こんにちは、バラ十字会の本庄です。今回は、有名な神秘家であるウスペンスキーのことを取り上げたいと思います。

ピョートル・デミアノヴィッチ・ウスペンスキーは、1878年にロシアのモスクワで生まれました。若い頃にはモスクワの新聞社の編集局で働いていましたが、その後、神秘学(mysticism:神秘哲学)、物理学、数学についての講演を行ったり著作を残したりしています。彼はロシアの、特に文学界と前衛芸術に大きな影響を与えました。

1913年には、秘伝哲学(esotericism)への興味からインド、スリランカ、エジプトに旅をし、帰国後にゲオルギイ・イヴァノヴィチ・グルジエフ(1866-1949)に出会っています。グルジエフは、ウスペンスキーよりやや年上のアルメニア(当時ロシア領)生まれの神秘家、舞踏作家、作曲家です。

第二次世界大戦が始まるとウスペンスキーは米国に移住しましたが、戦後は、以前に住んでいたことのある英国のロンドン郊外の村(Lyne, Surrey)に転居し、そこで1947年に亡くなっています。

古代インド哲学とグルジエフの思想が、ウスペンスキーに多大な影響を与えています。

ウスペンスキーの著書『奇跡を求めて』によれば、以下に紹介される小説『イワン・オソキンの不可思議なる人生』で取り上げられている、自分を変えることの難しさなどのテーマは、グルジェフとウスペンスキーがかつて論じた内容でした。

ウスペンスキーの他の主な著作には、『宇宙の新しいモデル』、『ターシャム・オルガヌム』(第3の思考規範)があります。

チェコ共和国の首都プラハにある中世の天文時計

『イワン・オソキンの不可思議なる人生』は、青春小説であり恋愛小説ですが、ウスペンスキーの初期作品であり遺作でもあるとされます。初版は1915年にロシア語で発表されていますが、彼の死の直後の1947年に、まるで遺書であるかのように、最後の2章が書き直された英語版が出版されているからです。

区切り

以下は、作編曲家でベーシストの渡辺篤紀さんに、このブログのために書いていただいた文章です。

渡辺篤紀
渡辺篤紀

この本のことは、「サマータイムレンダ」という、和歌山を舞台にしたアニメで知りましたが、このアニメは、いわゆる「タイムリープ」や「死に戻り」と言われるジャンルの作品になります。

未来を変えるために何度も過去に戻るわけですが、たとえ、過去の出来事がどうなるのか分かっていたとしても、なかなか未来を変えることができません。

未来を変えるために主人公やその仲間が奮闘する物語ですが、アニメの最後に、原作にはない部分が付け加えられており、そこにこのP・D・ウスペンスキーの「イワン・オソキンの不可思議なる人生」の題名だけが登場します。

何かの巡りあわせで、一か月ほど前にこの本を読んだのですが、その少し前に、実は、ゲオルギイ・グルジエフのことを書いて欲しいというリクエストがあったのです。

このリクエストのことはすっかり忘れていたのですが、この本のことを書くにあたり、もう一度調べてみると、作者のウスペンスキーとグルジエフは師弟のような関係でした。

この本のストーリーは、主人公のイワン・オソキンと、旅に出る恋人のズィネイダとのしばしの別れから始まります。オソキンは彼女に思いを寄せていたのですが、そのうちズィネイダへの手紙の返事が滞りがちになり、ついには愛想をつかされてしまい、他の人と婚約したことを人づてに耳にします。

オソキンは失意のうちに、知り合いの魔術師の家を訪れ、何もかもうまくいっていなかったこの2、3年だけでもやり直したいと懇願し、「現在の記憶を持ったまま」過去に戻してもらいます。

このときオソキンは、過去に起こった不運な出来事、「学校の退学」、「母の死」、「叔父との不和」、「叔母の遺産をギャンブルですべて無くしたこと」など、人生のターニングポイントを覚えており、どう対処したらいいかを分かっているつもりでした。

しかし、実際に過去に戻ってみると、何が起こるかを知っているにもかかわらず、機械仕掛けのように、また同じことを繰り返してしまいます。

時にはそうなるまいと、自分の意志の力を使ってあらがおうとしますが、どうしても同じ結果か、それ以上に悪い結末が待ち受けています。

そして、また冒頭の旅立ちの場面へと戻るわけですが、その後、再び魔術師の元を訪れます。

森の中の分かれ道

私たちは生きているうちに失敗や成功を何度も繰り返します。たいへんな失敗をした後に、「もう一度あの時に戻れたら、あんな失敗はもうしない!」と思ったことが、誰しもあると思います。

では、実際に過去に戻れたとしたらどうでしょうか?

しかしおそらくオソキンと同じように、ある出来事に対して、同じような反応やプロセスを繰り返してしまうのではないでしょうか?

実際にオソキンも、何が起こるのか分かっているにも関わらず、同じことを繰り返してしまいます。

その理由は、根本的な物事の考え方、思想、趣味嗜好や過去の経験など、さまざまなものが絡み合って人間の精神的な部分、人格や性格、気性や性向と言われるものが形作られているからだと思われます。この部分の何か一つでも変わらない限りは、ある出来事に対して「行ってしまう」反応は、おそらく同じものになります。

だから、オソキンは、頭では「こうしてはダメだ」と分かっていても、彼の考えから導かれる判断によって、彼自身が間違った方向へと自然に導かれていきます。

その後、再び魔術師の元を訪れたオソキンは、実は自分がここを何度も訪れており、そのたびに過去に戻してもらっていたことを知ります。

そして、自分が過去にも同じことを繰り返し、逃れられない「同じ輪」、「罠という生」があることに気づき始めます。

海辺を背景にしてフレームの中に自分が映っている女性

そして、ついに魔術師に「それなら自分はどうしたらよいだろう?」と尋ねます。

魔術師は、「友よ、知り合って以来、初めておまえがまともなことを口にするのを耳にした」と言い、

「自分自らが望むこと、求めること以外には手を貸せない」ことを告げます。

今までは、自分の不幸を呪うことしか口にしなかったオソキンが呟いた

「それなら自分はどうしたらよいだろう?」

という問いに対して、魔術師が初めて生の仕組みについて話し出します。

・自分で決めなければいけないこと

・盲目のまま過去に戻っても何も変わらないこと

・何があっても生きるしかないこと

・自分が変わらずに、物事はひとりでには変わらないこと

・自分を変えることは、思っているよりも難しいこと

・すべては単純で簡単だと言ってくれるインチキ教師がいること

・自分に無いものは、自分ではわからないこと

そしてオソキンは魔術師に、どうすれば物事が変わりだすのかと問います。

「まずは自分を変えなさい」などとあまり意味のない答えが返ってくるとオソキンは予想していましたが、魔術師の答えはオソキンの予想を裏切るものでした。

「自分が自覚をもって生きるには、何か大きなものを犠牲にする必要があり、20年か15年、オソキンの人生を魔術師に任せろ(教えを乞う)」というものでした。

そして、この期間が過ぎたのちであれば、自分の知識を自分自身のために使えるようになっているのだとオソキンに告げます。

その後、オソキンがどう判断したのかは、ぜひ本を読んでみてください。

青い空の背景に飛ぶ鳥と壊れた鎖

最後に、この本の魔術師の言葉でこの文章を締めたいと思います。この言葉もよくよく見ると、人生の輪をあらわしているように思います。

「原因を作らずして結果を得ることはできない。」

「犠牲をもって支払うことで人は原因を作る。」

区切り

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執筆者プロフィール

渡辺 篤紀

1972年9月30日生まれ。バラ十字会AMORC日本本部下部組織(大阪)役員。ベーシスト。 TV番組のBGM、ゲーム音楽の作編曲のほか、関西を中心にゴスペルやライブハウスでの演奏活動を行っている。

本庄 敦

1960年6月17日生まれ。バラ十字会AMORC日本本部代表。東京大学教養学部卒。 スピリチュアリティに関する科学的な情報の発信と神秘学(mysticism:神秘哲学)の普及に尽力している。 詳しいプロフィールはこちら↓
https://www.amorc.jp/profile/

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