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常識を乗り越えること

2017年3月31日


 

こんにちは。バラ十字会の本庄です。

バラ十字会日本本部代表、本庄のポートレイト

 

東京板橋の事務所のすぐそばには、地名の由来になっている橋があります。旧中山道が石神井川を越える場所にあたり、今週から、毎春恒例の夜桜のライトアップが始まりました。

そちらでは、春の訪れはいかがでしょうか。

 

先日のことですが、ある講演のために必要になり、人体の血液の循環について調べていました。

きっと皆さまも私と同じように、以前に学校の理科の時間に学んだことを思いだされるに違いありません。

血液は、心臓というポンプの働きで体全体を循環しています。そして、あらゆる細胞に酸素と栄養素を届け、また、二酸化炭素と老廃物を回収して、それを処理する器官にまで運んでいます。

 

インターネットで、「大循環」、「肺循環」、「門脈循環」、「腎循環」という4つのキーワードを調べると、心臓、肺、肝臓、腎臓が、どのようにつながっていて、どのように働いているのかが分かり、なかなか面白い調べものになります。

たとえば、お酒を飲んだときには、体内にアルコールという毒物を取り入れていることになりますが、それによって体全体が害されないように、巧妙なシステムが用意されています。

 

人体の循環システムを手書きで図に表わしてみるのは、とても楽しい作業でした。

そして、このように巧妙なしくみができあがるまでに必要だった、地球と生物の歴史に思いを馳せると、やや大げさに聞こえるかも知れませんが、感動を抑えることができません。

 

地球に最初に生物が誕生したのは40億年前のことでした。単細胞生物ですので、このときには循環系はありませんでした。

そして15億年前に多細胞生物が生じ、5億年前には動物が生じ、動物の体が大きく複雑になるにつれて、循環系も進化していきました。

動物が海から陸に上がって、魚類が両生類へと進化した3億6千万年前には、肝臓や腎臓に、全く新しい役割を果たす必要が生じました。

その後も、肺ができたり、心房が1つから2つになったりするというような、循環系の大きな変化がありました。

 

長い歳月にわたるこのような進化のすべてを受け継いで、今の私たちの人体のしくみがあるわけです。

それは、概略図を見ただけでもため息が出るほど見事なシステムです。

循環系の概略図とウィリアム・ハーベイの肖像画

循環系の概略図とウィリアム・ハーベイの肖像画

 

血液が循環するということが知られたのは、イギリスの医師で生理学者のウィリアム・ハーベイという人の功績です。彼はバラ十字会員だったと言われています。

1628年に彼はこの説を発表したのですが、ガレノスという人の学説に支配されていた当時の医学界からは猛反発がありました。大学者ガレノスの説を疑うことは許されていなかったのです。

 

Galen detail

ガレノス(ピエール・ロッシュ・ヴィニュロンによるリトグラフ、1865年、パリ) Pierre-Roch Vigneron [Public domain], via Wikimedia Commons

 

調べてみるとガレノスという人は、何と西暦2世紀、古代ローマ帝国時代のギリシャ人の医者でした。以前に話題にしたことがありますが、古代ギリシャ、古代ローマの知識のかなりの部分が、古代エジプトから伝えられています。

参考記事:『すべてはエジプトから

 

ガレノスも、エジプトのアレクサンドリアなどで医学を学んだ後に、ローマに戻り、多くの手術や解剖の経験を積んだようです。

 

ガレノスは、食物は腸で吸収されると肝臓へ行って、そこで血液になり静脈を通って体中に運ばれ、そこで消費されて失われると考えました。また、心臓で生じた血液は、動脈によって全身に運ばれ、やはりそこで失われ、循環することはないとされていました。

彼はあまりにも偉大な医者であり学者でした。剣闘士の養成所で外科医を務めていたため、解剖することができる遺体を多く入手することができたのでしょう。人体の構造についての彼の論文はとても正確で、後の医学に多大な貢献をしました。そして血液についての彼の説は、1400年間疑われることなく医学界の常識になっていました。

 

そのため、血液が循環し、しかも動脈と静脈がひとつの経路を作っているというハーベイの考え方は、あまりにも常識外れだと思われ、すぐには受け入れられなかったのです。

 

この話を聞いて、コペルニクスのことを思い起こされる方もいらっしゃるのではないでしょうか。ウィリアム・ハーベイと同じ16世紀の、ポーランドの天文学者で、地球は太陽のまわりを回っているという地動説を唱えた人です。

当時広く認められていたのは、西暦2世紀のアレクサンドリアの学者プトレマイオスの天動説でした。天動説では、地球が宇宙の不動の中心であるとされていました。

 

プトレマイオスも偉大な学者でした。天文学だけでなく、数学、地理学、光学で目覚ましい功績を残しています。

彼の権威と、大地は動かないものであるという日常感覚もあり、天動説も1000年以上の間、疑うことすら思いつかないような常識になっていました。地動説は当時の人にとって、ありえないほど奇妙な説に感じられたに違いありません。

それどころか、天動説は当時のキリスト教の考え方とも深く結びついていたため、地動説を唱えた学者は迫害を受け、ジョルダーノ・ブルーノのように火あぶりになった人さえいます。

参考記事:『科学的なことと非科学的なこと-アインシュタインと神秘学

 

私たち人間は、ある考え方を一度受け入れてしまうと、それに反する事実が出てきたとしても、それを例外と考え、古い常識からは、なかなか抜け出そうとしません。

歴史は繰り返すという言葉の通り、このことは今も続いています。

 

現在の先進国の社会の枠組みができたのは、18世紀の産業革命がきっかけでした。そして、近代産業の発達を支えたのは、当時の数学と古いタイプの物理学でした。産業の進歩で私たちの生活は豊かになり、この2つの学問は、固定的権威としての役割を果たすようになります。

物理と数学だけによって、世界のすべてが解き明かされるであろうという楽観的な見方が生じたことがありますし、その他の学問は、数学と物理学の単なる応用でしかなくなるだろうと考えられたことさえあります。

 

世界には物質しかなく、精神や意識や自由意志は、単に物質の働きか幻想であるという極端に唯物論的な考え方も、この延長線上にあると考えることができます。バラ十字会AMORCは宣言書などで、この傾向の危険性を指摘しています。

参考記事:『バラ十字会AMORCのマニフェスト(Manifesto):宣言書のご紹介

 

以前もご紹介したことがありますが、イギリスの生物学者ルパート・シェルドレイクは、『科学を硬直から解き放つ』(“Science Set Free: 10 Paths to New Discovery”, Deepak Chopra Books, 2012)という本の前書きに、多くの科学者が持っている独断的な信念として次の10項目を挙げています。

1.すべてのものは、基本的には機械である。たとえば犬は、自身の目的をもつ生物というよりは、複雑な機械である。人間でさえ機械である。

2.すべての物質には意識がない。物質には、生命が内在しているわけではなく、主観となる能力も、意見を持つ能力もない。人間の意識でさえ、脳という物質の活動が作りだした幻想である。

3.物質とエネルギーの総和は常に一定である(しかしビッグバンは例外であり、このときは宇宙に突然、物質とエネルギーが現れたとされる)。

4.自然のさまざまな法則は変わることがない。それらは、時の初めから今も変わらず、永遠に同じままである。

5.自然界には目的というようなものはなく、進化は何かを目指しているわけでもなく、何かに指揮されているわけでもない。

6.生物に起こる遺伝は、すべて物質的な現象であり、DNAという遺伝物質や、物質で構成された他の何かによってなし遂げられている。

7.心は頭の中に存在していて、脳の活動以外の何ものでもない。あなたが木を見ているとき、見えているその木のイメージは、それが見えている「外のそこ」にあるのではなく、あなたの脳の中にある。

8.記憶とは、脳の中に物質として残されている痕跡であり、死によって完全に消滅する。

9.テレパシーなどのような説明のつかない現象は幻想である。

10.物質的な医療だけが、真に有効なただひとつの医療である。

 

多くの人の努力の積み重ねによって、過去の常識が乗り越えられて、上の10項目のうちの多くが(もしかしたらすべてが)誤りであるということが、いずれ理解されるかもしれません。

生まれ変わったときに、ぜひこの目で、いえ別の目で、未来の科学と哲学を見てみたいものです。考えただけでもワクワクします。

 

今回は、この辺で。最後までお読みくださり、ありがとうございました。

では、また。

 

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