投稿日: 2024/02/19

以下の記事は、バラ十字会日本本部の季刊雑誌『バラのこころ』の記事を、インターネット上に再掲載したものです。

※ バラ十字会は、宗教や政治のいかなる組織からも独立した歴史ある会員制の哲学団体です。

区切り

自由、与えるのか奪うのか
Freedom, Give or Take

ベニグナ
By Benigna

夕焼けと空を飛ぶ鳥を見上げる女性

自由は、人が人生で手にすることができる、とても貴重な権利です。しかし、失ったり手放してしまったりするまで、それがどれほど重要なのかに気づかないことが、あまりにも多いのです。少数かもしれませんが、ある一定数の人たちが犯罪に関わる生活を送り、刑務所に文字通り閉じ込められて、自ら自由を投げ捨てています。そのような場所では、寝る時間や着るものや食べるものなど、どんなつつましい家庭にもある選択肢がありません。

人はしばしば、お金の使い方について誤った選択をして借金を重ねることで、自らの自由を手放してしまいます。最初はゆっくりかもしれませんが、やがて驚くほど急速に借金が増えていき、最後にはクレジット・バブルが崩壊して、そこでやっと何ができて何ができないのか、何を持てて何を持てないのか、そしてどこに行くことができてどんなライフスタイルを選べるのかなどについて、不愉快な制限を強いられていることに気づくのです。また、愚かな人間関係に足を踏み入れることで自由を手放してしまう人もいます。このような関係はさらに悪化し、ありとあらゆる否定的な結果に陥ることになります。

お金は稼げるけれども満足感が少ない仕事を選んだために、自由を手放している人もいます。また、正直さを手放して誰にも信用されなくなったり、他の人にとげとげしく物を言ったり厳しく批判したりすることで、友情や支援を失うこともあります。あるいは、自分のことよりも他人の要求を優先しすぎて、自分の内面が常に服従した状態にあることに苦しむ場合もあります。時には、運動能力、活力、思考能力を奪うような病気にかかることもあり、よく言われますが「運命の手」によって(この言葉は、言い訳に使われることもありますが)、人が自由を奪われるように思われることもあります。病気で入院した場合などは、さらに自由を制限されます。

また、戦争や紛争のように、個人や集団が力づくで他の人たちから自由を奪うこともあります。状況によっては、ここイギリスでさえ、自由とは本当は何なのかを味わうことなく生まれ育つ人がいるかもしれません。後ろめたい秘密を抱えているために、脅迫されて自由を失う人々もいます。また、それほど明らかに残忍ではない方法で自由が奪われる場合もあります。たとえば、雇用主が労働条件を不当に変更したり、少ない報酬で多くの努力を要求したり、貸し手が抵当を手に入れるために、あるいは苦労なく大金をせしめるために、可能な限り最悪の時期にローンの金利を引き上げるなどです。

考え込む男性

しかし、それができる人であれば全ての人に開かれている自由があります。それは考える自由です。1959年に出版された『夜と霧』の中で、精神科医で作家でもあるヴィクトール・フランクルは、「なぜ生きるかを知っている人は、どのように生きることにも耐えられる」というフリードリヒ・ニーチェの言葉を引用し、ナチスのホロコーストの死の収容所でいかにして生き延びたかを語っています。この本の序文では、収容者に快適な時間が与えられたとしても、それが苦しみの意味を見いだす助けにならない限り、彼らの生きる意志は確かなものにはならないと述べられています。

「強制収容所では、あらゆる状況が重なり合うように働き、収容者が自分を見失う」とフランクルは語っています。「人生における、ごく普通の目的がすべて奪い取られる。唯一残されるものは、人間の最後の自由、与えられた状況において自分の態度を選択する自由だけだ」。この究極の自由は、古代のストア派の哲学者だけでなく、現代の実存主義者も指摘していますが、フランクルの体験において、強烈に重要な意味を帯びています。収容者たちは普通の人たちでしたが、少なくとも一部の人は「自分たちの苦しみには何らかの価値がある」という態度を選択することによって、「外部から加えられた運命を乗り越える」能力が人間にあることを証明したのです

人間は人生に意味を必要としています。自分自身よりも偉大な目的の感覚を与えてくれる何かを行いながら人生を過ごす自由を、人間は必要としています。自由についての以上の前置きを終えましたので、次のおとぎ話を読んでください。この話は、すべての人の心の中で自由が持つべき深遠な価値について、一晩、熟考を重ねた後に創作したものです。

ある少女が浜辺で、コルクで栓をされたビンを見つけました。ビンの中では、精霊がガラスを叩き、叫んでいました。「ここから出してくれ! 出してくれたら3つの願いを叶えてあげましょう!」。少女がためらうことなく栓を抜くと、精霊は滑るようにビンから抜け出て自由になり、豪快に伸びをしました。

「どうもありがとう」と彼は少女に言いました。「私はこの中に100年も閉じ込められていたのです。邪悪な暴君の願いを叶えることを拒否したので、騙されて中に閉じ込められたのです。魔法の力を集めて身を守るひまもありませんでした。自由に息もできず、普段の力を取り戻すことができなかったのですが、今はまた息ができるようになり、力もすっかり戻ったようです。私の種族の決まりで、あなたの願いを3つ叶えてお返しをしなくてはなりません。さあ、教えてください。あなたの最初の願いは何ですか」。

少女は、本物の精霊と顔を合わせられたことに驚き、わくわくしつつも、長い間自由を奪われていた精霊に心から同情しました。そして、彼の身に起こったことと、解放されたことへの感謝の言葉に心を動かされました。少女はまた、精霊の生き方を大きく変えることができたことを、心から嬉しく思いました。「叶えてほしい願いは、ただ一つよ」と少女は言いました。「あなたが自由を手に入れて、楽しんでほしいだけなの」。精霊は仰天し、「あなたは……、自分のためには何も欲しくないのですか」と尋ねました。「あなたを自由にできたのはラッキーだったし、とても嬉しいわ」と少女は満面の笑みを浮かべて、心からそう言いました。少女はこれほど素晴らしい気持ちになったことはありませんでした。精霊は笑顔を浮かべ、彼の種族のお決まり通り、一吹きの煙とともに姿を消しました。

あり余るほどたくさんの魔力を取り戻したのに、精霊はもう二度と働く必要はなかったのでした。しかし、願いを叶えるのが精霊の本性なので、彼はどこかに行ってしまったように思え、二度と少女の前に姿を現すことはなかったのですが、献身的な少女専属の奉仕者になったのでした。そして、寛大な彼女の進む道を優しく整え、3回どころか何度も、彼女の望みを知るたびにそれを実現しました。大きな影響力と誠実さを合わせ持つ女性へと成長した少女は、魔法で守られているように幸せな人生を過ごしていると、多くの人から言われました。そう、そうだったのです。彼女自身はそれを知りませんでしたが。

精霊もまた、少女ができるだけ良い状況になるように助けながら、素晴らしい暮らしを送ったのでした。そうすることで、彼は彼自身の目的のために働き、大人の女性になった少女に仕えるという、自身が自由に下した決断のひとつひとつを楽しみ、より偉大な善の一端のために役割を果たすことができたのですから。

※上記の文章は、バラ十字会が会員の方々に年に4回ご提供している神秘・科学・芸術に関する雑誌「バラのこころ」の記事のひとつです。バラ十字会の公式メールマガジン「神秘学が伝える人生を変えるヒント」の購読をこちらから登録すると、この雑誌のPDFファイルを年に4回入手することができます。

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