投稿日: 2023/03/31
最終更新日: 2023/04/18

こんにちは、バラ十字会の本庄です。

バラ十字会日本本部代表、本庄のポートレイト

月日の経つのは早いもので、今日は今年度最後の日です。

いかがお過ごしでしょうか。

先週、フィギュアスケートの世界選手権が行われ日本選手が大活躍しました。フィギュア(figure)とは図形のことですが、なぜジャンプ、スピン、ステップなどの技を競う種目がこう呼ばれるのか不思議に思いました。

調べてみると、昔は「規定」(コンパルソリー)という種目があり、あらかじめ決められた図形を氷上に描き、その正確さと滑走姿勢を争ったことが名前の由来なのだそうです。

このブログでたびたびご紹介していますが、図形が表す象徴的な意味には、世界中で共通点が見られます。

今回は円という図形が表す意味を話題にしたいと思います。

まっすぐな線には、始点と終点がありますが、この2つを時間の流れに当てはめるならば、始まりというある時刻と終わりというある時刻を意味する象徴になります。

それを丸めてひとつにすると円ができあがります。もはや始点と終点はどこにも見られません。ですから、円が始まりと終わりのないもの、つまり「永遠」を象徴するというのは納得のいくことです。

また、円を作ると内部と外部が生じます。ですから円が、何かまとまりがある単一のものを表す象徴だというのも自然なことのように思われます。

まず「永遠」という意味から見ていきましょう。古くから「月」と「ヘビ」は、世界各地で永遠を象徴していました。

満月は徐々に欠けていって、消えて死に絶えたように思えても、数日後に細い姿を現わし、また満ちていきます。このことはきっと、古代人が月から永遠を連想したひとつの理由でしょう。

「ヘビ」が永遠を表すのは、脱皮するたびに若さを取り戻し永遠に生きるように思われるからだそうです。

また、これは私の単なる推測であり間違いかも知れませんが、月が細いときに暗い方の部分もかすかに見える「地球照」(下の写真)が、ヘビが大きな卵のようなものを飲み込んでいる姿に似ているからかも知れません。

地球照
地球照

地球照とはその名の通り、地球で反射した太陽の光が月を照らすために起こります。

以前に書いた下記の記事では、古代シュメール文化でも縄文文化でも、月とヘビとウサギが不死の象徴であったことをご紹介しました。

参考記事:

このことは日本の習俗にさまざま形で名残をとどめています。たとえば、正月に飾る鏡餅です。なぜ重ねた餅とその上に乗せた金柑を「かがみもち」と呼ぶのか、不思議に思ったことはありませんでしょうか。

民俗学者の吉野裕子さんの説によれば、「カガ」はヘビの古語であり、鏡餅は、とぐろを巻いたヘビの体と目を表しています。

下の図は、古代エジプト人が描いた絵と、古代中国の周王朝の青銅器の図案ですが、いずれも自分の尻尾をくわえ円形になったヘビを表しています。

古代エジプトのウロボロス
古代エジプトのウロボロス
周王朝時代のウロボロス
周王朝時代のウロボロス

古代ギリシャでは、この図はウロボロスと呼ばれました。「ウロボロス」は「尾を噛むもの」を意味しています。

参考記事:

このような図を初めて見たとき、何とも言葉にできない奇妙な感じを、皆さんも体験されなかったでしょうか。

このまま食べていったら、そこには「『無』が残る??」のだろうかというような、心がいぶかしさで揺さぶられる感じです。

ウロボロスは、永遠に続く周期的な過程を象徴する、世界の多くで共通する象徴です。

さて、世界を意味する「ユニバース」(universe)という英単語は、「ひとつ」(uni)を意味する部分と、「回転する」(verse)からできています。

そのため、「まとまりのあるひとつのもの」を表す「円」は、世界の象徴としてうってつけです。

中世に作られた聖書の中には、下の絵のように、神がコンパスを使って円を描き、世界を創造しているところが描かれているものがあります。

世界の偉大な建築家としての神(中世のウィーン版聖書より)
世界の偉大な建築家としての神(中世のウィーン版聖書より)、Austrian National Library, Public domain, via Wikimedia Commons

この絵をじっくりと見ていただきたいのです。何か心を揺さぶられる不可解な感じがしてこないでしょうか。

神の表情や衣装にも目を引かれます。しかしもっと不可解なのは、窓枠のようなものです。これは宇宙の外側のはずです。いったい何なのでしょうか。神の右足はなぜ、その枠からはみ出ているのでしょうか。

さて日本を話題にしましょう。

円相図という禅宗のお坊さんが墨で描く絵があります。一筆で書いた円であり、悟りを表すとも、仏性、あるいは宇宙を表すともされます。今までお話ししてきた円の象徴的な意味と、やはりはっきりとした類似が見られます。

参考記事:「○△□」について

これは、禅宗の一派である曹洞宗のお寺、京都の源光庵にある「悟りの窓、迷いの窓」と呼ばれる2つの窓です。

京都源光庵の「悟りの窓、迷いの窓」
京都源光庵の「悟りの窓、迷いの窓」

私は訪れたことがまだないのですが、この窓からは四季折々に、とても美しい庭園の一部が見られるとのことです。

このうち「悟りの窓」は円形をしていて、禅と円通(融通無碍の境地)、大宇宙を表し、「迷いの窓」は長方形をしていて、人間の生涯、生老病死を表すとのことです。

インドの国旗の中央には24本のスポーク(輻)が入った美しい車輪の図案が配置されています。これはアショーカ王のチャクラと呼ばれる象徴で、車輪が回転するように、仏教の教えが伝えられていくこと(法輪)を表しています。

アショーカ・チャクラ
アショーカ・チャクラ、See File history, below, for details., Public domain, via Wikimedia Commons

アショーカ王は紀元前3世紀のインドの王で、仏教を篤く保護しました。仏陀の唱えた十二因縁に沿って、人生に苦が発生するメカニズムを理解する瞑想(順観)と、人生から苦を取り除く方法を理解する瞑想(逆観)を24本のスポークが表しているとされます。

ヨーロッパの秘伝哲学でも円は重要な象徴です。

古代ギリシャの哲学者ピュタゴラスは弟子に、「円の中心は神の思考であり、円は神の行為である」と教えました。

この2つはバラ十字会の哲学の用語では創造主(神)と宇宙(Cosmos:物質世界と心の世界とその調和)にあたります。

神と宇宙を同一視する哲学もありますが、この2つを厳密に区別し、創造主は不可知だとすることがバラ十字会の哲学のひとつの特徴になっています。

またバラ十字会の伝統では、円は「地上(earth)の完全性」と「宇宙(Cosmos)の完全性」を表すとされ、9という数で象徴されています。

バラ十字哲学に詳しかったとされるフランスの17世紀の哲学者パスカルは、「神とは、その中心があらゆる所に存在し、その円周がどこにも存在しない円である」と自身の著作「パンセ」(随想録)に書いています。

以上、円という象徴についてご紹介しました。皆さんのご参考、思索のきっかけになる点が少しでもあったなら、嬉しく思います。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。 またお付き合いください。

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