投稿日: 2021/12/10
最終更新日: 2023/10/24

以下の記事は、バラ十字会日本本部の季刊雑誌『バラのこころ』の記事を、インターネット上に再掲載したものです。

※ バラ十字会は、宗教や政治のいかなる組織からも独立した歴史ある会員制の哲学団体です。

区切り

超新星
Supernovas

デイブ・ストーバー
by Dave Stover

超新星1987Aが出現してから19年後の姿。SN1987Aの周囲にある残骸の古いリングの中では、物質が真珠の首飾りのように凝集し、超新星からの衝撃波や残骸により発熱している。
提供:NASA, ESA, P. Challis and R. Kirshner (Harvard-Smithsonian Center for Astrophysics)

1054年、ヨーロッパはまだ暗黒時代の眠りの中にありました。ノルマン人によるイングランドの征服は12年も後のことです。偉大なるギリシャ・ローマの時代は、霧のようにかすんだ遠い記憶にすぎませんでした。しかし、この年の7月4日に、異常とも思えるあるできごとが起こりました。おうし座の中に新星が突然現れたのです。この新星は、北ヨーロッパ、アジア、北米大陸で容易に見ることができました。

天のこの訪問者は、金星の2、3倍の明るさで夜明け前の空を支配していました。数週間にわたって、その新星は日中でも見ることができました。夜空からその輝きが完全に消えたときには、ほぼ2年の月日が経っていました。

中国では、宮廷の天文学者が、「客星」(guest star)としてその出現を記録しています。日本や中東やイタリアの観測者も、この新しい星の出現についての記録を残しています。以前に何もなかった場所に突然新しい星が現れたことに、あらゆる人が間違いなく驚いたことでしょう。しかし今日では、1054年に見られたのは新しい星の出現ではなく、古い星の断末魔、すなわち現代の科学者が超新星と呼ぶものであったことがわかっています。

超新星は、1054年にだけ出現したのではありません。西暦183年と後の393年に、夜空で最も明るい星に匹敵する明るさの新しい星が短期間だけ出現したと、中国と日本の天文学者が記録しています。また、1006年には、南の地平線に近い空に満月とほぼ同じくらい明るく輝く星が現れたと伝えられています。他にも、1181年、1572年、1604年に新星が現れています。そして、1987年2月に、チリで働くカナダ人天文学者のイアン・シェルトンは、この383年間で最も明るい超新星を発見しました。

この突然の爆発を夜空で観測した天文学者のほとんどは、目撃したものがいったい何なのかわかりませんでした。しかし今では、超新星が極めて強力な爆発であり、これと比較するならば、人類が持つ最も破壊的な兵器でさえ、ちっぽけな爆竹のように思われることがわかっています。

では超新星とはいったい何なのでしょうか

What, then, is a Supernova?

 最初に、ほとんどの子どもがいつか尋ねると思われる質問から始めましょう。「どうして、太陽は輝いているの?」単純な質問ですが、答えは複雑です。

恒星は主に、最も軽い元素である水素からできています。そして、水素は太陽のとてつもなく大きな重力で圧縮されています。たとえば自転車のタイヤにポンプで空気を入れていくと、空気は圧縮されて暖かくなります。恒星の中でも同じことが、はるかに大きなスケールで起こります。太陽の中心部では、温度が1,200万度に上昇します。

そのような温度では、水素原子がバラバラになり、猛スピードで互いにぶつかり合います。4つの水素原子が、十分な勢いでぶつかると、結合してヘリウム原子が形成されます。ヘリウムは2番目に単純な元素です。このような反応が、太陽の中心部で1秒間に何億回も起こっています。この過程でわずかなエネルギーが放出され、このエネルギーが太陽を輝かせています

恒星は、エネルギーを作り出すときに莫大な量の水素を消費します。しかし、恒星が巨大であることを忘れてはいけません。私たちの太陽は平均的な大きさの恒星ですが、地球の33万倍の重さがあります。私たちの太陽は約50億年間、安定して輝いてきました。そして将来も、少なくとも同じくらいの期間、おそらくそれよりは長く輝き続けると科学者は見積もっています。しかし、いつかは水素が使い果たされることになります。その時に何が起こるのかは恒星の大きさによります。

赤色巨星と白色矮星

Red Giants and White Dwarfs

 水素の蓄えが底をつくと、恒星では、ヘリウムが燃料として使用される段階に移行します。ヘリウム原子が互いにぶつかり合って、さらに複雑な元素が形成されます。このことによって、恒星の中心部の温度が上昇します。追加で発生した熱によって恒星が膨張して「赤色巨星」になります。つまり、高温になった恒星の材料のうち、外側の殻の部分が宇宙空間に向かって広がっていきます。今から50億年後に私たちの太陽が赤色巨星になると、太陽系の最も内側にある2つの惑星である水星と金星は、赤色巨星に飲み込まれます。地球は、実際に破壊されることはありませんが、カリカリに焼け焦げることになります。

ヘリウムは水素ほど多くのエネルギーを生み出すことができません。 そして、太陽のような恒星は小さすぎて、ヘリウムよりも複雑な元素を燃料に用いるのに必要な十分な熱を発生させることができません。やがてヘリウムは枯渇して、星の中心部でエネルギーが生じなくなると、外殻の質量を支えることができなくなります。すると恒星はつぶれて、地球程度の大きさの「白色矮星」になります。私たちの太陽が突然白色矮星に姿を変えれば、地球上から見ている人には、今の1/100ほどの大きさで鋭く光っている、小さな光の点のように見えることでしょう。

それほど小さくなっても、白色矮星には元の恒星にあった物質のほぼすべてが含まれています。つまり、白色矮星は信じられないほど高密度の状態です。白色矮星のほんのひとつまみの物質が、ダンプカーと同じくらいの質量になります。

他の恒星から離れている単独の白色矮星は、ほとんど変化しない状態が続き、ゆっくりと冷えて、やがて宇宙の燃えかすである黒色矮星になります。しかし、恒星の半分以上は、ペア(連星)になっていたり、2つ以上の星を含む群星を構成したりしています。連星のひとつが潰れて白色矮星になり、もう一方の恒星が赤色巨星の段階に進んだ場合を想定してみましょう。赤色巨星が膨張すると、白色矮星の重力が赤色巨星の物質の一部を引き剥がします。引き剥がされた物質はその後、白色矮星の周りを回る軌道に引き込まれます。そうした物質が蓄積すると、熱核融合反応によって、その物質が熱せられるとともに圧縮されて、突然爆発します。そして、天文学者が「新星」と呼ぶ現象が生じます。

新星と超新星は同じものではありません。その明るさを比較すると、新星は太陽の数万倍ほどの明るさであるのに対して、超新星は数億倍も明るくなります。さらに、新星は連星系では何度も繰り返して生じることがあります。高温の白色矮星の周囲に多くの物質が蓄積したときには、いつでも爆発に至るためです。

では超新星はどのようにして生まれるのでしょうか

How, then, does a Supernova Come About?

 私たちの太陽のような比較的小さな恒星は白色矮星になりますが、白色矮星の内部では、とてつもなく大きな圧力により原子がバラバラになります。そして、通常は原子の外殻を形成している(外側を回っている)電子が、原子から離れて自由に飛び回るようになります。この「電子ガス」の圧力が、白色矮星がそれより小さくつぶれるのを防いでいます。

しかし、私たちの太陽よりもはるかに大きい恒星、より正確には、質量が太陽の6倍以上ある恒星では、まったく違うことが起こります。大きな質量と急速な燃料の消費のため、これらの巨大な恒星は、極めて明るい輝きを伴う爆発を起こす可能性があります。これが超新星として知られているものです。

ヨーロッパ南天天文台(European Southern Observatory:ESO、チリ共和国) の超大型望遠鏡を使用して、NGC1929 星団の周囲にあるLHA120-N44 星雲のこの画像が得られた。私たちのいる天の川銀河の伴銀河である大マゼラン雲に属する、星々が形成されるこの領域は、途方もなく大きなスーパーバブル(巨大な空洞)構造を特徴としている。その中心部にある若い恒星の集団からの影響で、物質が外側に広がりつつあり、星間の風景が形作られ、星雲の進化が推し進められている。提供:ESO/Manu Mejias, Wikimedia Commons, Attribution 3.0 Unported (CC BY 3.0), Source: http://www.eso.org/public/images/eso1125a/

この爆発を理解するには、私たちの太陽よりはるかに大きな恒星の死の際に起こるできごとについて考える必要があります。そのような恒星は、急速にその燃料を使い果たし、数十億年ではなく、たった数百万年で燃え尽きます。質量がはるかに大きいため、太陽から生じる赤色巨星よりも、はるかに大きな赤色巨星となり、その中心部の温度は10億度にまで上昇します。

水素がほとんどなくなると、ヘリウムが恒星の主なエネルギー源になります。しかし、巨大な恒星の中心部は非常に高温であるため、そこでプロセスが停止することはありません。より複雑な元素が互いにぶつかり合い、さらに複雑な元素である窒素、酸素、珪素などを形成します。この過程は鉄が形成されるまで続きます。

しかし鉄は、それ以上は核融合を続けることができない“燃えかす”です。それは、キャンプファイアで、石が燃料として役立たないのと同じようなことです。鉄の原子同士がぶつかって融合しても、もはやエネルギーを放出しません。それどころか、鉄の融合ではエネルギーが吸収されます。そのため、燃料がなくなるので、恒星のエネルギー生産が停止します。そして、外殻の質量を支えるために発生していた熱が作られなくなるので、外殻がつぶれることになります。つまり、恒星の内側の部分が急激に収縮し、それに続いて、外側では大規模な爆発が起こり、燃えさかるような輝きが宇宙空間に広がります。その明るさは太陽の25億倍にも達することがあります。恒星の外側の部分は、宇宙空間に吹き飛ばされます。内側の核の部分は、収縮して、極めて小さい超高密度の中性子星になります。中性子星の質量は太陽の2~3倍ですが、その直径はわずか10マイル(約16km)ほどだと考えられています。中性子星の物質ひとつまみには、遠洋定期船と同じくらいの重さ(数万トン)があります。恒星がさらに巨大な場合、その核の部分は中性子星の段階さえも通り越して収縮し「ブラックホール」を形成します。ブラックホールの重力は極めて大きいため、光さえそこから逃れることができません。

かに星雲

The Crab Nebula

NASA のハッブル宇宙望遠鏡によってこれまでに撮られたモザイク(貼り合わせ)画像の中でも、極めて大きな画像のひとつ。『かに星雲』、すなわち幅6光年にわたる、恒星が超新星爆発した残骸。提供:NASA, ESA, J. Hester and A.Loll (Arizona State University)

さまざまな特徴に従って、超新星をⅠ型~Ⅴ型に分類することができます。Ⅰ型の超新星は太陽の25億倍も明るくなりますが、Ⅱ型の超新星は通常太陽の約10億倍の明るさです。この記事の最初に取り上げた1054年の「新しい星」はⅡ型の超新星爆発でした。ちなみに、この超新星爆発の痕跡である、広がりつつある巨大なガス雲が見つかっています。この痕跡は「かに星雲」と呼ばれています。触手のような形をしたガスの雲を見て、初期の観測者の一人が、カニの脚を連想したからです。星雲の中心には、周期的に電磁波を発する小さな中性子星があります。これが、かつて爆発して地球の空に輝いた恒星の名残です。

新しい超新星

A New Supernova

天文学者ケプラーの著書「へびつかい座の足下にある新星について」の中のイラストには、1604 年の超新星の位置が示されている。ケプラーの超新星として知られているこの超新星は、へびつかいの右足にある「N」と記された星である。

私たちの銀河系では1世紀ごとに約3個の超新星が爆発していますが、塵でできた雲によって銀河の大部分からの視界が遮られているため、地球から見えるものは、平均すると10個のうち1個です。1987年の前半に、1604年以降で最も明るい超新星が、南半球で突然見えるようになりました。「1987A」と呼ばれるこの超新星は、私たちの銀河系の伴銀河(訳注)である大マゼラン雲に属していました。1987Aからの光が地球に到達するには17万年かかります。それは天文学的なスケールで言えば、この超新星はほぼ私たちの銀河の裏庭、つまり、すぐそばにあることを意味します。そのため、天文学者たちはこの超新星を極めて詳細に研究することができました。たとえば、超新星からの光が地球に達したのとほぼ同時に、地球に届くニュートリノ(質量が非常に小さい素粒子)の急激な増加が検出され、超新星に関する、いくつかの理論の正しさが確かめられました。

訳注:伴銀河:大きな銀河系に付随する1個ないし数個のやや小型の銀河系。私たちの銀河系には大マゼラン雲、小マゼラン雲などの伴銀河がある。

しかし、1987Aが予想したほど明るくならなかったことから、科学者たちは当惑させられることになりました。当初、1987Aは夜空で最も明るい星と同じ程度の明るさになると考えられていましたが、実際には中程度の明るさに達しただけでした。爆発によって放出されたガス雲に遮られて暗くなった可能性や、1987Aがこれまでにない薄暗いタイプの恒星爆発である可能性が考えられました。1987Aの崩壊と消滅を観測することで、恒星の誕生から死に至る過程に関して貴重な情報が得られることでしょう。また、1987Aを研究することによって、どのような種類の恒星が最も超新星になりやすいかについて、さらなる情報が得られることが期待されています。(ちなみに、太陽は小さ過ぎて超新星になることはありません。)

遠方の宇宙空間で起きる爆発である超新星について、なぜ私たちは関心を持つべきなのでしょうか。ひとつの理由は好奇心です。別の理由として、地球や私たち自身を構成している物質の多くが、このような爆発する恒星の炎の中で作られてきたということがあります。

宇宙には元々、水素とヘリウムしかなかったと、天体物理学者は考えています。それより重い元素である、炭素、酸素、珪素、アルミニウム、鉄、ウランなど、他のすべての元素はいずれも存在しませんでした。しかし、こうしたより重い元素から、地球のような惑星の多くが構成されており、さらに言えば、あなたや私のような生物の体が構成されています。それでは、そうした重い元素はどこから生じたのでしょうか。

天文学者は現在、重い元素は超新星から生じたと考えています。鉄までのすべての元素は赤色巨星の中で形成され、そして最後には超新星爆発を起こします。そして、Ⅰ型とⅡ型の超新星爆発では、極めて多くのエネルギーが極めて高速で放出されるため核融合が起こり、鉄よりも重い元素も生じ、宇宙空間にまき散らされます。

何十億年にもわたり、超新星は、惑星と生物の創造に必要な重い元素を、銀河に種をまくように広めてきました。私たちの太陽系もおそらく、このようにしてまき散らされた塵とガスの雲から形成されたのです。また、近くで起きた超新星爆発の衝撃波によって、塵やガスの雲の凝集が始まり、私たちが知っているこの太陽系が形成されたと考えられています。

超新星は、大昔にあった巨大な星の壮大な死にあたるできごとですが、それだけではありません。過去の超新星爆発における灼熱の破壊の中で、さまざまな元素が形成され、やがてその元素によって、地球とそこに住む生物が作られることになりました。大昔の巨大な恒星の爆発によって作られた原子は、皆さんが今吸っている空気の一部であり、皆さんが座っている椅子の一部であり、皆さんの体の一部になっています。米国の天文学者カール・セーガンがかつて述べたように、詰まるところ、私たちの誰もが、私たちが住んでいるこの宇宙と同じように、星の素材からできているのです。

※上記の文章は、バラ十字会が会員の方々に年に4回ご提供している神秘・科学・芸術に関する雑誌「バラのこころ」の記事のひとつです。バラ十字会の公式メールマガジン「神秘学が伝える人生を変えるヒント」の購読をこちらから登録すると、この雑誌のPDFファイルを年に4回入手することができます。

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