずかな疑いもありませんでした。私が心から愛している素晴らしい生きものが、私の命を救ってくれたのです。私が寝室に戻ると、キキはベッドの上で再びぐっすりと眠っていました。あのときキキは眠っていたにもかかわらず、サイキックな促しが彼女に起こり、それによって彼女の目が覚めて私のところに向かったことと、何をしなければならないかを彼女が直観的に知っていたことを否定することができるでしょうか。ありがとう、キキ。たとえあなた自身が、あの世へと進むための大いなる入門儀式を通過したとしても、ずっとあなたに宇宙の祝福がありますように。いつの日か私も、あなたの後を追うことになるでしょう、それは間違いありません。私の愛しい、親愛なる友よ。

※上記の文章は、バラ十字会が会員の方々に年に4回ご提供している神秘・科学・芸術に関する雑誌「バラのこころ」の記事のひとつです。バラ十字会の公式メールマガジン「神秘学が伝える人生を変えるヒント」の購読をこちらから登録すると、この雑誌のPDFファイルを年に4回入手することができます。

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