投稿日: 2023/09/22
最終更新日: 2023/09/30

以下の記事は、バラ十字会日本本部の季刊雑誌『バラのこころ』の記事を、インターネット上に再掲載したものです。

※ バラ十字会は、宗教や政治のいかなる組織からも独立した歴史ある会員制の哲学団体です。

区切り

展開し続ける人生
Life Unfolding

ジャニス・マンクトン
by Janice Munkton

夕日の海と涙を流す女性

人生では、すべての物事があるべき状況にあると考える人たちがいます。普段の生活で、この種の理想主義に出会うと、そういうふうに考える人を非現実的な夢想家であるとか、場合によっては愚か者だと考えてしまいがちです。しかしこのような態度は、人間が種として生き残るためにまさに必要なことです。私たちが希望を持ったり、計画を立てたり、理想を思い描くことをもし止めたとしたら、いわゆる下等動物との違いがなくなってしまうことでしょう。

確かに、人生には苦しい努力をする価値などないという思いに駆られることが、ときおりあります。私たちは何かをなし遂げるために絶えず努力をしますが、望みがかなったときにも、それほど大きな幸せを感じることはあまりありません。満足できる状況を見いだして実現したとしても、多くの場合にその状況は不安定で、他人からのねたみや憎しみによって簡単に奪われてしまいます。

若かったころは、将来などを気にかけることなく、現在だけが生きている時間のすべてだと思っていたことに注目するのは興味深いことです。そして年をとると、私たちは過去に頼るようになり、すでに成し遂げたことに安心を求めます。私たちの人生は、つかの間の経験を寄せ集めたパッチワークのようなもので、そうした経験は、あまりにも速く通り過ぎてしまうように思えます。

それに、どうしても頭から離れない悩ましいある不満があります。実際には信じていないことを信じていると言い張ったり、自分にはほとんど関係のないことを心配してみたり、何らかの理由があって注意を払う価値があると感じている周りの人たちに、口先だけの敬意を払い続けたりしている場合に、自分が偽りの生活をしていることを意識しているため、そのような不満がくすぶっているのです。実に悲劇的なのは、私たちが想像上の敵との想像上の戦いで、人生のあまりにも多くの時間を無駄にしているということです。

人生について私たちが理解していないことは極めて多く、人生の複雑さは人生全体の謎のほんの一部にすぎません。もちろん、人生には疑問が満ちあふれていて、私たちはたびたびそれに心を悩ましますが、それらに対する答えを見いだす可能性があるのは、人生の神秘を受け入れ、答えが必ず出てくるとは限らないと言うことさえ受け入れたときだけです。

そして、レバノンの詩人ジブランが語っている意味で、私たちは探求者であることを学ばなければなりません。決してひとところに留まることなく、常に前進し、人生は展開し続けていくということ、つまり人生はバラのように自ずから花開いていくと知っていることを心の支えにしてください。

「私たちさすらい人は、より孤独な道を常に求め、一日を終えた場所で次の一日を始めることはありません。
そして、夕日が去った場所で朝日に照らされることはありません。」
(カリール・ジブラン、「預言者」)

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