あけましておめでとうございます。バラ十字会の本庄です。
とても寒いですね。東京板橋はからっからに乾いていて、火の元に要注意です。
そちらはいかがでしょうか。
皆さんはエグレゴア(egregore)という言葉をお聞きになったことがあるでしょうか。端的に言えば、「ある集団の集合意識の、特定の性質を持つエネルギー」のことなのですが、これだけではピンとこないのではないでしょうか。
当会のフランス本部の代表が、この言葉について解説した文章をご紹介します。
記事:「エグレゴアについて」

◆ 『諸世紀の伝説』
フランス語に最初に「エグレゴア」という言葉が登場したのは、19世紀のことでした。具体的には、『レ・ミゼラブル』で有名な著作家のヴィクトル・ユーゴーが、1857年に出版した詩集の次の一節に、この言葉が登場しました。
「老人は、この若者の前で心を乱されるであろう。彼は、悪魔、吸血鬼、エグレゴアを呼び出す技を知っており、マンドレークの薬液と短剣を手にしており、ありきたりの馬が名馬をどのように駄目にするかを知っている。ある戦争で彼は、アブルッツォの人々の飲料水をたたえた池を、死んだ蛇で満たした。『戦争は聖なるものだ!』と彼は言い、策略を知らせる。」
人類の歴史を描写することを目的として構想されたこの大作の詩集は成功を収め、「エグレゴア」という言葉が広く知られるようになりました。しかしその意味は、この詩集のどこにも説明されていません。

◆ 「エグレゴア」の語源
「エグレゴア」という言葉の起源は、とても古いものです。それはギリシャ語の「エグレゴラ」(egregora)に由来し、ラテン語では「エグレギウス」(egregius)と変化しましたが、「目覚めている者」、「観察する者」を意味しています。
当時この言葉は、ある人や集団のことを見守っている神々、もしくは不可視の存在のことを指していました。古代ギリシャや古代ローマでは、そのような神々や不可視の存在からなるエグレゴアと人々の間を仲介する役割を果たす人が、聖職者だとされていました。
後になるとキリスト教会がこの概念を取り入れ、天使たちと聖人たちがエグレゴアを構成しているのであり、不可視の世界から信者を見守って、守護しているのだと語るようになりました。
◆ エグレゴアという言葉の秘伝哲学(esotericism)での意味
ユダヤ教とキリスト教の秘伝哲学者として有名なエリファス・レヴィが、19世紀に自身の数多くの著作で「エグレゴア」という言葉を用いました。彼がこの言葉で意味したのは、同一の研究、同一の理想、同一の実践を通して結びついている人々の集団のことです。

スタニスラス・ド・ガイタは、パピュス、ジョセファン・ペラダンとともに薔薇十字カバラ団(l’Ordre kabbalistique de la Rose-Croix)を創設した人ですが、一連の思念体(訳注)、特に儀式や式典の際に参加者から発せられる思念体をエグレゴアと呼びました。そのようにして形成されたエグレゴアには、ある場合には、まるで魔術のような効用があると彼は述べていました。
訳注:思念体(thought-form):個人や集団があることを思念すると、不可視の世界にそれに対応するものが形成され実体化する傾向があるとされ、思念体と呼ばれる。
![晩年のスタニスラス・ド・ガイタ、[2], Public domain, via Wikimedia Commons](https://www.amorc.jp/wp-content/uploads/2023/01/Guaitasd.jpg)
◆ バラ十字会のエグレゴア
エグレゴアという考え方は、当会(バラ十字会AMORC)にも存在しています。それは、同じ学習を行い同じ哲学を共有している会員を結束させている思いが持つ力にあたります。
この思いの力はエネルギーの場のようなものであり、インスピレーションと再生と保護の源泉だと、多くのバラ十字会員が感じており、このエネルギーの場と同調する方法は、当会の学習の初期に説明されます。
この同調に魔術的な効用があると言うのは多少言い過ぎのように思えますが、エグレゴアは、会員が行う個人的な学習や集団での作業に極めて望ましい影響を及ぼします。

◆ 人類のエグレゴア
秘伝哲学や神秘学(mysticism:神秘哲学)的な意味のエグレゴアとは独立して、人類そのものにもエグレゴアがあります。それは、年齢、性別にかかわらず、地球に現在暮らしているすべての人から発せられたすべての思いによって構成されています。
ですから人類のエグレゴアは、内面的な進歩において人類が集団として達した意識のレベルを反映するものになっています。
明らかなことですが、それは理想的なものではありません。世界はいまだに、暴力、利己心、不寛容、貪欲、復讐心など、人間の望ましくない性質の影響のもとにあるからです。
人類のエグレゴアが、すべての人にとって好ましく有益なものになるどうかは、私たち自身にかかっています。どのようにしたら、それを実現できるのでしょうか。
非暴力、気前の良さ、寛大さ、思いやり、誠実さ、そして共通の利益に貢献する他の徳性を、自身の内部に呼び覚ますように努力することによって、それを実現することができます。

著者セルジュ・トゥーサンについて
1956年8月3日生まれ。ノルマンディー出身。バラ十字会AMORCフランス本部代表。
多数の本と月間2万人の読者がいる人気ブログ(www.blog-rose-croix.fr)の著者であり、環境保護、動物愛護、人間尊重の精神の普及に力を尽している。
ふたたび本庄です。
20世紀に物理学と化学が急速に発達し、それを応用した産業技術によって、私たちの生活がとても豊かになった影響で、21世紀の現在も、「物の影響力」を「思いの影響力」よりもはるかに重要だと考えてしまう傾向が、私たちにはあるように思います。
エグレゴアという今回の話題をきっかけに、「思い」の持つ影響力について考えていただければ嬉しく思います。
下記は、前回のセルジュ・トゥーサンの記事です。
参考記事:
では、今日はこのあたりで。 また、お付き合いください。