資料室

遺言

The Will

アメリア

By Amelia

 故郷から遠く離れた土地で亡くなったある男が、次の遺言を残しました。「私の土地が存在する村の人々は、自分が望むものを手にすることとする。そして、自分が望むものを謙虚なアリフに与えることとする」。アリフはまだ若く貧しい家の出身だったので、その村では何の力も持っていませんでした。ですから長老たちは、残された土地から好きな場所を好きなだけ手に入れ、アリフには、誰も欲しがらない千坪のやせた土地を割り当てました。

 年月が過ぎ、体も強くなり知恵も身につけたアリフは、そもそも自分が相続すべきであったと彼が考えているものを要求するために、村人たちのもとにやってきました。「私たちはあの遺言に従って、おまえの取り分の土地をおまえに割り当てたのだ」と長老たちは傲慢に言い放ちました。「どうして、私たちが亡くなった人の望みを軽んじることができようか」。彼らは自分たちが公正に振る舞ったと考えており、遺言に従って、自分たちが得ることになっていないものは何も取らなかったと思っていました。なぜなら遺言には、自分が望むものを取れと書かれていたのではないでしょうか。しかし、あの遺言の注意深く練り上げられた言葉には、長老たちのすべてが見逃していた、さらに深い意味が隠されていたのです

 村人たちの前で、アリフが長老たちと話し合っていると、威厳ある風貌と、従わずにはいられないような存在感を持った見知らぬ男が立ち上がってこう言いました。「親愛なる兄弟姉妹、この遺言の核心にある目的を理解する人々には、その意味は明らかである。理解という能力を授けられている人々だけが気づく適切で巧みな方法で、この遺言が伝えていることは、あなたがたは、遺産の中で、自分が望んだ部分はすべてアリフに与えるべきであるということである。あなたがたは最も良い場所を選んで、自分たちだけでそれを分けた。そして、あなたがたの誰も耕したいと思わなかった場所だけをアリフに残した。アリフは今や大人である。彼は強く賢くなり、あなたがたが彼から奪った土地を今なら活用することができる。それゆえに、あなたがた自身の望みとして、最初から彼のものであったものを彼に与えなさい」。それは、「自分が望むものをアリフに与えることとする」という言葉の本当の意味を、長老たちが初めて理解した目覚めの瞬間でした。

 「事情はこうである」と見知らぬ男は続けました。「遺言を残す者は、死後、自分の資産を守ることができない。彼が明白なやり方でアリフを遺産の受取人にしていたら、彼の資産はこの村の者たちに奪われたかもしれないし、少なくとも軋轢を引き起こしたであろう。それゆえに彼は、この土地をあなたがたに委ねたのだ。あなたがたがこの土地を自分の土地だと思っていれば、大切にすることが彼には分かっていた。つまり、この財産を守り、自分が選んだ後継者に遺すために、彼は賢明な準備をしたことになる。そして、正しい相続人にそれが返される時が、今訪れたのだ。」

 村の長老たちはついに真実を理解し、土地のすべてがアリフに与えられることになりました。見知らぬ賢者「コルドバの賢人ムスタファ」が戸口からそっと抜け出したとき、村人たちは騒ぎと歓喜の最中にあり、彼に気づく者も、彼の晴れ晴れとした表情を後に思い出す者もいませんでした。そして彼は、二度とその姿を見せることはありませんでした。

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